PEACE TOPICS

『平和新聞ながさき版』不定期掲載

【2014年3月25日】

進行する米ロの核兵器近代化計画2

 ロシアの核戦力は米国、フランス、イギリスとは異なり、かなり不透明な部分がある。

 米国のハンス・クリステンセンとロシアのペイバル・ポドビッグらの推定によるとロシアの保有核弾頭数は2014年初頭で約7,850発。内訳は配備弾頭1,583(ICBMに967,SLBMに416,戦略爆撃機に200)、作戦外貯蔵2,752発(SLBM用112,戦略爆撃機用610,非戦略核2,030)、退役・解体待ちが約3,500発。

 ロシアも米国と同様に旧式となったシステムの集約/一新を計画している。新型弾道ミサイルはすべて米国の「ミサイル防衛」網を突破できると言われている。日本では全く報道されていないが、昨年ロシアは10回の弾道ミサイル発射テストを行った。いずれも核兵器開発のためである。米国は性能維持と称して4回実施。(北朝鮮への非難をよそに!)

 ソビエト時代に開発配備された旧式ICBMであるSS-19,SS-25を現在、新型の「ヤールス」で順次置き換えている。SS-18については開発中の「サルマット」で置き換える計画で2022年までに刷新される。その一方で、「ヤールス」を転用した小型の「ルベージュ」が15年から配備とみられ、また鉄道貨車搭載計画も復活した。

 戦略原潜は旧式のデルタIII型3隻,デルタIV型6隻を、それぞれボレイI型,ボレイII型で置き換える。ボレイI型3隻はすでに完成、ボレイII型も15年までに全艦の建造が始まる。搭載するSLBMも開発中の「ブラバ」にすべて置き換わる。

 開発中の巡航ミサイルは射程1万kmといわれ、その搭載のために戦略爆撃機の近代化改修が行われている。20年代には開発中のステルス爆撃機に順次置き換えられていく。

 核兵器を手放す気配など微塵もみられない。


【2014年2月25日】

進行する米ロの核兵器近代化計画1

 米ロは世界の核弾頭1万7千発のうち94%を保有。核不拡散を呼びかける一方、自らは2018~2022年の間、新START条約で各1700発程度の核弾頭を配備することを宣言。また米ロとも現在の核兵器システムをほぼ一新する近代化を着々と進めており、「被爆100年」時でも大量の、しかも高性能の核兵器を温存する計画である。

 オバマ政権は2010年の「核態勢の見直し」で「新型核弾頭の開発はしない」としているが、「耐用年数の延長」を名目に事実上の新型弾頭開発を計画している(図1)。しかもその予算たるや、1種類あたり1兆円を超える(図2)。プルトニウム工場と濃縮ウラン工場も2020年までに建て替え、年間80個の核弾頭生産を可能とする。また小型核弾頭に不可欠なトリチウムの商業原発での生産量を5倍にする。

 米国の核兵器近代化はこれまでの核兵器概念を大きく変えるものとなる。現役弾頭はICBM用(W78, W87)、SLBM用(W76,W88)、爆撃機用(B61-7, B61-11, W80-1)、そして戦術核(B61-3, B61-4, B83-1)の10種。これがICBM/SLBM共用弾頭(IW-1, IW-2, IW-3)、航空機搭載の巡航ミサイル(CMW)と核爆弾(B61-12)の5種に集約(図3)。“戦術核”というジャンルが無くなる。


【2014年2月15日】

強化される佐世保の米軍前進基地

 2月6日、米海軍は佐世保に配備している輸送揚陸艦デンバーを最新鋭のグリーン・ベイに交代すると発表しました。「日本の防衛と極めて重要なアジア太平洋の安全保障と安定に関与する」ためとしています。海外の前方展開基地には、より新しく、より能力の高い艦艇を交代配備していくのが米海軍の長期戦略です。

●最新鋭の揚陸艦配備で殴り込み能力増強

 グリーン・ベイは新型のサン・アントニオ級輸送揚陸艦の4番艦で09年1月に就役。最新の指揮統制システムを搭載し、八角形のマストはセンサーの保護とセンサーの機能を増幅させるものです。船体はデンバーの1.5倍、搭載LCACは倍の2隻、そしてオスプレイ2機を搭載できます。内科・歯科の手術室がそれぞれ2室、病室も24室あります。従来の海兵隊や車両・物資の輸送に加えて、強襲揚陸艦に次ぐ、オスプレイの第2の飛行プラットホームの役割を果たし、殴り込み能力は大幅に増強されます。

 デンバーはこれまで改良工事が施されてきましたが1968年就役の最古艦で、14年9月に退役となることが将来国防計画書にリストアップされていました。デンバーの同型艦は他に1隻を残して退役し、サン・アントニオ級への交代は必至でした。

 グリーン・ベイの日本到着は来年2月の予定で、その間の「空白」は来年、同じく退役になる強襲揚陸艦ペリリューが第七艦隊の海域を補完することになっています。

●掃海艦も2隻がより新しいものに交代

 また機雷除去を主な任務とする掃海艦アベンジャーと同ディフェンダーの交代も発表されました。アベンジャーは14隻の掃海艦の1番艦で1987年に就役、2番艦ディフェンダーは89年に就役、ともに09年に佐世保に追加配備となっていました。アベンジャーの退役も計画通りです。代わって今年5月に9番艦パイオニアと14番艦チーフが配備となります。

●掃海艦が沿海域戦闘艦に置き換わる

 一方、米海軍は地域紛争や対テロ戦へ想定して沿海域戦闘艦の大量建造を計画しています。沿海域戦闘艦は高速速射砲、対空ミサイル、機関砲を備え、哨戒ヘリや偵察用の無人ヘリを搭載する小型艦です。高速(時速85km程度)で機動力に優れ、レーダーに探知されにくいステルス性能を持ち、機雷や潜水艦に対抗できるほか上陸作戦の支援などもこなします。

 また米海軍はアジア太平洋に軍事外交の力点を移す政策の一環として22年頃までに11隻を配備する計画です。同時に掃海艦の機能を沿海域戦闘艦に引き継がせる方針で、18年に佐世保の掃海艦4隻を同数の沿海域戦闘艦と交代させることを明らかにしています。これは佐世保基地の攻撃能力を一挙に高めるものです。


【2014年1月25日】

ロシアの核弾頭2万発、米国の原発燃料に

 昨年末、20年間にわたる米ロ間の「メガトン・メガワット」プログラムが終了した。1993年に高濃縮ウラン購入協定が結ばれ、ロシアの解体核兵器から取り出された高濃縮ウラン500トンを希釈して原発の核燃料に変え、米国が購入するというもの。旧ソ連崩壊後の核兵器の盗難・拡散を防ぎ、同時にロシアは外貨を獲得でき、米国は原発用の核燃料を安価で入手できる仕組み。

 高濃縮ウラン500トンは核弾頭20,000発分に相当する。解体時には当然、大量のプルトニウムも取り出すが、これは協定の対象外である。

 1994年、代理人としてロシアのテネックス社(核燃料貿易)と米国のユーゼック社(濃縮)が130億ドルで契約を締結。解体核弾頭から取り出された高濃縮金属ウラン(ウラン235の割合が90%以上)はロシア国内の工場で機械で削られ、高温で酸化ウランに変えられる。フッ素と化合させて気体にした後に、濃縮や再処理の際に出る劣化ウランや微濃縮ウランをまぜて希釈し5%以下の低濃縮ウランができ上がる。

 低濃縮ウランはコンテナに詰められて米国に向けて積み出され、米ユーゼック社が各原発会社の要求する濃度に調整して出荷する。

 希釈された低濃縮ウランは約14,000トンにもなる(これを天然ウランから濃縮すると150,000トンが必要という)。この核燃料からの発電量は過去15年間に米国が使用した電力量の約10%をまかなった計算になるという。

 大量の核兵器の廃棄を行ったロシアだが、それでも約700?の高濃縮ウランを抱えているとみられている。米国の方はこれまでに140トンを低濃縮ウランに希釈し、60トンがまだ余剰という。他に核兵器260トン、原潜核燃料が250トン。

 一方、プルトニウムについては、軍事的な余剰はロシア34トン、米国49トンとされる。2011年に米ロ間で「プルトニウム管理・処分協定」が発効、18年から実施される予定。これは両国が34トンのプルトニウム(核弾頭17,000発に相当)を低濃縮ウランと混合して原発の燃料とする-日本で言う「プルサーマル」で「処分」する。

 確かに原発利用で核物質は消滅するが、その過程でプルトニウムが新たに生まれ、大量の放射性廃棄物を生み出す。核兵器が禁止され、プルトニウムは保管して徹底管理すべきか、ウランを使わない原子炉で消滅させて廃棄物を徹底管理すべきかで悩む時代が早く来て欲しい。


【2013年12月25日】

新防衛大綱で佐世保基地は-

 12月17日、国家安全保障会議は「国家安全保障戦略」「新防衛大綱」「中期防衛力整備計画」を策定し、3文書は閣議決定を経て公表された。

 「安保戦略」は、1957年に策定の「国防の基本方針」に代わるもの。北朝鮮・中国を敵視し、軍事力行使も想定した「積極的平和主義」を基本に据えた。外交の強化を謳いながらも「総合的な防衛体制の構築」「日米同盟の強化」「武器等の海外移転」をすすめて地球規模で軍事的関与を強めることを宣言。これらの体制を支える一環として「愛国心」の強要も明記。

 今後約10年の基本方針である「新防衛大綱」からは、従来の「節度ある防衛力を整備する」との表現が消えた。民主党政権が打ち出した「動的防衛力」をさらにエスカレートさせ、陸海空3自衛隊を一体的かつ迅速に運用する「統合機動防衛力」を掲げた。また「弾道ミサイル発射手段等に対する対応能力の在り方」を検討し「必要な措置を講ずる」と明記し、敵基地攻撃能力保有の検討を盛り込むなど、「専守防衛」が建前の軍隊から、海外派兵の軍隊へと変貌させようとしている。さらに海賊対処のために設置したジブチ「自衛隊基地」の海外派兵拠点化を打ち出した。

 以下、長崎県と関連するものを列挙する。

 島々への侵攻を想定し、「上陸・奪回・確保するための本格的な水陸両用作戦能力」を備えた「水陸機動団」を新設。装備として52両の水陸両用車を5年以内に導入。中心部隊は佐世保相浦駐屯地の「西部方面普通科連隊」。もともと海兵隊的性格を有する部隊として02年に発足、06年からは毎年渡米して直接、米海兵隊から強襲揚陸の手ほどきを受けてきた。最近では期間も延び、米軍との相互連携訓練も行われている。

 また迅速に遠距離輸送を行うためにオスプレイ17機を陸自に導入。しかし水陸機動団も使用するというのが自然な見方。とすれば配備先の1つは海自大村航空基地か。整備施設ができれば沖縄の米オスプレイの一時使用もあり得る。日米の海兵隊部隊が佐世保の強襲揚陸艦で出動という事態も想定できる。

 潜水艦は6隻を純増し、部隊数を1つ増やす。LCAC移転後の崎辺地区に配備される危険性が高い。また多様な任務に対応できる新型護衛艦を建造する。純増は7隻、うち2隻がイージス艦となる。これらの多くは三菱長崎造船所での建造されるにちがいない。

 「軍事には軍事で対抗」という冷戦思考では緊張の拡大と悪循環をもたらすだけだ。