PEACE TOPICS

『平和新聞ながさき版』不定期掲載

【2013年2月25日】

いまこそ輝く☆日本国憲法の価値

 ワシントン大学のデービッド・ロー教授と、バージニア大学のミラ・バースティーグ准教授は成文化されたすべての憲法(188ヶ国729本)を分析しました。そして国民の各権利保障がどの程度実現されているか、データ化して国際的な変化が年代別に分かるようにしました(下;数字は%)。

■世界の憲法にうたわれている権利ランキング
順位 権利の種類 日本 米国 1946 1956 1966 1976 1986 1996 2006
信教の自由 81 88 87 88 92 95 97
報道・表現の自由 87 88 84 86 87 95 97
平等の保障 71 77 85 88 92 95 97
私有財産権 81 85 81 83 87 95 97
プライバシー権 83 83 78 81 83 94 95
不当逮捕・拘束の禁止 76 81 81 79 81 92 94
集会の権利 73 77 73 75 81 90 94
団結権 × 72 74 78 77 80 91 93
女性の権利 × 35 51 62 70 77 90 91
10 移動の自由 × 50 55 58 58 64 84 88
11 裁判を受ける権利 68 68 64 62 64 85 96
12 拷問の禁止 37 37 41 45 56 80 84
13 投票権 63 74 73 69 74 82 84
14 労働権 × 55 65 59 67 65 80 82
15 教育の権利 × 65 72 59 65 65 78 82
16 違憲立法審査権 × 25 32 53 51 58 80 82
17 遡及処罰の禁止 41 51 57 60 67 77 80
18 身体的権利 × 44 60 52 57 61 75 79
19 生活権 33 33 38 41 51 71 78
20 推定無罪 × × 8 12 31 37 49 69 74
60 武装する権利 × 8 6 4 4 3 3 2

※順位は2006年の到達点の数字(%)が大きい順。
西暦年の下の斜体は憲法を持つ国家の数。
論文のタイトルは「合衆国憲法の影響力の低下」。
ニューヨークタイムスはこれを引用して
「米国憲法は時代遅れ」という記事を掲載。
×は2012年5月5日付の朝日新聞による。

 時代とともに新しい人権の概念が生まれ、明文化された流れがわかります。日本国憲法はその人権の上位19項目までを65年も前にすべて満たしていました。逆に米国は、女性の権利や移動の自由のほか、教育や労働組合の権利など、今では世界の7割以上が盛る基本的な権利がいまだに明文化されず世界の流れから取り残されています。

 昨年の5月3日の朝日新聞でバースティーグ氏は「65年も前に画期的な人権の先取りをした、とてもユニークな憲法といえる」と話しています。その一方で「「同じ条文であっても、どう実践するかは国ごとに違う。世界の憲法は時代とともに均一化の方向に動いているが、人権と民主化のばらつきは今も大きい」と指摘。またロー氏は「日本の憲法が変わらずにきた最大の理由は、国民の自主的な支持が強固だったから。経済発展と平和の維持に貢献してきた成功モデル。それをあえて変更する政争の道を選ばなかったのは、日本人の賢明さ」と指摘。

■【最近のフランスの憲法改正】

 2007年7月、フランスは憲法に3条項の変更を行いました。うち1つは「何人も死刑に処せられない」という条項の追加。フランスは1981年に死刑を廃止しましたが、憲法に盛り込むことで将来の死刑制度復活を封じたわけです。

 上下両院議員で、賛成828、反対26で、憲法改正に必要な投票議員の5分の3以上の賛成で承認されました。
 このように「より良いものに変える」ことが改正。自民党の草案はどうみても改正とはいえません。表のがいくつ消えるやら。


【2013年1月25日】

ドイツの再生可能エネルギー発電22%に

 電力会社などが加盟するドイツ・エネルギー水利事業連盟は1月10日付で昨年の再生可能エネルギーによる発電が21.9%に達したことをホームページで公開しました。ここ数年の変化、また日本との比較をしてみます。電力量は便宜上、兆Wh(10億kWh)の単位を使いました。

●日本の発電割合は3%台

 日本の電力発電量は年間約1000兆Wh程度です。電力会社などは再生可能エネルギーや自然エネルギーとはいわず風力と太陽光、地熱を「新エネルギー等」と表現。バイオマス発電は「火力」に入れ、ダムによる大規模水力も中小規模の水力も区別せず同じ「水力」と扱っているため実態が見えづらくなっています。

 電力中央研究所によると新エネ等と水力の割合はそれぞれ1.1%,8.5%(10年度)、1.4%,9.0%(11年度)です。一方、環境エネルギー政策研究所の試算によると10年度の再生可能エネルギーによる発電は40兆Whで全体の3.5%です。

日本の再生可能エネルギー(2010年度)
エネルギー源 発電量 (兆Wh) 割合(%)
太陽光 4.08 0.35
風力 4.28 0.37
地熱 2.65 0.23
小水力 17.31 1.49
バイオマス 11.98 1.03
合計 40.29 3.47

●着々と普及を進めてきたドイツ

 ドイツの年間発電量は日本の約6割で、昨年は617兆Whでした。10年と12年の再生可能エネルギーによる発電及び12年間の推移を以下に示します。

 太陽光と風力は日本とケタ違いの規模です。ドイツは原発に依存しながらも規模拡大をせず、再生可能エネルギーの普及に力を入れてきました。そして22年末までの脱原発を決め、再生可能エネルギーの割合を20年までに35%、その後10年ごとに15%ずつ増やし、50年には80%達成を目標としています。

エネルギー源 2010年 2012年
発電量 割合(%) 発電量 割合(%)
太陽光 11.7 1.9 28.5 4.6
風力 37.8 6.0 45.0 7.3
廃棄物 4.8 0.8 5.0 0.8
水力 21.0 3.3 20.5 3.3
バイオマス 28.1 4.5 36.0 5.8
合計 103.3 16.4 135.0 21.9


【2012年11月15日】

基地ある故に:佐世保米兵の事件・事故

 またしても沖縄で起きた米兵による女性への暴行事件。米兵の事件が起きるたびに「綱紀粛正を求める」という言葉がおうむ返しのように繰り返されます。効果のないことは犯罪が繰り返されるという事実が如実に示しています。米軍関係者の犯罪にひじょうに甘い日米地位協定、なによりも彼らが「兵士」であることが事件の温床といえます。

 同じく米軍基地のある佐世保の実態はどうなのか?市会議員の山下千秋さんの請求に佐世保市基地政策局が1996年から今年9月までの基地関係者の主な事件・事故、47件を公表しました。そのうち少なくとも31件は艦船乗員でした。

●性犯罪:若い女性が狙われる

 性犯罪は7件、とくに若い女性が被害にあっています。女子中学生が被害にあったのが3件。19才女性への強姦致傷(04年)、また米兵の妻への強姦致傷(08年)という凶悪事件も起こされています。

●米兵の傷害事件は恐怖

 強盗事件は12件。うち7件は傷害事件でもありました。とくに残忍だったのは遊興費欲しさに20才の女性を背後から襲い、カッターナイフで喉を切り裂いたうえ、 ショルダーバックを盗んだ事件(96年)。米軍が凶悪犯罪について起訴前に身柄を「好意的に」日本側に引き渡した初めての事例となりました。また車上荒しを見つけられ、追いかける日本人に暴行。店舗での窃盗で追ってきた店員などに暴行。飲食店の女性従業員の顔面を路上に打ち付ける(いずれも99年)など兵士による傷害事件は恐怖です。

●交通法違反事故も多発

 ひき逃げは6件。ミニバイクに衝突して男性の鎖骨を折るなど1カ月のケガを負わせ、そのまま逃走(11年)。飲酒運転事故も12件にのぼります。西九州自動車道天神山トンネルで、飲酒運転の米兵が対向車線の軽自動車に衝突。助手席の母親が死亡、運転していた次女が5カ月の重傷(03年)。

●警備担当者がこんな事件を

 安全を守る役目の基地警備部所属の兵曹の事件・事件も見逃せません。鳴らされた車のクラクションに腹を立て顔面を殴る(05年)。知人女性をナイフで数回突き刺し全治1カ月の重傷(06年;殺人未遂)。飲酒運転で追突事故(07年)。弾薬庫から銃弾3300発余りを持ち出し不法投棄(08年)。

 他にも軍属が大麻とコカインを密輸し、保持したとして逮捕される事件もありました(05年)。

 佐世保市では重大な事件のつど、米海軍佐世保基地に再発防止と綱紀粛正について、強く要請を行ってきましたが、何も起きていないのは1997年だけという事実が示すように、事件・事故は繰り返されてきました。


【2012年10月5日】

九州電力:電気は十分足りている

 この7月2日から9月7日までの九電の最大需要と最大供給能力をグラフにまとめました。他の電力会社からの「融通」さえ必要なかったことになります。

●出し惜しみの供給能力

 九電の見通しでは最大需要は節電しても、平年並み気温の場合が1613万kW、一昨年の猛暑並みで1634 万kW。それに対して原発なしでは、供給能力が平年並みの暑さだとで1622 万kW、一昨年並の猛暑だと1574 万kWで不足になると脅しました。このとき自治体や共同出資会社から受ける火力・水力の「契約」が最大278 万kW、他の電力会社からの「融通」を最大47 万kW としていました。
 ところが8 月3 日の供給能力はなんと1732万kW に達しました。「契約」が344 万kW、「融通」が120 万kW(中部電力90、北陸電力3、中国電力27)と「最大」を大幅に超える能力を確保していたのです。「最大供給能力」を超える日は何日もありました。

●天気と他社の余裕に助けられた?

 原発再稼働は電力会社の経営問題へと変わりました。それを覆い隠すように「ラッキー説」が展開されています。日経Web は、今夏の九電の需給は綱渡りだったと主張。火力の急なトラブル停止が10 回もあり、気温に助けられたと。老朽火力の停止やむを得ずとしていますが節電期間前に徹底点検しない怠慢でしょう。また産経Web も「九州から原発が消えてよいのか」というキャンペーンを張り、「不確定要素を含む他社融通に頼っている現状は自立して歩行できていないのと同じ」という電力社員の声を紹介。地域独占で融通しにくい体制こそネックなのに、現状を当然視しています。

●なぜ動かさない唐津石油火力

 現在、原発1基相当の唐津石油火力(計87.5万kW)が2004 年から長期計画停止のままです。これを当面予備としておけばトラブルに対処できます。運転再開するには2 年かかると言いながら、3.11 以来、動かそうという気配すらないのは原発再稼働を狙うためでしょう。


【2012年06月15日】

原発とプルトニウムと核兵器

 ウランを使った原発では自動的にプルトニウムが生まれ、これもまた核分裂を起こしています。日本の電気の3割を原発に頼っていた時代、実はその1/3 はプルトニウムからのものでした。

●原発1 基で1 年間に300kgのプルトニウム

 最初にできるのはプルトニウム239(Pu-239)ですが、これは60% しか核分裂せずに、40%は中性子を吸収してPu-240 になります。これも一部は核分裂し、残りはPu-241 に。同様にしてPu-242 が生まれます。原子炉が動いている期間が長いほどプルトニウムの量は多くなり(使用済み核燃料の約1%)、原発1 基あたり1年間に300kgが残ることになります。

●日本のプルトニウム保有量

 プルトニウムは使用済み核燃料を分解して再処理することで取り出せます。日本では東海村の再処理工場での実績があります。また多くはフランスとイギリスに再処理を委託し、徐々に日本に戻ってきています。
 いま日本が所有しているプルトニウムは表のように約45トンもあります。さらに日本中の使用済み核燃料内には152トンものプルトニウムが含まれています。

日本が所有するプルトニウム
施設名等 プルトニウムkg
再処理施設 4,363
燃料加工施設 3,365
常陽・もんじゅ 165
プルサーマル用燃料 1,601
臨界実験装置その他 444
イギリスでの保管分 17,055
フランスでの保管分 17,970
44,963

●とてつもない潜在的核保有能力

 Pu-240 は何もしなくても自ら核分裂して核兵器の威力を落としてしまうため、製造段階でその割合を5%に留めています。しかし原発の使用済核燃料での割合は20%にもなります。

 では原発からのプルトニウムでは核兵器には至らないか? 軍事機密ゆえに公開されているわけではありませんが、最初の核分裂の引き金となる中性子を大量に発生させる方式(1958年から配備)であれば、威力は劣るものの十分可能といわれています。下記の表は、一番原始的な構造で核爆発に必要なプルトニウムの最少量(臨界量)です。実際はこの数分の1 で可能。日本の潜在的核保有能力はとてつもなく大きいことが分かります。しかもまだ断念していない高速増殖炉が可能となった場合、得られるプルトニウムはPu-240 が4%と核兵器級なのです。

プルトニウムの臨界量
Pu-238 Pu-239 Pu-240 Pu-241 Pu-242
10kg 10kg 40kg 10kg 100kg