PEACE TOPICS

『平和新聞ながさき版』不定期掲載

【2013年11月15日】

ロシアが大規模な"核戦争"訓練

 10月30日、プーチン大統領の指揮下、ロシア戦略軍(核部隊)が初めての大規模軍事演習を行いました。戦略軍の即応性のチェックのためといいます。弾道ミサイル、弾道弾迎撃ミサイル、防空ミサイル、戦術兵器を発射。戦略爆撃機も出動するなど、核戦争を想定したものといえるでしょう。

 戦略ロケット軍はICBMを2発。南西部のドムバロフスキー空軍基地からSS-18を、北西部プレセツク発射場からSS-25を発射して、ともに東部カムチャッカのクラ試験場に着弾させました。戦略艦隊もSLBMを2発。オホーツク海からデルタIII型潜水艦がSS-N-18を発射して北西部カニン半島のチザ試験場に着弾。また北西部バレンツ海からデルタIV型潜水艦がSS-N-23を発射してカムチャッカのクラ試験場に着弾。

 同時にモスクワ防衛のために配備している弾道弾迎撃ミサイル(ガゼル)の発射テストを行いました。

 南西部カプスチン・ヤール試験場では戦術核の短距離弾道ミサイル(SS-26を1発、SS-21を3発)発射しています。併せて防空ミサイルシステムのテストを行いました。

 戦略航空隊も南西部のエンゲルス空軍基地から6機の戦略爆撃機ベアHを発進、南部のテレムバ試験場から発射された標的に向け3発の巡航ミサイル(AS-15A)を発射。

 一方、この演習期間中に2機の戦略爆撃機ブラックジャックがベネズエラとニカラグアに派遣されました。意図は分かりませんが合衆国と目と鼻の先です。"核兵器は存在する限り使われる"ーそんな危険性をひしひしと感じます。


【2013年10月25日】

★続・トリチウムのはなし

 東電福島第一原発の汚染水で問題が顕在化したトリチウム(3重水素)は核兵器の材料にもなる。高圧高温下で2重水素とトリチウムが合体(核融合)してエネルギーと中性子を出すからだ。

 長崎型のプルトニウム原爆の中心に2重水素とトリチウムのカプセルを入れる。プルトニウムの核分裂で高温になったカプセル内で核融合が起こり大量の中性子が発生して効率良くプルトニウムの核分裂を進める。未反応のまま飛び散るプルトニウムを減らして威力を高める強化型原爆である。

 この強化型原爆は小型化して水爆の起爆装置としても利用される。水爆の主要な材料は2重水素とリチウム(水素・ヘリウムの次に軽い元素)の化合物である。起爆によって高圧高温になると2重水素とリチウムが融合してトリチウムが生まれる。このトリチウムが2重水素と融合して大量のエネルギーを出すのである。このように現代の核兵器にトリチウムは不可欠なのだ。

 では核兵器用のトリチウムはどこでつくられるか?原発の中だ。現在、米国ではテネシー州の商業炉ワッツバー1号機を利用している。リチウムを含んだ合金を燃料棒のように原子炉に入れるだけである。飛び交う中性子によって生まれたトリチウムは金属内に閉じこめられる。金属棒は18ヶ月毎に交換され、トリチウムは抽出施設で気体として取り出され、保管される。米国は5年後に製造量を5倍に増やす計画だ。

 トリチウムの半減期は12.3年なので毎年5%のトリチウムががベータ線を出してヘリウムにる。つまり核兵器の性能が徐々に劣っていく。そのため定期的に点検してトリチウムを補充しなくてはならない。


【2013年9月25日】

★トリチウムのはなし

 このところ東電福島第一原発の汚染水で耳慣れてしまった「トリチウム」。簡単に言うと普通の水素の3倍の目方をもつ放射性の水素のこと。12年あまりの間にトリチウムの半分がベータ線を出してヘリウムに変わる。実は自然界にもわずかだが存在する。

 汚染水の中のトリチウムは原発由来だ。ウラン235は2つに核分裂するが、たまに3つに割れることがある。この時にトリチウムができる。その割合は100万回の核分裂に対して300~400個という。100万kWの原発を1年間動かすと2000兆ベクレル程のトリチウムが発生することになる。

 トリチウムはある意味、セシウムよりも厄介だ。セシウムは水とくっついたり、微細粒子にくっついたりして移動する。原理的には剥がしてやれば除くことができる。また水を蒸発させれば容積を減らせる。

 ところがトリチウムは原理的にそれができない。汚染水の中のトリチウムは水そのものだからである。水はH2Oとも称されがこのHの1つがトリチウムTに置き換わる。つまりHTO;トリチウム水になっているのである。普通の水とトリチウム水を分離する技術は未確立である。9月13日、政府はトリチウム除去技術の国際公募を決めた。

 トリチウムは弱いベータ線を出すだけで、ガンマ線は全く出さないので、少量であればさほど問題はない。排出規制値は1g当たり60ベクレル(セシウム137は1kg当たり90ベクレル)。法的には普通の水で薄めれば排出できる。だが法はこんな原発事故?総量が莫大であることを想定していなかった。薄めても総量は変わらないのだ。

 トリチウム水は放射能レベルが下がるまで、長期にわたって安全に保管するしか当面の方策はない。


【2013年8月5日】

核兵器の実情をリアルに見つめよう

 8月1日、長崎大学核兵器廃絶研究センターは記者会見を行ない、核保有国の核弾頭数などのデータベースをホームページ上で公開したことを発表しました。データは同研究所の「核弾頭データ追跡チーム」が様々な文献・資料を精査してまとめたもの。論拠も提示し、ビギナーから専門家までに対応したサイトは初めて。

 追跡チームのひとり、長崎大学環境科学部の冨塚明さんは、すぐにでも使われる危険のある作戦配備が約4,400発もあり、また作戦外貯蔵5,780発の中には情勢の変化による再配備を想定して温存しているものが多いと指摘。

 米ロ間の新START条約は2018年までに配備核弾頭をそれぞれ1,550発にするものだが、(1)爆撃機にいくら搭載しても1つとしか数えず、(2)作戦外貯蔵には手をつけないため保有数には大きな影響はない。米ロに任せていては核兵器は無くせないと強調しました。


【2013年05月15日】

米掃海艦ウォリアーが引き継ぎ配備

 5月2日、米海軍佐世保基地で掃海艦ガーディアンから同型艦のウォリアーへの引き継ぎ式がありました。

●違法進入、座礁、そして解体

 今年1月17日、掃海艦ガーディアンはフィリピンの世界遺産トウバタハ環礁に、警告を無視して進入し、座礁しました。フィリピン政府の許可を得た調査船と観光客船以外は進入が禁止された地区です。ガーディアンはスービック湾で補給を終え、インドネシアでの共同演習に向かう途中でした。乗員79名に負傷者はなく全員が佐世保基地に戻りました。

 損傷したサンゴ礁は1000m2にわたるとみられています。ガーディアンも損傷がひどく立ち往生、サンゴ礁の被害拡大を避けるために船体を切断しての解体撤去となりました。費用は2億7700万ドル。ソナーや掃海器具など再利用が可能なものは3月28日に佐世保基地に搬入、また4分割された船体は処分のためか4月23日に到着しました。

●太平洋での4隻体制を維持

 一方、米海軍は2月26日、サンディエゴ配備のウォリアーを代替に当てると発表。「日本防衛及び、重要なインド・アジア太平洋地域の安全や安定に対する、米国の責務を支援する前方展開海軍戦力の能力を維持する」としています。バーレーンで軍事行動中だったウォリアーは任務完了後、大型運搬船に積載されて佐世保へ到着。乗組員の大多数はサンディエゴへ戻りました。座礁の責任を負った艦長を除き、ガーディアン乗組員はほとんどがウォリアーに異動しました。座礁の事故原因は現在でも不明のまま、フィリピンへの賠償額も未定です。

●任務は対機雷戦

 掃海艦は日本での呼称で、英語では「対機雷戦艦艇」ー敵の仕掛けた機雷を探知・無力化し、とくに強襲揚陸部隊が安全に接近できるための「露払い」が主要任務です。米国外では佐世保と中東・バーレーンだけに配備されています。

 初めて海外に派遣された自衛隊は掃海部隊でした。自衛隊法「雑則」の「機雷等の除去」を根拠として。防衛庁が防衛省になり、「機雷等の除去」も災害派遣と同等の通常任務に格上げされました。米軍との機雷戦演習も行われています。事実上の集団的「自衛」訓練です。