佐世保市と米軍が新消防協定を締結
基地内立入は一定緩和 通報判断は従前のまま


米軍佐世保基地の消防署 「思いやり予算」で建造

 12月15日、佐世保市と米海軍佐世保基地は、米軍施設内で火災が発生した場合、市消防局の現場指揮者の立ち入りに関する取り決めを定めるなどした新しい「消防相互援助協定」を締結しました。

 06年10月に前畑弾薬庫内の木工所が全焼した際、市消防局が照会するまで米側からの通報はなく、鎮火までの5時間余りの間、市の消防隊は基地外で待機したものの、計7回にわたる応援の打診を米側が拒否し、当日は立ち入ることができませんでした。
 火災場所が弾薬庫敷地内であったことから、こうした米側の対応に批判が集まり、消防協定の見直し作業が始まりました。

 現行協定(85年に締結)は▽火災が他方の管轄区域の人命や財産に危害を及ぼすかもしれないと判断したときは通報する▽援助する機関は特に援助と消火の要請があるまで現場付近に待機する−と定めています。

 佐世保市側は、基地内での火災発生時に▽危害が他方の管轄区域に及ぶ、及ばないにかかわらず通報する▽米側の援助要請がない段階でも情報収集に必要な市消防隊の立ち入りを認めるよう要求し、また合同訓練の充実も提案しました。

 これに対し、米側は当初「在日米軍のある他自治体の対応とバランスを図る必要があり、佐世保基地だけでは決められない」などとして、協定の見直しに難色を示していました。そして代わりに、「日米の消防が円滑に連携するための手順書や覚書」を締結し、運用面での改善を提案しました。

 その後、米側が歩み寄り、「通報は危害の可能性や援助の必要の有無に関係なく行う」ことで決着し、協議は07年11月には終了しました。しかし、在日米軍司令部がこれを受け入れなかったために協議は更に1年続きました。

 最終的に合意された改正案では通報の判断は従来どおり「火災が相手側の管轄区域に危害を及ぼすかもしれないとき」にとどまりました。主な改正点は

  • 援助要請の必要性がない火災でも相手方に通報する
  • 援助要請を受けた場合、指揮者を現場指揮所に派遣し、隊員や機材は指定する場所に待機
  • 定期的な会議は年1回以上とする
  • 各種の研修会の開催

(2008年12月16日)

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