ヒロシマ・ナガサキの心を世界に
常岡浩介講演会 ワールドピースナウ・ナガサキ

 12月16日、イラクやアフガニスタンをはじめ世界の紛争地帯の取材を続けているフリー・ジャーナリストの常岡浩介さんの講演会がありました。不可解な出来事が多いチェチェン・グルジア・ロシア。情報がなかなか伝わってきません。参加者は、命がけの取材をしている常岡さんの、撮影した映像も流しながらの報告に聞き入っていました。主催はワールドピースナウ・ナガサキ。

 今年8月、北京五輪開幕に合わせたかのようにグルジア軍が、グルジアからの分離独立を主張する南オセチア自治州に進攻しました。これに対抗してロシア軍が軍事介入するという事態に発展しました。常岡さんは8度目となるグルジアの取材に入りました。すでに戦闘は終結していましたが、牧歌的な村はロシア軍、南オセチア軍による略奪が起きていました。グルジア側が仕掛け、ロシアもその動きをつかみ、介入準備をしていました。

 ロシアではアパート連続爆破事件が起き、ロシア政府はチェチェン独立派による犯行としています。しかしロシアの秘密警察(FSB)の元中佐で、毒殺されたリトビネンコ氏はプーチン(FSBの長官だった)を権力の座に押し上げるためFSBが仕組んだ偽装テロと証言しました。リトビネンコ氏は命を狙われ、イギリスに亡命し、常岡さんはロンドンに会いにいきます。リトビネンコ氏はソ連崩壊後、FSBはソ連共産党を守るという目的がなくなり腐敗していった。FSBから暗殺指令を受けたが拒否したこと、FSBが麻薬取引や誘拐事件などを繰り返す犯罪集団となっていることなどを証言しました。

 なぜ少数民族が独立できず、不可解な出来事が起きていることが海外に伝わらないのか−−ロシアが今もなお核大国で、他国がロシアに圧力をかけられないと常岡さんは指摘します。世界の核保有国は好き勝手なことをやっている!
 また日本のマスコミ報道のあり方に問題もある。日本では身の回りの出来事から遠くなるにつれて伝える内容が薄くなる。しかし海外では重大なことは重大なこととして報道している。

 チェチェンの取材では長崎から来たと言うと歓迎されるそうです(常岡さんは島原市出身で元NBC記者)。自国民の半数が国外に流出してしまったチェチェンの現状は過去のヒロシマだといいます。その惨状が今も続いている彼らからすれば、大国の核攻撃の被害と重なって、ヒロシマ・ナガサキに“共感”を抱いているというのです。

 しかし「ヒロシマ・ナガサキ」が人類史的代名詞となっていることに日本人が気づいていない。被爆地ナガサキが発信することの意義は役割はひじょうに大きいと常岡さんは強調します。

(2008年12月17日)