佐世保で護衛艦隊集合訓練
新艦隊体制の機能チェック


自衛隊艦船が集合した佐世保の海自立神桟橋

 4月15日、海上自衛隊・護衛艦隊の集合訓練が佐世保市の海自基地で始まりました。この訓練は全国5つの基地に分散している護衛艦隊の連携向上や、団結の強化などを目的とし、毎年、行われているもので、佐世保での実施は05年に続いて7回目となります。
 全国から護衛艦、輸送艦、補給艦の計21隻、乗員約3000人が参加して19日までの5日間にわたって訓練が行なわれました。

 今回の訓練は、特に3月26日から実施した海自創設以来の大規模組織改編に伴う指揮系統の連携確認が大きな目的と見られます。改編の目的は「高練度部隊を指揮して事態対処を担う指揮官(FU)と、部隊の練度管理を担う指揮官(FP)の役割を区分することで、一元的で効果的な部隊錬成を行なうとともに、作戦実施上の指揮階層を減らして指揮命令の一元化、効率化を図る」こととされています。(FUは自衛艦隊司令官と各地方総監、FPは各護衛隊司令官)

 「指揮命令の一元化、効率化を図る」中央直轄型の改編は艦艇・ヘリの機動的運用を可能とし、ますます「海外派遣型」の体制を強化するものに他なりません。

 あわせて今回はイージス護衛艦「あたご」の漁船との衝突事故等を受けた再発防止の協議も訓練の中に位置づけられました。高嶋博視・護衛艦隊司令官は訓示で「昨年来、主として護衛艦隊において生起している事故にかかわる問題を議論することが喫緊の課題である」と述べ、再発防止策に力を入れるよう訓示を行いました。

 長崎新聞は「海上訓練指導隊群の担当者が、艦船事故の8割が人為的ミスが原因であるとして、エラーの連鎖を断ちきるために排し疎通や状況把握などが大切、と指摘」「当直中に前方に船を見つけ回避するとの想定で航海長や見張りなどが連絡態勢を確認」などの公開された訓練内容を報道しています。
 このような基本的なことを改めて訓練として実施せざるを得ないほど、病根は深いといえるでしょう。

 おりしも佐世保には3隻目のイージス護衛艦と最新鋭の掃海艇「ひらしま」が配備されたばかりです。旧テロ特措法でも新テロ特措法で真っ先に戦時派遣されたのも佐世保の補給艦でした。海自創設以来の大規模組織改編の機能訓練の場ともなり、まさに日米共同の出撃基地としての強化を実感させるものです。

 その最中、4月17日には名古屋高裁で「イラク自衛隊派遣は憲法9条に違反」という画期的判決が出されました。
 判決要旨では「米軍を中心とする多国籍軍はファルージャ、バクダッド等の都市で・・・掃討作戦を繰り返している。その結果、・・・子どもたちを含む民間人を多数死傷させ、重大かつ深刻な被害を生じさせている」と述べています。このような被害に全国の海自基地からインド洋へ派兵された補給艦・護衛艦がテロ特措法に反して大きく加担した(している)事実を見据える必要があります。
 あわせて判決要旨は「現代戦において輸送等の補給活動もまた戦闘行為の重要な要素であるといえることを考慮すれば、多国籍軍の戦闘行為の重要不可欠な軍事上の後方支援を行なっているものということができる」と述べています。つまりアフガンへの攻撃を続ける米軍への補給も「自らも武力の行使を行なったとの評価を受けざるを得ない行動」であり、「憲法9条1項に違反する活動を含んでいる」のです。

 ところが地元商工団体などでは護衛艦隊歓迎行事実行委員会をつくり、繁華街のアーケードに歓迎の横断幕や垂れ幕などを掲げました。経済的に潤えばそ何でもいいのか。軍事で発展した都市は日本のどこにもありません。

(2008年4月19日)

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