上野教会でもらったチラシ

 

ペトロ 晴佐久 昌英

ホームレス支援のうぐいす食堂に来られた方で、うれしいことにその後、日曜日のミサにも顔を出す人が少しずつ現れてきました。
そんな中の一人の男性が、つい先日は平日のミサにも来てくれたので、少しおしゃべりをしました。
聞けば何も食べてないというので、ごはんに温めたレトルトカレーをかけ、カップラーメンにお湯を注ぎ、サバ缶とフルーツ缶とチョコレートを添えてお出ししたところ、喜んで完食してくれました。
この方は、うぐいす食堂スタッフのサポートもあって生活保護を受けることが決まり、一週間後には施設に入れるということで、その報告もあって来てくれたのでした。
「よかったね、落ち着いたらまたミサに来てね」と言うと、ふいに涙ぐみ、こんな話をしてくれました。
自分は、何をやってもうまくいかない。
失敗ばかりで住む所を失い、路上生活になってしまったけれど、地面に座っているとお尻が冷たくて情けなくなる。
物の管理が不得意で、気づけば大事な物を失くしてしまう。
どこに行っても邪魔にされ、ひどいことばかり言われて、生きててもしょうがないという気になる。
ついこの前は駅前で殴られて、なけなしの財布も取られた。周りの誰も助けてくれないし、お巡りさんも取り合ってくれない。
もう死のうと思ってビルの屋上まで行ったけれど、飛び降りる勇気もない。
だけど、そんな苦しい時はいつも、以前上野教会でもらったチラシを取り出すんです。
そこに載っている神父さんの顔写真を眺めると、なぜだか涙が出てくるんです。もう何日も人と話していなかったので、こうして神父さんとお話しできるのが、本当にうれしい・・・。
見れば、汚れて黒ずんだマスクをしているので、新しいものをさしあげたのですが、長いこと同じマスクをしていたせいで耳の後ろがただれてしまい、マスクのひもが皮膚に張り付いてはがれないのです。仕方なく、ハサミで切ってはずしました。
くつしたもボロボロでしたので新しいものを差し上げ、あと一週間をやりくりするためのお金をお渡しし、雨の日は泊まりに来てくださいね、と申し上げました。
何のチラシかは分かりませんが、ほんの一枚の小さなチラシでも、教会で配られるものには聖霊が宿っているのでしょう。
どうぞ、彼がもうチラシを取り出さないで済むように、お祈りください。

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