ペトロ 岩橋 淳一
春
大地は深い眠りから覚め、深呼吸。
快い陽光を浴びた新しいたちのどよめき。
やがて草木が自らを誇示するように、色鮮やかに着飾る。
人もも躍動に身を震わせる。
この世のすべての色で空間を演出する草木と人。
でも、まだ………。
夏
力と光と熱のみなぎる季節。
草木も人もその中に吸いこまれ、癒され強められ、派手に飛び回る。
その姿はたくましく、すべての困難を乗り越え、すべてを受容できそうな風情。
でも、まだ………。
秋
待ちくたびれたのか、草木は店じまいに忙しい。
それでも最後の力で大地を美しく彩る。
人は自らの収穫に熱中し、手にする実りに気遣う。
草木も人も自分に集中する紅いとき。
そして待望のの実りを捜し始める。
でも、まだ………。
冬
春に生まれ、夏に育ち、秋に実った草木と人。
その営みに疲れ、いつしか眠りに誘われる。
大地には静寂が訪れ、空気は鋭く神聖になる。
満天の星たちは大地をかに天使色に染める。
どこからか生まれたの息づかいが聞こえてくる。
人は深く眠るとき、だれも聴くことのない産ぶ声。
いてついた大地に幼子の体温が伝わる。
人はその日、その時を待っていたのに………。
その生まれたいのちは、やがて………。
(完)