俺、女の子になれますか?

第二十二話「まゆみちゃんのお友達が大変!」

(この作品はR18です。18歳未満の方は読まないでね。)
「一輝君いますか?」
「一輝君、一輝君は?」
 その声に私の目の前に座っていたまゆみちゃんがすっと腰を上げる。
「あ、ひょっとして、絵里花ちゃん?真美ちゃん?」
「え?ひょっとして一輝君?」
「あ、あたし一輝、今まゆみになったけど」
「あ、まゆみって名前にしたんだ」
 意思疎通はすぐに終わったらしい。
「でも、一輝君じゃなくて、まゆみ、全然前と似てない」
「何その声!すっごく可愛くなったじゃん!」
 飛び込んできた二人の女の子がまゆみちゃんを見て、彼女の体を触りつつびっくりした様子。
「えー、だって絵里花も真美もさ、全然普通の可愛い女の子じゃん」
「うんそう、可愛くなったでしょー」
 心の女性化が進んでいるのだろうか、無意識って感じで一瞬三人が手を取り合おうとした時、その手を払って絵里花ちゃんが思い出した様に声を荒げる。
「違う、そんなんじゃなくて!美樹が大変なの!」
「え?美樹が?」
 真美ちゃんという子の声に答えるまゆみちゃん。
「そうなの!まだ、あれが出来ないの」
 と言って片手でバナナを口にほおばる仕草をする絵里花ちゃん。こんな仕草を恥ずかしげも無くするなんてまだ彼女の頭の中には男の子の部分がかなり残ってるみたい。
 只、彼女の言葉を聞いた時、近寄ってきた和之が心配そうに話す。
「それ、時間的にやべーんじゃねーの?」
「そうね…」
 和之と顔を見合わせて神妙な顔つきの私。
「あ、あの、一輝じゃなくてまゆみちゃんのトレーナーの方ですか?」
 いきなりそう言って絵里花ちゃんが和之の顔を見つめながら両手で真美ちゃんの肩を抱く。
「あ、ああ」
「いいなあ…まゆみちゃん、こんなイケメンの人に女の子にしてもらったんだ…」
 和之の返事に真美ちゃんが目をきらきらさせながら羨ましそうに言う。心の女性化は絵里花ちゃんより真美ちゃんの方がかなり進んでいるみたい。
「おい、トレーナーの悪口は無しだぜ、それに…」
 和之が喋りかけた時、再び部屋をあわただしくノックする音。
「お姉さん!ごめん!助けて!」
 そう言って飛び込んできたのは、自分と同じブルーのスカーフの可愛らしいヤンキー風の茶パツのドクター。よく見るとそれは以前に私が女の子にしてあげた、通称「アリス」ちゃん。今年でまだ二年目に新米ドクターだった。
「何やってんのよもう!」
 時計をちらっと見た私は呆れた表情で彼女に言う。
「あ、和之さん、お、お久しぶり…です」
 アリスちゃんも当時私のパートナーだった和之の手の中でよがり声上げながら、男の子から女の子に変わって行った一人。
「何言ってんだよお前、担当トレーナー誰よ?」
「あの、や、矢萩クン…」
「矢萩?チッ、あのヘタレが…」
 顔を曇らせてそう言いながら、アリスから渡された美樹ちゃんの書類を私の手から片手で乱暴に取り上げて読み始める和之。矢萩ってトレーナーも茶パツのヤンキー風で彼がここを休職になる直前に教えていた子だった。
 書類に目を通していた和之はちらっとアリスの顔を見ながら、
「ちょっとやな予感がするな…」
 と独り言を呟いていた。
「あの、和之さんも、お願い出来ますか?」
「部屋どこだよ?」
「アメリカンの部屋、バイクとか飾ってある…もうだめなんです。美樹ちゃん、ベッドルームの部屋の隅に座り込んで、動こうとも話そうとも…」
「…ますます嫌な気がするぜ…、これ本部の責任かもな…」
 そう言い捨ててパンツの上からガウンを引っ掛けて急ぎ足で部屋から出て行く和之。それを追う様に絵里花ちゃんと真美ちゃん、そして女になったばかりのまゆみちゃんがミュールの音を響かせて部屋から出て行く。
 私もその後を追い廊下に出ると、
「何この体、走りにくい!体重い!」
「でしょ、胸とかお尻とかすっごい揺れるの!」
「でも学校行ったらさ、こんな体で体育とかやるんでしょー?」
 まゆみちゃんの言葉に他の二人がフォローを入れてるのが前から聞こえる。胸とお尻に脂肪が付いてる女の子は男と違って走る時は腕を左右に振ってバランスを取らないと走りにくい。少しずつ女の体になった女の子ならともかく、いきなり女の子になった男の子達は当然戸惑うはず。
(まあ、そのうち慣れるわよ)
 早足で彼女達になった三人の後ろを追いながらほくえそむ私。
Page Top