俺、女の子になれますか?

第三話「女ってこんなに損なんだけど、それでもなりたい?」

(この作品はR18です。18歳未満の方は読まないでね。)
「一輝クンさ、中学の時って五〇メートル走何秒位だった?」
「え、俺?大体、六秒位?」
「ふーん、結構スポーツマンだったんだあ」
 少し間を置いて聡美ちゃんが続ける。
「女の子になるとさ、普通十秒位かかるんだよ」
「え、まじ?なんで?」
 一輝君の言葉に軽く吹き出して聡美ちゃんが続ける。
「まじってさ、女の足の筋肉なんて歩ければいい程度にしか無いし、胸とかお尻とか一歩ごとに揺れてすごい走りにくくなるんだよ。それにさ、転んだら骨折する事だって珍しくないんだから」
「本当!?」
「女の子になっていくとさ、骨盤が横に大きくなってさ、足の付け根が外に移動してさ、足の骨が内側にねじれていくんだよ。それにさ、ヒールなんか履いてたらさ、もっと遅くなるしさ」
 ふっとため息ついて彼女は続ける。
「メイクとかヘアメイク覚えなきゃいけないし、女子高校生になったらさ、男の時より一時間は早く朝起きないと学校に間に合わないんだよ。朝の洗顔、スキンケア、女の下着とか服とかめんどくさいし、ブラは苦しいし、女の服なんて夏暑いし、冬寒いし、ストッキングなんて履くのめんどくさいしさ」
 黙ってる一輝君に更に追い討ちをかけ始める聡美ちゃん。
「もし一輝クンが女の子になってさ、夜道一人で歩いててさ、後ろから襲われたらどうすんの?」
「え…」
 一瞬考え込む一輝君だけど、
「爪で引っかいたり、噛んだり、持ってる物で抵抗…」
「それ、絶対出来ないから」
 一輝君の言葉を遮る様に言う聡美ちゃん
「じゃ、俺護身術…」
「無理!」
「どうして!」
 さっきよりきつめの口調で言う彼女に一輝君がちょっと抵抗する。
「護身術覚えたってさ、本当気休めにしかならないからさ。ずっと武術続けるならいいけど」
 そう言って聡美ちゃんは一輝君の顔にぐっと顔を近づけて続ける。
「男に何かされた時点で、もう怖くなって頭の中もパニックになるから。体がすくんでなんにも出来なくなる。出来る事と言えば、ささやかな抵抗と大声で助け呼ぶ事だけ」
「嘘だろ、そんな事って」
「あたしも男から女になってびっくりしたの。それに抵抗したって小柄な男でも力じゃ負けちゃう。そして捕まえられて押し倒されたらさ…」
 一息入れて彼女が続ける。
「女はもうおしまい。乱暴されて犯されるか、最悪殺されるかもしれない」
「本当なの!?そんなの、女って損じゃん!」
「だからさ、女の子になったら夜道とかは二人で歩くとか、最新の注意払わないと命に関わるんだよ。それにさ」
「まだ、あるんすか」
「あたりまえじゃん」
 今度は一輝君の寝ている手術台にほおづえをつく姿勢になって続ける聡美ちゃん。
「女ってさ、理屈通らないし、変な事で気分害するから。
ほら、一輝クンだって中学とか高校一年の時なんとなしにわかってたでしょ?お姉さん、わけわかんない事で怒ったりしなかった?」
「う、うん…姉貴変な事で怒ったりするから」
「女の子になったらそんな世界に毎日放り込まれるんだよ」
 じっと一輝君の目を見据えながら聡美ちゃんが続ける。
「たとえばさ、朝適当にメイクして適当に服選んで来た女の子にさ、今日いつもよりかわいいじゃん、なんて言ったらそれだけで嫌われるんだよ」
「どうして!?」
「あたしそんなにメイクとかヘアアレンジ下手なんだ、とか、あたしの事あんまり気にしてないんだとか瞬時に思われてさ、それが他の娘に悪口としてどんどん伝わっていくの」
「…」
「もし一輝クンが用事が有ってさ、放課後お茶とか誘われて断ったら、もうあたしの事嫌いなんだとか、避けてるとかそこら中に悪口言われるんだよ」
「そんなのありえねーよ…」
 いつの間にか、レーザーの脱毛とかシミ消しは彼の太股に及んでいた。少し痛いはずなんだけど、一輝君は聡美ちゃんの話が気になってそんな事に気づいてない様子。
「まあ、極端な例だけどね。でもそんなややこしい事が女の子同士の世界じゃ日常茶飯事」
 そう言って聡美ちゃんはようやく立ち上がって、一輝君の方をちょっと振り返って言う。
「だからさ、女の子って男の何倍も気が利いたり気配りが上手になるの。男の子だったあたしもいつしかそうなっていったんだから」
 横で二人の会話をじっと聞いてた私。実はこれは私が聡美ちゃんに言わせてるんだ。男は女の華麗で可愛い面しか見ない。むろん女の子もそういった暗黒面はなかなか男には見せない。女の子になってそんなはずじゃなかったって後悔する子も少なくない。だから、今まだ男の子に戻れる時にさんざん脅しをかけておくのが私のやり方。
 長々と女社会を愚痴ってた聡美ちゃん。やがて体の表の施術は終わる
「一輝クン。お腹側終わったから次背中。今度はうつぶせになってね。あ、注射針の刺さってる左腕に注意してね」
「あ、はい…」
 私の言葉に血液と薬が注入されてるチューブの付いた腕輪に気をつけながら、ごろんと手術台の上でうつぶせになる一輝君。私はそんな彼の体の変化をいろいろチェックする。
(うん、今のところうまくいってるみたい)
 浅黒かった彼の体は明らかに白くなり始めている。二の腕、胸、お腹、太股やふくらはぎとか、男の筋肉が目立っていた所はその隙間に総じてうっすらと女の脂肪が付き始め、曲線で縁取られはじめていた。それに、
「ほら一輝クン、こことかこことか、柔らかくすべすべになってきてる。腹筋もなくなり始めてるしさ」
 私が彼の二の腕と太股をさわりながらそう言うと、うつぶせになりつつ左手で自分の太股を触り始める彼。
「あ、ほんとだ…」
 ちょっとぼーっとした感じで話す一輝君。
「なんだか、ちょっと可愛くなってきたみたいね」
「可愛いって、それ…」
 そう言いつつうつぶせになったまま私の方を向いた彼が続ける。
「俺、今まで可愛いって言われた事ないから…」
「いいの、可愛いってのは女の子にとって魔法の言葉なんだからさ。その一言が欲しい為に女の子は毎日頑張るの!」
 手術台から少し離れたテーブル横の椅子に、さっき長々と喋って疲れていたのか、そこに座っていた聡美ちゃんが語気を荒げて言う。ふとその方向に目をやる一輝君だけど、私は彼の目線が聡美ちゃんの短い白のワンピースの股間に有る事に気づく。揃えた両足の真ん中には明らかに彼女のピンクのパンツが見えている。
 私と一輝君の目線にようやく彼女も気づいて両手でワンピの裾を正そうとしたけど、
「ま、いいか。明日にはあたしとおんなじ体になるんだし」
「すんません…」
 聡美ちゃんの言葉に相変わらずの男言葉で答え、目をそらす一輝君だった。
(これはもしや…、もう一発脅してやろうか。女の子になって後悔するタイプかも…)
 そう思った私は、さっき聡美ちゃんがいた手術台の横に行って、台に手をかけてゆっくり座る。
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