俺、女の子になれますか?

第二話「基礎施術」

(この作品はR18です。18歳未満の方は読まないでね。)
 暫くして私が施術用の部屋に入ると、手術台というか、
ベッドが入っている透明なカプセルの中に両手足と腰をベルトで固定されトランクス一枚で寝かされている一輝君。
そのカプセルの横に空いた長細い隙間に手を入れて一輝君の二の腕とかを興味深そうに触ってる聡美ちゃんがいた。
「何やってんの、聡美ちゃん?」
「う、うん、この硬い筋肉とかの感触懐かしいなってさ」
「…そっか、聡美ちゃんもスポーツやってたのよね」
「うん、バスケもやったけど、クラブはサッカーだった」
 カプセル内に寝かされてなんだか落ち着かない様子の一輝君に、
「ねえねえ一輝クン」
 と声をかけ、何を思ったのかパンツが見える位にワンピースの裾をまくり、ふっくら真っ白な太股を見せる聡美ちゃん。
「信じらんないでしょ?サッカーで鍛えてさ、筋肉の塊だった太股が、今はもうこんなだよ」
 目のやり場に困り、ふとそれから目をそらす彼。
「何恥ずかしがってんのさ、女になるんでしょ一輝クン」
 もういい加減悪ふざけやめさせよう。
「聡美ちゃんそれまで!時間おしてるから」
「はーい」
 私の言葉に聡美ちゃんはそそくさとワンピの裾を直して、その手でつるんと自分のヒップを軽く撫でてカプセル
横の操作台の一つのスイッチを入れると、カプセルの上部の一部が開き、天井に吊るされたシルバーの丸っこい装置が降りてきて、一輝君の股間のすぐ横で停まる。
「じゃ一輝クン。今から精巣機能停止させるから」
「え!もう…」
 私の言葉に驚いた様に言う彼。
「麻痺させて四十八時間停止させるだけよ。途中でやっぱり女になるのやめるって子がときたまいるからさ。じゃいくよー」
 ブーンという音がして、トランクス越しに熱線みたいなのが彼の股間に当てられる。一輝君からみれば弱いドライヤーを当てられた感じだけど、それはゆっくりと彼の精巣機能を停止させていく。
「聡美ちゃん、血液交換を」
「はーい…」
 私の言葉に返事をして手早く下に駒の付いた大きな装置を転がしてくる聡美ちゃん。私はその装置からチューブ付のリングを二つ取り出し、カプセルの隙間から彼の左手に
はめて固定させる。
「これ、なんすか…」
「一輝クンの血を薬品の入った女の子の血液と交換するの」
「う、うそ…」
 そう言って驚いた彼を気にも留めない私。その男言葉、いつまで続けられるかなってふと口元に笑みさえ浮かぶ。
「聡美ちゃん、お願い」
「はーい」
 彼女が操作パネルを触ると、うっと顔をしかめる一輝君。彼の左腕の静脈に二本の針が打ち込まれ、彼の血が抜かれると同時に、薬品と特殊な女性ホルモンの入った血液が送り込まれていく。
「どう、気分は悪くない?」
「あ、あの、すごくだるいっす」
 彼の男言葉に再度ふっと笑みを浮かべる私。
「交換までにかなり時間かかるからじっとしててね。その間もう一つやるから。聡美ちゃん、あれ外していいよ」
「うん、わかった」
 先程設置した精巣機能停止装置がするするとカプセルから抜けていく。その様子を見た一輝君が目を見張る。
「あの、先生、まさかもう…」
「うん、そうだよ。一輝クン、今一時的だけど男じゃなくなったから」
「ま、まじ…」
 思わず両手を股間に当てようとする一輝君に、
「だめだめ、リング付いてる左手動かさないで」
 固定された右手でなおも股間にそっと手を当てようとする彼。彼が寝かされてるベッドの傍らに手をかけしゃがみこむ私。
「ねえ、本当にいいのね?女って辛くて大変だよ。一輝クンのお姉さんだってさ、辛い事とか悩み事とか一杯抱えてさ、多分それでも一輝クンの前ではにこにこしてるんだと思うよ」
「…そうなの?」
「そうよ」
 私は立ち上がって彼に微笑みかける。
「一ヶ月に一回お腹痛くなるしさ」
「それ生理って奴?」
「そう、女の子なら誰でもね」
 と、コントロールパネルの席の聡美ちゃんがぷっと吹き出して口に手を当てた。
「聡美ちゃん!」
「わかってるって」
 私の言葉にまだ笑いながら再びコントロールパネルを操作し始める彼女。
「先生、もういいんでしょ?次行っても」
「ええ、いいわよ」
 聡美ちゃんに返事をした私は、そのまま一輝君の方を向く。
「え、次何やるんすか」
 不安そうに尋ねる彼にちょっと意地悪そうな顔で笑って
答える私。
「体を綺麗にしてあげる」
 えっという感じで私を見つめる一輝君に、私は笑いながら話を続ける。
「女の子は肌の新陳代謝が激しいから体のシミとかほくろはそんなにないんだけどさ、男の子はもうそれはひどいからね。今からそれを取ってあげる。聡美ちゃん、レーザー用意して」
「え、レーザー!?」
「あと、同時に体毛と髭と、あそこの毛も整えてあげる」
「え、ちょっと、いきなり…」
 突然の事にびっくりした様子の一輝君だけどさ、あなたここになにしに来たのよ!
「大丈夫ちょっとぴりってくるだけだからさ」
 ちょっとあきれた様子の私の目の前で、小さな半球状の機械にノズルみたいなのが四本付いてる機械が一輝君の顔の真上にセットされていく。
「最初は顔からいくからね。これでシワとかシミとかホクロは殆ど消えるけど、女の子のチャームポイントになる泣きボクロと笑いぼくろだけは残すから。それとも全部取っちゃっていい?」
「あ、あの…」
「じゃ残してあげるね。眉の形は?眉いじると本当顔変わるよ。まあどんな形にしてもメイクでなんとかなるからさ」
「あの、おまかせします…」
「あそこの毛は?」
「あ、あそこって…」
 と横で機械操作していた聡美ちゃんが両手を頭に当てて言う。
「いいんじゃない?あたしと一緒でさ」
「聡美さんと一緒って…」
「うん、薄くて長方形。大体の女の子はそんな形してるよ。それとも逆三角形?パイパンにする?」
「も、もう、すべておまかせします!」
 目を瞑って恥ずかしそうに顔を真っ赤にしてそう言う一輝君。そんな彼に私はちょっと意地悪く微笑みかける。
「えへへ、その方がいいわよ。あたしはこれまで何十人の男の子を女の子にしてきたんだからさ。どんな男の子にどういう整形したら可愛くなるか、みんなわかってるんだからさ」
 そう言って私は一輝君の寝ている手術台の横の操作パネルのスイッチを入れる。レーザー動力の電源の音がかすかに響きはじめた。その横には事前に手に入れた一輝君のお姉さんの写真が置いてある。
(可愛い娘じゃない。この娘より可愛くしてあげよっか)
「一輝クン、大丈夫?痛くない?痛かったら手の指を上げて」
 特に何もない事を確認して私は少しほっとする。
 既に彼の太く黒かった眉は私自らの手で操作するレーザーの機械で、彼のお姉さんと同じ形で、しかも修正を入れて左右対称に薄く細く丸く、女の眉に整えられていた。
 他の美容レーザー銃は、彼の顔のシミやほくろ、ニキビ跡、しわや髭、産毛を自動的に感知して、泣きボクロとか笑いほくろとか指定した場所以外を確実に上から潰していく。その跡は薄く赤い痣みたいになっているけど、そのうち彼に注入している薬品入りの女性血液によって、皮膚の美化と共に消えていくだろう。
「一輝クン、そろそろ髭の処理するから、ちょっと痛いかもよ。あ、まだ喋らないでね」
 程なく、今までほくろとかシミとか別々に動いていた小型のレーザー銃が一斉に彼のあご髭に集中し始める。彼の顔がちょっと曇る中、彼の顔の右部分から綺麗に濃い毛根が処理され、赤い斑点に変わっていく。
 とうとう手首を固定された一輝君の手がちょっと動くのを見た私は、すっと操作パネルの元に行き、出力を弱めると、レーザー機器の備わった半球状の機械の動きが幾分遅くなった。
「もう少しで終わるから、ちょっと我慢してね」
 私の言葉に一輝君の指がほんの少し動く。
「終わったよ。じゃ体の方やるから目あけていいよ」
 一輝君は手術台の上の明るいライトに目をしょぼしょぼさせる。レーザーの機械は彼の顔の上から胸の上へ移動し、体の方のシミやほくろ等を処理しはじめる。
「結構…毛深いよね、一輝クンの足。それに結構筋肉質じゃん。惜しいなあ…」
 そう言いながら私は機械の微調整を終えて、手術台の傍らの椅子に座る。
「懐かしいなあ、この感触。今のあたしってこんなだもん」
 そう言いながら私の横に立ってまたもや見せびらかす様に白くてつやつやしてふっくらした綺麗な自分の太股を指でつつく聡美ちゃん。ふと彼女はその場にしゃがみこみ、うさぎ跳びみたいに一輝君の顔の所へ行き、手術台の端に両手を合わせて置き、その上にあごを載せる彼女。
「ねえ、一輝クンさ、まだ男の子に戻れるうちにさ、もう一度考えてもいいかもよ。本当に女の子になっていいのかってさ」
「え、それ、どういう事なんすか?」
 まだはっきりと男言葉で言う一輝君に一瞬だけ微笑んで聡美ちゃんが続ける。
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