翌日、朝早くから伊豆急に乗り、東京方面へ向かう僕。そして僕の向かった先は、僕の実家!
とにかく、テレビの嫌がらせみたいな取材は止まったけど、僕なりに今度の事親父にびしっと言ってけじめをつけておきたかった。
そして体を女の子にされる前、一目だけ母親に会いたいというのも有った。
白のブラウスに白のセーター、チェックのスカートに黒のタイツ、黒のヒールに真っ赤なコート。ピンクのバッグでおすまし気味に歩く僕。
顔見知りの人に何人か会うけど皆知らん顔。ま、当然だよね。僕、ほぼ女の子になったんだし、顔変わっちゃったし。
実家の前に立つと、やはりこんな姿になった今、インターホンを押すのは恥ずかしかった。ええい、このままずけずけと入っちゃえ!
「ただいまー」
すっかり可愛い声になった僕、そして出てきたのは…母親。
「え、あのどちら様ですか、ここは倉田ですが」
「俺の顔忘れたのかよ。俺だよ、涼平だよ」
事態が理解できずぽかんとする母親の横をすり抜け、二階の階段をトントンと軽い女らしい足取りで上がる僕。その後ろで、
「涼平って、まさか、まさか!涼平なの?」
「そうだよ!」
驚いた母親の声を聴きながら、俺は親父の書斎の前に立ち、そして思いっきりドアを開けた。
「親父!いるのか!」
怒鳴り声のはずが、僕の喉から出たのは、可愛い女声だった。
僕がそこで見たのは、ベッドにごろんと寝転がって天井を見ている親父の姿だった。
いつも机に座って資料見ながら何か書いてるはず親父が、ははーんそうか。
「なんだよ、仕事干されたのか」
ようやく僕に気づく親父、そしてしばし僕の姿を眺めた親父は、
「まさか、お前、涼平か?」
と力無くベッドから体を起こしながら僕に言う。
「そうだよ!あんたの息子だった涼平だよ!」
そして僕は行動に出た。コートを脱ぎ捨て、セーターを脱ぎ、ブラウスを乱暴に脱ぎ捨てると、僕の胸にしっかりと付いた白いブラ。
「お、おい何を…」
ベッドの上に力無く座り、僕を凝視する親父。
「俺がこんな体になったの、親父のせいだからね!」
可愛い女声で男言葉を喋るのに少し慣れた僕。僕は慣れた手つきで背中に手を当て、ブラのホックを外し、胸に手をやりブラをはぎ取った。
プルンとした感触と解放感と共に、親父の目に晒された、もうBカップ近くまで膨らんだ僕の胸。少し恥ずかしかったけど、研究所と美紅に今までされてきた事を思うと…。
「そうか…、ずっといたのか」
「なんだよ!それ!」
僕はバッグからあるものを探している間、親父を責め続けた。
「俺、もう男に戻れないんだぞ!毎日ブラ付けないと生活できないし!化粧しないと外歩けねーし!スカート履かないと学校行けねーんだぞ!」
そして、バッグの中から一枚の名刺を取り出す。それはハンさんが取材のチーフに渡した赤に金色の字の書かれた、ハンさん自身の名刺。それをぽんとベッドに座っている親父の足元に投げた。
「なんだ、これ?」
「とぼけんなよ!俺この人と知り合いだぜ。二度とこそこそ偵察したりすんなよ!」
僕の女声は、男らしくなるどころか、ヒス起こした女の子みたいに甲高くなる。
「しらねーもんは、しらねーよ」
親父もようやく、自分の息子が女にされて戻ってきた事態が頭の中で整理できたのか、口調がいつもの親父に戻る。
「聞いたよ、おめーら取材の奴に銃向けて、バスとカメラ壊したらしいな」
「そうだよ、知ってんじゃんか!しかも、ヘリコプターとか漁船とか使って俺の入ってる研究所探ってたしさ!」
「そんな事しらねーよ!」
「とぼけんじゃねー!」
「俺がそんな事出来るわけねーだろ!だいたいそんな金ねーよ!」
親父のその言葉に、俺はちょっと言葉に詰まった。
「親父、本当にしらねーのかよ?」
親父はしばし沈黙の後、ベッドに座って煙草に火を付ける。親父が煙草吸う時は、だいたい真面目な話する時だ。
「俺の企画、取られちまったんだよ。テレビ局の奴らに」
「えー?」
僕はちょっと驚いて、そして親父を見つめる。そしてぼそぼそと親父が喋りだす。
「俺がやったのは、雑誌に二回目の記事乗せるまでだ。理紗ちゃんから、涼平の監禁されてるのは伊豆半島の東じゃなくて西のどこかだって、言われた後な」
力無さそうに煙草を一息吸って続ける親父。
「そしたらテレビ番組の制作会社の奴が近づいてきてよ、『はいご苦労さん。こっからは僕達でやりまーす』て、その薄っぺらい封筒俺に渡してよ…」
ふと机の上を向く親父。確かになんらかの小さい封筒が有った。
「逆らうとこの業界、今後いいことねーからさ…、たった五万だよ。足代にもなりゃしねえ。そっから先は知らねえけどさ」
今度は煙を大きく吐いて、煙草を灰皿で消しながら言う。
「なんか、お前達あいつらにやったらしいな。ガセネタ流した俺が悪いって事になっちまってよ。今長期休業中だ」
そうだったのかよ、まあよくよく考えてみりゃ、俺の親父にあんな乱暴な事出来る訳が…。
「それ、持ってけ。おめーの金だ」
二本目の煙草を、壁を向き、僕に背を向けながら吸いつつ、僕に言う親父。流石に女の子の体になってしまった僕を見るのは辛いらしい。でもさ、これ自業自得だろ!そしてその時、
「涼平…」
部屋のドア付近にいつのまにか母親が立っいるのに気が付く僕。あ、ちょっと流石に母親には僕の膨らんだ胸見せる訳には!
「涼平!元気だったかい!」
てっきり僕の姿を見て気が動転するかとおもいきや、母親は胸をあらわにした僕を気にせずしっかり抱いてくれた。
「あたしも、お父さんも、本当心配してたんだよ。元気なのかどうかわかんなかったし」
「親父も?まさか…」
「変な施設で変な事されてないかってさ」
「母さん…」
僕も柔らかくなってしまった手で、本当久しぶりに母親の体を抱いた。そして、落ちていたブラを手にし、僕の体に付けてくれる母親。恥ずかしくて顔真っ赤にする僕。
「母さん、そのなんとも思わないの?その俺が女みたいになって…」
「何言ってんだよ、男だろうが女だろうが、あたしの子供だよ。はい、セーター。ほら、コートこんなにしてるとしわくちゃになっちやうよ」
僕にセーターを渡したその手で僕のコートを手にかける母親。
「まあ、最初バカ親父に話聞いた時はそりゃびっくりしたけどさ。まあ、こんなに可愛いくなったんなら、まあそれはそれでいいんじゃない」
母親にバカ呼ばわりされた親父が、現金の入った封筒を母親に手渡すと、母親は少し強引にそれを親父の手からもぎ取った。
セーターを着る前にスカートを緩めなきゃ。僕は恥ずかしげにスカートを脱ぎ、セーターを着込むと再びそれを履いた。
「こんなお尻になっちゃって」
笑いながら僕のお尻をポンと叩く母親。ほっとする僕。そして、恥ずかしげに母親に聞いた。
「母さん、俺、明日手術なんだ。明日、俺娘になるんだけど」
「へーぇ、そうなんだ。涼平の女の名前ってあるの?」
手術の事軽くかわされてしまう俺。俺は恥ずかしげに答える。
「あ、あの、俺、愛って名前に」
「へーぇ、いい名前だね。じゃ…」
一呼吸置く俺の母親。ひょっとして顔には見せないけど、かなり動揺してるのかも。
「じゃ、愛」
「は、はい…」
「可愛い女の子になってね」
その言葉に再び僕は母親をしっかり抱きしめた。もうこんな体になった僕だけど、母親の息子として、ぎゅっと力入れて。
「…本当に、このバカ親父のせいで…」
照れ隠しなのかわからないけど、母親の口からしきりにそんな言葉が出た。
「親父は、後半は無関係だったよ」
携帯で堀先生にそう言う僕。驚く堀先生に、僕は明日実家から直接早乙女クリニックに行く事を伝え、そして母親の料理を手伝った。そして、倉田家の息子として最後の夕食。さすがにバツが悪いのか、親父はすごすごと先に自分の部屋へ戻っていった。
「ねえ、涼平、じゃなくって、愛」
「え、何?」
母親に愛って呼ばれるのがまだ恥ずかしい僕。
「お父さん、許してあげれる?」
複雑な心境だけど、僕にとって不幸と幸福が一緒にやってきたんだけど、そのバランスは僕にはまだわからない。だけど。
「今はまだ許せないけど、俺が完全に女になったらわからない」
「完全に女になれるの?赤ちゃん生めるの」
「うん…」
「へぇー、それは知らなかったわ」
僕は絶対秘密と念を押し、母親に研究所の事をいろいろ話した。トレーニングの事、優しい先生達の事、友達の事、先輩の事、そして事件とかの事…。話は夜更けまで続いた。 そして、半年ぶりに入った僕の部屋。
久しぶりに着たトレーナーに、胸とお尻の違和感を感じた僕は、部屋に貼ってあるサッカーと音楽関係のポスター一枚一枚を懐かしくみつめながら、深い眠りに入っていく。
翌朝、母親に送られて家を出る僕。早乙女クリニックへ向かう途中で、僕は今まで通っていた中学校を最後に一目見ようと、より道をした。
日曜の朝、懐かしい学校の校庭ではサッカー部が早朝練習の真っ最中。それを見ながら一年前の自分を思い出す僕。留学かどうかはともかく、高校へ行ったらサッカーやるんだと決めていた僕だけど。
フェンスを掴む僕の白く細く柔らかくなった指に力が入る。
(サッカーやる予定だったのに…。サッカーやりたかったのに…。男同士のぶつかりあい、せめぎあい、好きだったのに…)
そして、
(女の子の柔肌の感覚、好きだったのに…。女の子の香り、好きだったのに。理紗とのエッチ、楽しみだったのに)
最後にぎゅっとフェンスの網を掴んだ僕は、履いていたヒールでどんとそれを蹴り、そして早乙女クリニックへ向かった。
とうとう、女にされる…、緊張感でがくがくな僕。本日休診の札のかかった早乙女クリニックの中は、知らない人、外国の人でごったがえしていた。
僕を見つけ、手を引いて地下室へ連れて行く渡辺先生。階段を降りてく途中、渡辺先生から、これから僕に試される最後のテストの事について聞かされ、
「えーっ」
と驚く僕。
「テストというより、もう儀式だよね。ずっと続いてる…」
「で、でも、なんだか変な儀式…」
「ううん、変じゃないよ」
階段を降り、その儀式の行われる部屋の前で僕に話す渡辺先生。
「とっても大切なんだよ。あたしも、ゆっこ(堀先生)も、そしてみんなも。この部屋でおのおの小さな伝説を作って、そして男を捨てて女になる覚悟決めたんだ」
そう言って小さな部屋の戸を静かに開ける渡辺先生。そしてそこには聞いてた通り等身大の男性の人形が寝かされ、そしてその男性自身がほぼ垂直に天井に向かってそびえていた。
「さあ、愛ちゃん。覚悟決めてね。みんな終わるまで待ってるから」
人形と共に一人取り残された、セーターにスカート姿の僕。うっすらと香ってくる何かの香水の匂い。人形の横に座った僕は、別に恥ずかしいとも思わず、その男性自身を触ってみる。それは石か何かで出来た感触で、人肌程度の温かみが有った。
「ああ…」
大きくため息をつき、自分のセーターの上から膨らんだ胸を触り、そしてスカートの裾を指でなぞる僕。
(本当に、本当に、どうしてこうなっちゃったんだろ)
思えばすごく短い一年だった。最初は完全な男だったのに、我慢してあの研究所で生活しているうちに、女の子の喜びとか楽しさとか、そして悲しさまで覚えてしまった僕。男に戻れるって聞いてたのに、いつのまにか後戻り出来ない体になった僕。
走馬灯の様に、この研究所での生活を思い出す僕。そして、僕の意識は竜矢君とのたった一日だけのデートで止まる。頭の中にその時の光景が浮かんでいく。
(あの時、僕が女だったら、こんな場面になってたのかな)
そう思った時、部屋に入った時から僕の鼻をくすぐっていた、カカオみたいな匂いが僕をとってもまったりとした気分にさせていってるのがわかった。そしてあの時の事をおもい出すと、あ、僕…。
無意識のうちに、その人形を抱き、そして頬ずりしはじめる僕。
(暖かくて、たくましくて…)
だんだん人形の上に覆いかぶさって、そしてあの時の竜矢君の時みたいに、唇を重ねていく僕。そしてうずき始めるスカートに隠れた、僕の退化した男性自身。一年前はこんなだったのに、今やすっかりぺちゃんこになり、小指程になって、くしゅくしゅした包皮に包まれてしまったそれ。それが、だんだんうずいていく。そして固い胸に触れた、ブラに包まれたバストトップが、つんと隆起しはじめる。
(あ、僕、壊れていく…)
ブラに包まれた僕の膨らんだ胸を人形の体に押し付け、そしてそのそそり立った男性自身を僕のチェックのスカートごしに僕の股間に押し付け、女の肉がいっぱい着いてきたヒップが小さく小刻みに踊り出す。
媚薬が人形に塗ってあったらしい。しかも、女にしか効かない媚薬。でも僕の体はもう十分それに反応する様になってしまったんだ。
(どうして、僕男だったのに、どうして!どうして!こんないやらしい事を…)
もうだめ、もうだめ…。僕は人形の上でずるずると半回転し、そして目をきらきらさせながら、
「あうう…」
口全体に感じる不思議なあたたかみ。それをねっとり包む僕の口の中の粘膜。とうとうその人形の男性自身を口に含んでしまう僕。僕が、もう僕でなくなった瞬間だった。
目をとろんとさせ、まくれたたスカートから多分パンツが見えるほどに乱れた僕の姿。だけど、
(いいの、気持ち良ければそれでいいの)
頭の中の言葉までとうとう女性化しはじめた僕。そして、ぐったりした僕は部屋から運び出された。