Webで見つけた情報

見つけた情報を随時追加していきます。

■ 乳がん治療に関する施設間の違いに関するニュース
 
キャリアブレインに乳がん治療に関する医療施設間のばらつきが載っていました。
乳がんは症例数も多く、標準治療など科学的根拠に基づいた治療が確立されつつあるようですが、
やはり施設や状況によってばらつきが認められるようです。
それぞれが当事者にとって最善・最適なばらつきならいいのですが、単なる施設間の格差だとすると
気になります。
また、症例数が多い病院ほど温存率も高いようです。
乳房再建に関しては行っていない施設が多く、行っているとしても、
実施率は全症例の5〜7.5%という病院が多かったようです。

イタリアのある施設ではほとんどの乳がん患者が再建を行っていることを
考えると、日本人の考え方の違いもあるのかなぁ・・・と思ったニュースです。

以下、ニュースの原文をご覧ください。
( 2011年05月24日 15:44 キャリアブレイン )


-乳がん手術、入院日数など施設間にばらつき- CQI研究会-

 がん診療連携拠点病院など、がん治療を行う全国の病院がDPCデータなどを出し合い、
手術の実施状況などを比較する「CQI研究会」がこのほど、東京都内で開かれた。
2007年に5施設で発足して以来、研究会が開かれるのは今回が7回目で、74施設が参加。
乳がん、大腸がん、肺がんの手術前後のプロセスを分析した結果、乳がんでは
症例数が多い病院(年換算80件以上)の間に、手術後の入院日数にばらつきがあることが分かった。

 データ集計を担当した「グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン」(GHC、東京都港区)の
相馬理人マネジャーは、「乳がんではかなり標準化が進んでいると思うが、施設の事情や地域特性の
要素もあってか、実際には施設間の違いがかなり目立った」と総括した。

 74施設が提出した昨年7−12月のDPCデータなどをGHCが分析。別途、アンケートも行った。
乳がんに関しては、74施設に入院した患者7119件分のデータを集計した。
その結果、乳がん手術の症例数が多い病院では、乳房温存率が8割を超えるケースがある一方、
4割を割り込む病院もあった。温存手術を行っていたのは全体の58.4%だった。

 また、アンケートには43施設が回答し、手術後の出血に伴う再手術の実施割合は、
全症例の「0%」「1−2%」の病院が全体の84%を占めた。
一方、乳房再建手術は行っていない病院が45%と多く、行っているとしても、
実施率は全症例の5−7.5%と低い病院が多かった。

 国立がん研究センターによる乳がん手術の標準クリニカルパス(腋窩郭清あり)では、
術後7日間の入院を目安としている。
これに対し、研究会の74施設で実施した部分切除手術708症例の術後入院日数は
平均7.0日間で、標準パスと一致した。
しかし、乳房をすべて切除した場合には平均9.3日間と標準パスを上回った。
 術後の入院日数は、手術の症例数が多い病院ほど短くなる傾向だった。
ただ、症例数が多い病院でも、入院日数の平均が4−5日間と標準パスより短い病院がある一方で、
10日間を超える病院もあり、ばらつきがあった。

 各病院へのアンケートではこのほか、腋窩郭清の有無にかかわらず、
独自パスの中で入院日数を標準パスと同じ「7日」に設定しているケースが大半だった(回答した44施設分)。
症例数が最多だった四国がんセンターでは、全症例の87%で実際の入院日数が標準パスと一致した。
これに対し、44施設の4割以上では、実際の入院日数の平均が独自パスの設定を上回っていた。
過半数の症例で、入院日数が独自パスより1週間以上長い病院もあった。

 術前処置として半数以上の症例に対して下剤を投与する病院は20施設で、
参加病院の半数を割り込んだ。ただ、1−2割では全症例に投与していることも分かった。
一方、手術日に半数以上の症例に対して浣腸を行っているのは6施設と少なかったが、
すべての症例に浣腸を行う病院もあった。1施設では、全症例に浣腸と下剤投与を行っていた。

 手術前後の抗生剤の投与にもばらつきがあった。
乳がん手術の標準パスでは、抗生剤の投与を「原則不要」とし、使用する場合にはセフェム系第一世代か
ペニシリン系の直前投与を推奨している。
しかし実際には、抗生剤を全く使用していない病院は2施設にとどまった。
使用しているケースでは、標準パスが推奨する第一世代の投与率が高かったが、
第二世代などの投与が多い病院もあった。
 手術日のプレメディケーション(前投薬)は全体の19%で実施。7割以上の症例に前投薬を行う病院が2施設ある一方、
15%では全く行っていなかった。

 アンケートで抗生剤の投与期間を聞いた結果は、回答した45施設のうち31施設が、独自パスで「1日」と設定していた。
ただ、「2日」の病院も11施設あった。
パスでは「1日」と設定しているものの、実際には2日間以上投与する症例が多い病院もあり、
投与日数の平均は1.3日間だった。

 手術後のリハビリテーションの実施率は16%で、未実施の施設が過半数を占めた。
一方で、9割以上の症例で実施している病院も7施設あった。

■肺がん手術、3、4期が多い病院も
 肺がんに関しては、23施設の症例の病期割合を検証した結果、病状が進行して主に抗がん剤や
化学療法の対象になる4期が35.2%で最多だった。
入院患者の病期を病院ごとに見ると、4期の患者が過半数の病院が4施設ある一方で、
症状が比較的軽い1、2期の患者が過半数の病院も4施設あった。
病院ごとの手術の実施状況を分析した結果、手術の対象になりにくい3期や4期の手術が
全体の3−4割を占める病院があることも分かった。

 国立がん研究センターによる肺葉切除手術(開胸手術)の標準パスでは、手術後の入院日数の目安を
7日間としているが、アンケートに答えた45施設のうち9施設では独自パスで入院日数を設定していなかった。
また、74施設の患者1万5104件分のデータを集計した結果、実際の入院日数は開胸手術で平均13日間、
身体への負担が少ない胸腔鏡手術(部分切除含む)で平均10.6日間だった。

生活の質や命に係わる情報が極端に少ない中、このようなデータ収集が多くされ、積極的に公表されることを期待します。


 乳がんの治療薬に新しい選択肢が登場!!

エーザイは4月22日、新規作用機序の抗がん剤ハラヴェン静注が「手術不能又は再発乳がん」の効能・効果で製造販売承認を取得したと発表しました。
多くの患者さんの治験への協力の成果です。エーザイの情報をご覧ください↓。
http://chocola.com/news/news201133pdf.pdf



■ 乳がん診療に関するデータ

 乳がん治療に関するデータは、なかなか思うように見つかりません。そんな中、日経BP社乳がん百科HPに拠点病院以外の治療データの調査が掲載されていました。山梨県は人口が861,943人(2011年1月1日現在)ですので人口87万人以下の地方自治体を中心にチェックしてみました。例として山梨県と福井県を一覧にして紹介します(日経がんナビの許可をいただいています)。また、鹿児島県は拠点病院での乳がん治療の実績が少ないのですが、その理由は乳がん治療の専門病院があるからです。ここでは乳がん治療に特化した体制をしいていて、拠点病院全体の乳がん治療の約7倍の数の治療を手掛けています。これも患者にとっては望ましい医療環境の在り方の一つだと思います。年間数例の手術しか経験できない施設より、多くの患者を対象としたくさんの経験値を持った医師による対応を望みたいと思うのは乳がんだけのことではないでしょう。難しいこともたくさんあるでしょうが、患者の視点で言わせてもらえば、小さな自治体では治療に関する役割分担があってもいいのかもしれません。
 以下、日経BP社乳がん百科HPデータで作った一覧表を紹介します。
     
※ この調査に協力くださった医療施設に感謝と敬意を表したいです。
       ありがとうございます。

              データソース:日経BP社乳がん百科HP
                     乳がん診療に関する全国調査2010
                      −日経BP社「がんナビ」調べ−

                                       -治療実績は2008年の一年間と2009年の上半期(1〜6月)

 山梨県の乳がん診療に関する調査  yamanashi.pdf へのリンク
 福井県の乳がん診療に関する調査  fukui.pdf へのリンク
 鹿児島県の乳がん診療に関する調査  kagoshima.pdf へのリンク

 この表以外に、人口87万人以下の県は、鳥取県、島根県、高知県、徳島県、佐賀県です。これらの県を含め、全国都道府県の乳がん診療に関するデータは下記のURLからご覧ください。
乳がん診療に関する全国調査2010(乳がん百科 powered by がんナビ)
  
http://cancernavi.nikkeibp.co.jp/breast/hospital2010/index.html



■ 拠点病院における乳がん治療の状況

 乳がんの治療を中心に、拠点病院の機能を調べてみました。
拠点病院以外にも民間の医療機関での治療がお行われていますが、なかなかデータがそろいません。
現時点でわかる状況をまとめてみました。

 山梨県のがん診療連携拠点病院にみる乳がん治療の状況
(国立がん研究センターがん対策情報センターHP)

 yamanashinyugan3sisetu.pdf へのリンク
 人口87万人以下の地方公共団体における都道府県がん診療連携拠点病院のデータ比較
(国立がん研究センターがん対策情報センターHP)

  nyugankennsu7kenn.pdf へのリンク
  山梨県の乳がん治療状況を人口87万人以下の県の状況と比較
 (国立がん研究センターがん対策情報センターHP)

 nyugan7kennhikaku.pdf へのリンク

今後もアップしていきます!












          M3ニュースからの情報です

リンパ全切除の有効性疑問 -乳がん、生存率変わりなし-

2011年2月10日   提供:共同通信社

 【ワシントン共同】早期の乳がん患者の外科手術で、転移を防ぐために脇の下のリンパ節全体を切除する「郭清」をしても、リンパ節の一部しか切除しなかった場合と生存率に変わりはないとする米国の多施設臨床試験の結果が、9日付米医学会誌に発表された。

 「郭清」はがんの再発を防ぐために広く行われているが、むくみが出るリンパ浮腫などの合併症が起きやすいとされる。研究グループは「(郭清をやめる)新手法を取り入れることによって、術後の生活を改善できる」と指摘している。

 100カ所以上の医療機関が参加。1999〜2004年に、手術前に脇の下の「センチネルリンパ節」を検査して転移が見つかった早期がんの患者を対象に、リンパ節全体の郭清をした場合と、転移が見つかった一部だけを取り除いた場合の生存率を比較した。

 転移を防ぐための抗がん剤や放射線治療なども続けた結果、5年後の生存率は全切除した445人は91・8%、一部切除の446人は92・5%と、ほぼ同じだった。

 一方、合併症は全切除では70%で起きたが、一部切除では25%で、大きな差が出た。

 乳がん細胞は早い段階で全身に広がることが分かっており、研究グループはリンパ節切除よりも、抗がん剤や放射線による全身的な治療が再発を防いでいるのではないかとみている。

◆ 今後リンパ節廓清に関する標準治療が変わるかも知れないニュースです。腋下リンパ節廓清を経験すると、リンパ浮腫への不安は一生続きます。リンパ節の温存安心してできるなら、乳がん手術後のQOLがまた一歩向上です。

記事:共同通信社
提供:共同通信社

200528日】

 海外では効果が認められながら、国内で未承認だった抗がん剤の適応拡大について、昨年1月から議論を進めてきた厚生労働省の検討会は7日、計21の治療法を「適応拡大は妥当」と判断して終了した。

 検討会の結果を受け、昨年11月には「パミドロン酸二ナトリウム」(製品名アレディア)の、乳がんの骨転移に対する効能が追加承認された。12療法も既に承認申請が行われ、残りの8療法は申請の準備中という。

抗がん剤の魔術師『平岩 正樹ドクター』によると、乳癌の骨転移によく効くだけでなく、骨に転移していない乳癌患者の骨転移の予防効果もあることがわかっているという。

―チャートでわかるがん治療マニュアル 平岩 正樹著 講談社―


朝日薬剤師教育セミナー開催

 東京九段会館で『朝日薬剤師教育セミナー』が開かれました。がん治療専門薬剤師のための教育セミナーです。

だんだん専門的になっていくがん治療を少しでも患者中心の医療体制にするために、各方面の関係者が努力しています。

今回はその一環として、薬剤師のためのセミナーが開かれました。
チーム医療を通じ、患者主体の医療現場にするための薬剤師としての第一歩です。

早くチーム医療が当たり前となり、手術は外科、抗がん剤は腫瘍内科、薬の相談は癌専門薬剤師、などのように専門性が高い医療が受けられたらいいですね。

詳しくはここからリンクしてください。 
朝日薬剤師セミナーに参加して

m3ニュースからの情報です。

早期乳がんの再発率を予測

記事:共同通信社
提供:共同通信社

【2005年1月18日】

 医療機器大手のシスメックスは17日、早期乳がん患者の再発率を予測する新技術を開発
したと発表した。

 開発したのは、がん細胞の増殖に関係したタンパク質の量と活性化の程度を、独自開発の
技術で測定し、再発率を判断する方法。
 これによって、再発率の高い患者に放射線や抗がん剤治療を的確に行い、低い患者には体の負担が少ない治療法を選択できる。

 既に200症例をこの方法で測定し、従来より精度の高い予測データが得られたという。
2007年度の商品化を目指し、技術を応用して、ほかのがんについても再発予測技術の開発に取り組む。

受診率、自治体で大差 乳がんのマンモグラフィー

記事:共同通信社
提供:共同通信社

【2005年3月1日】

 厚生労働省は28日、乳がんの早期発見に役立つ乳房エックス線撮影検査(マンモグラフィー)の2003年度の都道府県別の受診率を公表、最高は富山県で15・7%、最低は山口県の0・03%と差があり、欧米(約70%)より大幅に低いことが分かった。

 乳がんは女性のがん罹患(りかん)率の1位で、年間約3万5000人が発症、約1万人が死亡し増加傾向にある。同省老人保健課は「受診率を60-70%に上げないと死亡率の減少効果は出ないとの研究報告もあり、受診率向上が急務」としている。都道府県別の受診率を公表するのは初めて。

 市区町村が実施している住民への健康診断で、マンモグラフィーの対象となる50歳以上の女性の数と、受診した人数から受診率を算出した。

 富山に次いで高かったのは宮城(10・8%)、山形(8・3%)、岩手(7・8%)。低いのは、山口、高知(0・1%)、奈良(0・2%)、静岡、兵庫(いずれも0・4%)の順で、全国平均は2・7%だった。

 地域差について同課は「予算や体制整備、人材育成など、力の入れ方の違いが影響しているのではないか」と分析している。

 厚労省は昨年4月、受診対象を従来の50歳以上から40歳以上に拡大。05年度からは約39億円をかけ、マンモグラフィー250台の全国配備や、撮影技師と読影医師を養成する緊急整備事業を始める。

2004年3月11日
ファイザー株式会社製薬会社ファイザーからの情報です。
術後補助療法において、タモキシフェンからアロマシンに薬剤変更した乳がん患者で再発リスクが有意に低下
-従来のタモキシフェン療法との比較試験結果より-
■今回発表されたIES-031(Intergroup Exemestane Study)試験とその結果について:
今回、New England Journal of Medicineに掲載されたIES-031試験は、4,700人以上の閉経後早期乳がん患者を対象として実施された国際的な無作為化二重盲検試験です。
本試験は、現在標準的な治療薬であるタモキシフェンによる術後補助療法を2から3年間受けた閉経後乳がん患者に対して、アロマターゼ阻害剤である「アロマシン(一般名:エキセメスタン)」に変更した場合と、タモキシフェンの投与を継続した場合の比較試験です。
今回発表された結果によると、タモキシフェン投与継続群に比べて、アロマシンに変更した患者群で乳がんの再発リスクが32%低下したことが明らかになりました。

■国際医療福祉大学臨床医学研究センター 渡辺 亨 教授のコメント:
抗エストロゲン剤、タモキシフェン(TAM)は乳癌術後の再発予防薬としての有効性、安全性が確立されており、過去20年近くにわたり、標準治療と位置づけられてきた。近年、転移性乳癌治療薬として、アロマターゼ阻害剤が登場、エストロゲン濃度を1/5から1/10に抑えるという作用機序をもち、TAMを凌ぐ効果が報告され、アロマターゼ阻害薬は閉経後、ホルモン感受性を有する転移性乳癌の標準治療薬と位置づけられている。当然、次の関心事は、アロマターゼ阻害剤の乳癌術後の再発予防薬としての力量である。今回のエキセメスタンによるIES-031試験の他に、ATAC試験(アナストロゾール)、MA-17試験(レトロゾール)と、アロマターゼ阻害剤の術後療法としての可能性を検証する大規模臨床試験結果が相次いで発表されている。試験のデザインは違うが、いずれの試験結果もアロマターゼ阻害剤がTAMに比べて優れている、という成績を示したと言える。現在、市販直後調査などによりアロマターゼ阻害剤の安全性データも蓄積されつつあり、乳癌治療のホルモン剤の主役が、抗エストロゲン剤からアロマターゼ阻害剤に交代する日も近いと思う。
参考資料
ニューヨーク、2004年3月10日 ― 本日付のNew England Journal of Medicineに掲載された新しいデータによると、タモキシフェンからアロマシン(一般名:エキセメスタン)に薬剤を変更した閉経後乳がん患者は、タモキシフェン投与を継続した患者に比べて、乳がんの再発が有意に低下し、また無病生存期間が有意に延長することが明らかになりました。

今回発表された Intergroup Exemestane Study(IES-031)試験は二重盲検試験で、37ヵ国から閉経後乳がん患者4,700例以上が登録されました。患者は、術後補助療法としてタモキシフェンを2から3年間投与された後、アロマシン(25
mg/日)投与群あるいはタモキシフェン(20mg/日)投与継続群に無作為に割り付けられ、平均31ヵ月間の経過観察が行われました。現在の標準的な治療では、エストロゲン受容体陽性の閉経後乳がん患者は、手術後の再発防止としてタモキシフェンを5年間投与されます。

今回のIES-031試験の結果より、タモキシフェン投与開始後2から3年で薬剤をアロマシンに変更した患者は、タモキシフェンの投与を継続した患者よりも無再発期間が長くなる可能性があるということが明らかになりました。アロマシン投与後3年の時点で、アロマシン投与患者群は、タモキシフェン投与を継続した患者群に比べて、乳がんの再発リスクが32%低下しました。再発リスクの低下は、局所再発、遠隔転移だけでなく対側乳房における乳がんの発症に対しても認められました。

「この試験結果が重要なのは、タモキシフェンを単独で投与されている患者の多くで、その投与開始後5年以内に再発がみられるという理由からです」と、本試験の統括責任者であり英国王立医科大学(Imperial College School of Medicine in England)のHead of Department of Cancer Medicineであるチャールズ・クームズ(Charles Coombes)博士は述べています。「本試験は、原発性乳がんの手術後に内分泌療法剤を単独で5年間投与するという、現在の治療概念に挑む初めての大規模多施設共同試験であり、アロマシンに変更した患者は、統計学上有意な臨床的ベネフィットが得られており、無病生存期間も延長することが示されました。」

「今回の試験結果は、乳がんに罹患している全世界の多くの女性にとって重要な知見であり、確実に無病生存率を上げることができる新たな治療選択肢を提供するものです」とファイザー社の国際開発担当部門プレジデントであるジョセフ・フェスコ(Joseph Feczko)博士は述べています。

米国オンコロジー・リサーチ(U.S. Oncology Research) のmedical directorであるスティーブン・ジョンズ(Stephen Jones)博士は「この大規模で世界的な試験結果は、乳がんの再発リスクの低下のみならず、対側乳房における乳がんの発症リスクを低下させたという点において非常に重要です。この試験の重要性は、これまでの治療法を変えうるという点にあると思います。これまでは、標準治療としてタモキシフェンを5年間投与してきましたが、本試験において、タモキシフェンを2から3年間投与後、アロマシンに変更したほうが、患者はより良い治療結果を得られることが示唆されました」と述べています。

IES-031試験をモニターしている第三者機関は、得られた試験結果が有益であるとして、早急に発表するよう勧告しました。

IES-031試験は、ファイザー社の後援のもと、BIG(Breast International Group)の傘下であるICCG(International Collaborative Cancer Group)によって実施されました。

ファイザー社オンコロジー部門は、がんの科学的解明の推進と多くのがん患者に対する新薬の提供に貢献しています。オンコロジーは、ファイザー社の最優先研究課題であり、研究開発費の10%以上を乳がん、大腸がんおよびその他のがんに対する革新的な治療薬の発見と開発に費やしています。
以上

1cmの乳がん 朝日新聞『中村 清吾のコラムより』

最新治療情報

1cmの乳癌

聖路加国際病院
外科医長 中村清吾

今回は、マンモグラフィ検診で見つかった約1cmの乳癌を有する主婦の方のお話です。

既に、癌の可能性が高いことを告げられて、ご主人とともに来院されました。「がん」といわれると、「死」を間近に感じ、頭の中が不安や恐怖で一杯になるのは当然の心情です。

しかし、「がん」という病気は、そのレッテルが貼られた瞬間から病気になるのではなく、実は、1cmの大きさで見つかるまでには、7〜8年の長い歴史を経ています。すなわち、1個の細胞が2個に分裂するのに要する時間が、約90日と仮定し、約30回分裂を繰り返すと、1cmの大きさになるとすると、90×30=2700日(約7.4年)かかる計算となり、その時の細胞の数は、なんと、230≒10億個です。

ただし、1cmで見つかった乳癌が早期といわれる所以は、もっとも転移しやすい場所である脇の下のリンパ節にがん細胞を認めるのは10人に1人程度であり、この段階できちんと手術を行うことでの10年生存率は、95%前後であるからです。すなわち、大多数は、いぼやホクロと同様にその場に留まっているとも言えます。

したがって、癌と診断された場合に、一日でも早く手術しないと、転移が心配だと、慌てられる方がいますが、そこは落ち着いて、まず自分の病気を正しく理解し、どのような治療手段がふさわしいかをじっくり検討する余裕があると認識してください。

この方の場合、当院で行った超音波検査でも、癌の疑いが強く、注射針で一部の細胞を吸い取り、顕微鏡でがん細胞が認められるか否かを診断する穿刺吸引細胞診を行いました。画像で強く癌が疑われても、稀に良性のことがあるので、穿刺吸引細胞診、あるいは、局所麻酔を行った後に、太い針で組織を削り取ってくる針生検(コアバイオプシともいいます)は、必ず行います。

それでも診断が付かない場合は、昔であれば外来手術で、切開して組織検査を行ってきましたが、現在は、乳腺腫瘍画像ガイド下吸引術(マンモトーム生検)という方法で、超音波画像を見ながら、2,3mmの太い針を腫瘍直下に誘導し、吸引圧をかけながら、組織を短冊状に削り、吸い出して採取することが可能です。

この方法により、診断のための外来手術(切開生検)は激減しました。この方の場合は、細胞診で、悪性細胞が認められたので、それ以上の生検には至らず、具体的な治療法の説明をいたしました。


がん医療に不満80% 東大が患者、家族1000人調査 当事者不在浮き彫りに  
m3ニュースからの情報です。


記事:共同通信社
提供:共同通信社

2005530日】

 がん患者や家族、遺族ら1031人の意識調査で、がん医療の水準に「不満」「どちらかといえば不満」と答えた人が80%に上ったとする中間集計を、東京大の近藤正晃(こんどう・まさあきら)ジェームス助教授(医療政策)らが28日までにまとめた。
 患者の声が、医療政策に反映されていないと考える人は93%。日本人の死因1位のがんで、患者ら当事者不在の医療が浮き彫りになっており、厚生労働省のがん対策に課題を提示する結果となった。
各地の患者会などを通じ4-5月にアンケート。進行がんが61%、早期がんが39%。種類は乳がん、肺がん、胃がんなどさまざまだった。
医療水準について、36%が不満、44%がどちらかといえば不満で、どちらかといえば満足は19%、満足は1%しかいなかった。
医療政策に対する患者の声の反映は、全く反映されていないが29%、どちらかといえば反映されていないは64%、どちらかといえば反映が7%、よく反映はゼロだった。

 不満の内容は、欧米で承認されているが国内では未承認で保険適用されない抗がん剤など制度面で多く、総合的な相談や心のケア体制の不備、高額な医療費も目立った。

 医療の質や治療法の情報開示を求める声も強く、がんに関する統合的な情報提供機関については99%が必要だと答えた。

 治療費の総額は150万-300万円が130人と最も多く、500万円以上かかった人も84人。受診した医療機関の数は3つ以上が約30%で、10以上と答えた人もいた。必要とする情報は専門医の有無、病院や医師の治療成績、病院の設備や症例数などが多い。


サメ軟骨は進行癌の患者には効果がない可能性あり


提供:Medscape    m3ニュースからの情報です。

 

5月24日】サメ軟骨は進行癌の患者には効果がない可能性があるというランダム化試験の
結果が、『Cancer』オンライン版で発表された(2005年5月23日)。

「サメ軟骨は補完・代替医療として広く使用されてきた」と、メイヨークリニック(ミネソタ州、
ロチェスター)のCharles L. Loprinzi, MDおよびNorth Central Cancer Treatment Group
(NCCTG)の共同研究者らは述べている。「このように広く使用されている根底には、サメの
身体には軟骨成分が非常に多く含まれているため、サメはまれにしか癌にならないという主張
がある。しかし、初期に行われた研究はあいまいであった」。

この2群比較の二重盲検試験の被験者は、治癒不能の乳癌または大腸癌を有し、一般状態
および内臓機能は良好であり、化学療法が実施可能であった。同時併用化学療法を含むことが
可能であった標準治療実施中に、患者を、サメ軟骨製品またはそれと同一の外観および臭いを
有するプラセボのいずれかの1日3-4回投与に無作為に割り付けした。

83例の評価可能患者において、サメ軟骨投与患者をプラセボ投与患者と比較したとき、全生存
期間、毒性、またはQOL(生活の質)の改善に関して有意差は認められなかった。実際に、健康
関連のQOLはサメ軟骨投与患者の方が悪かったように思われた。サメ軟骨投与患者において
最も頻繁に発生したグレード3の毒性は下痢(n=2)、呼吸困難(n=3)、白血球減少症(n=2)
、好中球減少症(n=5)および骨痛(n=2)であり、それらのうちプラセボ投与患者に発現した
ものはなかった。

「この試験では、進行癌患者におけるこのサメ軟骨製品の効果を示唆する知見は実証されな
かった」と著者らは述べている。

この研究の問題点には、患者による研究プロトコル遵守が不十分であったことが含まれており、
サメ軟骨を1カ月以上服用した患者は50%にすぎなかった。この結果を受けて、独立NCCTG患者
安全性・データ監視委員会は試験の早期終結を決定した。その他の限界には、症例集積目標を
達成できなかったこと、および生存期間中央値という主要エンドポイントに関する検出力が不足し
ていたことが含まれる。

「サメの健康および軟骨の抗血管新生特性の観察が、最終的には癌治療において役割を果たす
薬剤の形につながるだろうと考えられる」と著者らは結論づけている。「しかし、うまく設計された
臨床試験が終了し、我々の患者に推奨するためのエビデンスが得られるまでは投与を控えること
が賢明である。現在のところ、サメ軟骨(商品名Benefin)は進行性の乳癌または大腸癌の患者
において全く効果を示さなかったと要約することが可能である」。

本研究は公衆衛生当局(PHS)から部分的に支援を受けた。

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