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第112回 星空にお祈り
はじめに
このサイトを立ててから、もう5回目の秋がやってきました。このコーナーも、それだけの回数になっていますが、秋になると、毎年「夜空を見上げながら…」という曲を探してるような気がします。それがうまく出てこなくって流したときもありますが、今年はふと「星空にお祈り」で書いてみようかな、という気がしました。
まぁ、そうは言っても「同じ星空を見上げて」って言うようなことについては以前(第39、40回)に書いたので、もうちょっと別のところを書いてみようとは思っていますけどね。
Midnight Call
この曲のPVはああいうものになってるんですが、この曲を思い返して一番最初に浮かぶ映像は、窓際に座って夜空を見上げながら、好きな誰かと電話で話してる、というシーンです。歌詞が内面の描写を中心にしているので、最後に実際の行動が浮かぶシーンがあると、それが全体を象徴する映像として捉えられるんでしょう。
それはともかく、「おやすみしないで話そう」って言ってるわけですが、実はその感覚があまり分からない節もあったりはします。って言うか、長電話とはあまり縁がない人間なんで、そうしたいってなる気持ちがあまり実感できてないんですね。ごくまれに、電話をしていて話が盛り上がって、気がついたら3時間ぐらいってこともなかったわけじゃないですけど、最初から長く話そうっていうのはない…ですね。まぁ、私個人としては電話より直接会って話したいっていう気持ちのほうが強いってのはありますか。
この曲の場合、「眠れない夜」に電話をしてもいいよ、そして朝まで話そうっていうわけですけど、そこにあるのは多分、大事な人の役に立ちたいってことでしょうか。眠れなくなるときは、たいてい何かを抱え込んじゃって、そのことにばっか考えがいってるときなんだろうと思いますし。だから、自分と朝まで話すことでそれが少しでも解消されれば、いつもたくさんのものをもらってる、そのお返しにもなりますから。そして、それと同時に、お互いが同じ空を見て、同じ時間を共有している、その暖かさをできるだけ長く感じていたい、という気持ちもあるんでしょうね。
別に、そういう絆は恋人同士でなくてもいいわけで、夏樹リオさんの「Telephone Call」は彼氏に振られたかケンカしたかした女友達からの電話につきあうシーンが描かれてます。そういうことができる間柄っていいな…と思う一方で、やっぱり直接のほうがいいな、という気持ちもあります。私だってどうしたって話したいことを抱えたときがないわけではないですが、そうしたときに電話をするってのは思いつかなかったんです。
時とともに
このサイトのところどころで書いていますが、この曲は作詞・作曲を担当した岡崎律子さんが99年にファンクラブ向けのプライベートCDの中でセルフカバーをしています。今はアルバム「Love & Life〜private works 1999-2001〜」に収録されているので、私みたいに当時その存在を知らなかった人でも、そちらで聞くことができるようになりました。
まーちゃんと岡崎さん、両方の「星空にお祈り」を聴いて思うのは、「やっぱりそれぞれの味があるんだな」ってことですか。ふたりとも、そのささやくような歌い方には大きな魅力があるんですが、その上で、聴こえ方がそれぞれに違うんですよね。端的に言っちゃうと、まーちゃんはとにかく素直に、言いたいことがストレートに聞こえてくるのに対して、岡崎さんは内にたくさんの秘めたものを感じさせる、そんな表現になってます。
そのどちらがいいとか、そういう話ではなく、もしかしたら生きてきた時間も、そうした違いが出てくる背景にはあるのかな、とも思うんですよね。女性の年齢を云々するのは本当は失礼なんですが、まーちゃんがこの曲を歌ったときは22歳、大学を卒業したばかりで、内に秘めるよりはまっすぐに気持ちを出すほうが似合う年だったでしょうし、音楽を作ることに関しても、思っていることをどんどん出していく時期でした。一方で、当時の岡崎さんは40歳ぐらいでしょうか、いろんなことを知って、いろんなことを感じてきて、それをどう表現するかの経験もたくさん積んだんだと思います。そうしたことが、まーちゃんのまっすぐさやひたむきさ、岡崎さんの秘めやかな強さや繊細さにつながっているんじゃないか、と思えるんですよね。
渡辺美里さんや林原めぐみさんが、それぞれのアルバムのライナーノートの中で「20代には20代の、30代には30代の…」というような話をしてますが、今後、この曲に関して興味があるのは、まーちゃんが40歳になり、当時の岡崎さんの年齢に追いついたとき、この「星空にお祈り」をどう歌うのか…20代のままのまっすぐさを表現し続けるのか、あるいはいろんなことを知ってきたその経験を歌声に秘めるのか…そういうことになってます。もちろん、答えが出るにはあと10年強かかることですが。
最後に
「星空にお祈り」について、今思ってることを書きました。曲自体の内容とはちょっと離れたような気もしますけどね。でも、本当に想ってる気持ちがある意味電話を求めるっていうところに集約されてるようにも思えるからいいですか…ね? このぐらい想える人がいるっていうのは、やっぱり素敵なことだと思います。私も…と思いたくなるぐらいに。
ちなみに、このコーナー、普段は、だいたい土曜の昼に書いているんですが、今回は夜に書いています。とはいえ、星空は見えなくて、曇っている…どころか雨が降ってる空なんですけどね。ちょっと悲しいかも(苦笑)。
次は、ちょっと思い立って、01年の冬以来4年半ぶりに「Through the Year 飯塚雅弓」を考えてみようかな、と思ってます。1月から12月まで、どんな曲をあてはめようかな…。
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