吉村 昭 
      11,02,06

   日露講和条約締結に尽力した全権大使小村寿太郎の終焉の地が葉山一色の御用邸前にある。

  すぐ近くに当時の首相桂太郎の別邸もある。我が家の近くにはやはり日露講和に尽くした金子堅
  太郎の子孫が動物病院を営んでおられる。南ヨーロッパを思わせる相模湾に面したこの風光明媚
  な地は、毎朝の私の散歩コースだが、つい最近偶然に小村、桂両巨頭の住まい跡を発見した。

   この場所に立って相模湾を眺め遠く明治の日露講和に思いを馳せると、国運を一身に背負った
  外交官の苦難の道が偲ばれる。全力を尽くして講和を結びながら祖国では国賊と罵られた小村寿
  太郎の心境は、吉村昭の小説”ポーツマスの旗”に詳しく載っている。

   現在日本の菅内閣は対ロシア、韓国、北朝鮮、米国、中国との外交交渉で1歩も2歩も後塵を拝
  している。国運を左右する外交政策を展開する重厚且つ果断、胆力と先見性のある外交官像を
  明治の大外交官に学ぶのも悪くはなかろう。その意味で吉村昭の諸作品は格好の教材と言える。

   吉村昭は私より10歳年長1927年生まれの作家だが、史実と証言の徹底した取材と調査を基
  にした事実のみを書く作家として定評がある。海を題材にした戦記文学が多いが、数年前に紹介
  した黒部ダムを描いた”高熱墜道”などの力作もある。

   今年は小村寿太郎の終焉の地を見つけた縁もあるので吉村昭、それに海といえば対極にある
  のが山、山と言えば山岳小説の多い新田次郎、この2人の小説をすべて読みきろうと思う。


  追記@・・・東日本大震災にちなみ、「三陸海岸大津波」の書評を追加。・・・11,05,29
     A・・・その後読んだ書籍を追加。・・・12,06,24 
     B・・・久しぶりに読んだ「関東大震災」を追加。 ・・18,02,02


    蔵書リスト(寂しい蔵書ですので少しずつ増やしていきます。)

その1 その2
   1、ポーツマスの旗    10、桜田門外ノ変(上)
   2、高熱墜道    11、桜田門外ノ変(下)
   3、戦艦武蔵    12、破船
   4、陸奥爆沈    13、長英逃亡(上)
   5、零式戦闘機    14、長英逃亡(下)
   6、三陸海岸大津波     15、白い航跡(上)
   7、海の史劇     (以下が追加分)     16、白い航跡(下)
   8、生麦事件(上)     17、黒船
    9、生麦事件(下)    18、関東大震災