コメ自由化への試案
食料自給率を上げる方法は?
コメ自給率は現在100%


TANAKA1942bです。「王様は裸だ!」と叫んでみたいです   アマチュアエコノミスト TANAKA1942b が経済学の神話に挑戦します        If you are not a liberal at age 20, you have no heart. If you are not a conservative at age 40, you have no brain.――Winston Churchill    30歳前に社会主義者でない者は、ハートがない。30歳過ぎても社会主義者である者は、頭がない。――ウィンストン・チャーチル       日曜画家ならぬ日曜エコノミスト TANAKA1942bが経済学の神話に挑戦します     好奇心と遊び心いっぱいのアマチュアエコノミスト TANAKA1942b が経済学の神話に挑戦します     アマチュアエコノミスト TANAKA1942b が経済学の神話に挑戦します

2008年2月25日更新   
……… は じ め に ………
♣ 日本の食料自給率が40%を割った。食料自給率が低いことは以前から話題になっていたが、有効な対策がとられないまま、40%を割ることになった。 TANAKAは食料自給率が下がっても心配することはない、との考えであるが、世間で話題になっているのでこの問題を扱ってみることにした。
 日本の農業問題、食料問題に関してはこの他に「日本の農政はどうあるべきか?」とか「農業の後継者不足にどう対処すべきか?」とか「都市と農村の所得格差をどう縮めるか?」など、多くの問題がある。 そして、これらがこんぐらかって議論されているようだ。つまり「食料自給率を上げるには?」との問いに対して「農業の活性化」を主張したり、「農業への補助金を増やすべきだ」と言った、自給率とは違ったことに答えていることが多くみられる。 そこで、ここでは「食料自給率を上げるにはどうすべきか?」に対して検討することにした。
 まず、食料自給率とはどういうことか?そして、現在の自給率はどうなっているのかをハッキリさせることにしよう。現在の食料自給率がどうなっているのかをハッキリさせることにしよう。 農水省のホームページ から引用しよう。
 食料自給率とは、私たちが食べている食料のうち、どのくらいが日本で作られているかという割合のことです。
 食料自給率には3種類の計算方法があります。
 @おもさで計算 食料自給率
 国内生産量、輸入量など、その食品の重さそのものを用いて計算した自給率の値を「重量ベース自給率」といいます。
 Aカロリーで計算 食料自給率
 食料の重さは、米、野菜、魚、、、どれをとっても重さが異なります。重さが異なる全ての食料を足し合わせ計算するために、その食料に含まれるカロリーを用いて計算した自給率の値を「カロリーベース総合食料自給率」といいます。 カロリーベース自給率の場合、牛乳、牛肉、豚肉、鶏肉、卵には、それぞれの飼料自給率がかけられて計算されます。 日本のカロリーベース総合食料自給率は最新年度(平成18年度)で39%です。
 B生産額で計算 食料自給率
 カロリーの代わりに、価格を用いて計算した自給率の値を「生産額ベース自給率」いいます。 比較的低カロリーであるものの、健康を維持、増進する上で重要な役割を果たす野菜やくだものなどの生産がより的確に反映されるという特徴があります。日本の生産額ベース総合食料自給率は最新値(平成18年度)で68%です。
 実際の数字は「自給率の推移」 から引用しよう。
食料自給率(平成18年・概算)%   米94%、(うち主食用)100% 小麦13% かんしょ92% ばれいしょ76% 大豆5% 野菜79% みかん94% りんご56% 果実全体39% 牛肉43% 豚肉52% 鶏肉69% 鶏卵95%  牛乳・乳製品66% 食用魚介類59% 海藻67% 砂糖32% 油脂類13% きのこ類81%
 飼料用を含む穀物全体の自給率27% 主食用穀物自給率60% 供給熱量ベース総合食料自給率39% 生産額ベース総合食料自給率68% 飼料自給率25%
 こうした数字を踏まえた上で、食料自給率の向上について考えてみることにしよう。
食料自給率を上げる方法は?  コメ自給率は現在100%
 (1) コムギの自給率を上げる方法は? 安い輸入品との価格調整で13%を保っている ( 2007年12月24日 )
 (2) ダイズの自給率を上げる方法は? 品種改良や遺伝子組み換えへの挑戦をするか ( 2007年12月31日 )
 (3) 豚肉・牛肉の自給率を上げる方法は? 飼料の自給率が低い。まず、この向上から ( 2008年1月7日 )
 (4) 鶏肉・鶏卵の自給率を上げる方法は? 種鶏を輸入しているこの現実を直視しよう ( 2008年1月14日 )
 (5) 家畜用飼料の自給率を上げる方法は? エタノール用でトウモロコシの価格高騰 ( 2008年1月21日 )
 (6) トマトの自給率を上げる方法は? アメリカ並の品種改良と機械による収穫は ( 2008年1月28日 )
 (7) ブロッコリーの自給率はどうか? 種子は日本の種子会社が作り栽培は米国農家 ( 2008年2月4日 )
 (8) 外国の事情に左右されないで安定供給できる確率 自給率を高めることの意味は ( 2008年2月11日 )
 (9) 農水省は何故ムリな目標を立てるのか? もう尊農攘夷論はヤメにしましょうよ ( 2008年2月18日 )
 (10)種子会社は「F1コシヒカリ」を育成せよ 「農業先進国型産業論」を再び主張する ( 2008年2月25日 )

趣味の経済学 アマチュアエコノミストのすすめ Index
2%インフレ目標政策失敗への途 量的緩和政策はひびの入った骨董品
(2013年5月8日)
FX、お客が損すりゃ業者は儲かる 仕組みの解明と適切な後始末を (2011年11月1日)
コメ自由化への試案 Index

(1)コムギの自給率を上げる方法は?
安い輸入品との価格調整で13%を保っている
<自給率を上げるの品目は、小麦?大豆?豚肉?>   食料自給率向上を論じるとき、「どの品目の自給率を上げるのか?」と「その自給率を上げるために何をするか?」を論じなければならない。 そこでまず「どの品目の自給率を上げるべきか?」を考えてみよう。
 どの品目を重点的に、自給率向上を目指すべきか?となると、主要な食材を上げるべきか?自給率の低い品目を上げるべきか?あるいは上げやすい品目を目標にすべきか?
 取り敢えず、「小麦の自給率を上げるにはどうしたらよいのか?」これを考えてみよう。まずは現状がどうなっているのか?その辺りから話を始めよう。
小麦の自給などうなっているのか?   農水省の「食料自給率の推移」 http://www.kanbou.maff.go.jp/www/fbs/dat-fy18/sankou2.pdf によると、
小麦の自給率は13%。「平成18年度食料需給表」 http://www.kanbou.maff.go.jp/www/fbs/dat-fy18/fbs-fy18p.pdf によると、
国内生産量は837,000t、輸入量は 5,464,000t、国内消費仕向量 6,228,000t。
自給率の計算式 小麦の自給率=小麦の国内生産量[837,000t]÷小麦の国内消費仕向量[5,464,000t]×100=13%
国内生産価格は国際価格の約4倍  なぜ自給率が低いか?と言えば、生産者価格が高いから。日本の主要輸入国である、アメリカ、カナダ、オーストラリアでの小麦(外麦)価格、いわゆる国際価格は、 1トン当たり、3万円台であるのに対し、国内生産(内麦)価格は15万円台。国際価格の4倍の価格なので、一般消費者・加工業者は輸入小麦を買うことになる。
農水省による価格調整  これだけ価格差がありながら、それでも内麦が売れている。何故だろう?それは農水省が価格調整しているからだ。 どのような価格調整か、と言うと、農水省は3万円/トンで外国から外麦を買い、これを5万円/トンで製粉会社に売る。 そして、内麦は15万円/トンで国内生産者から買い、これを製粉会社に4万円/トン程度で売る。こうして国内生産者を保護していることになる。
 農水省は外麦で利益を出し、その利益で内麦生産者への保護金を手当していることになる。この場合、外麦と内麦で相殺するので税金は使わない。 税金は使わずに、小麦の問題は小麦関係で処理しよう、という方式で、これを「小麦の問題は、小麦の世界の中で解決しましょう」という考えで、これを「コスト・プール方式」と言う。 しかし、最近は穀物価格の上昇や内麦の生産量の増大などでこの方式の運営は難しくなっている、と言われる。国内生産者にしてみれば、本来は価格競争に勝てないものが、農水省の調整によって利益が出せるようになっているので、生産量を増大させようとするのは当然のことだろう。
 農水省のコムギ価格調整でどのような数字になるのか計算してみよう。平成18年度食料需給表(概算値)を基に計算してみる。
 コムギの国内生産量は837(1,000t)、輸入量は5,464(1,000t)。外麦を1トン3万円で買って、これを製粉会社(パン、うどんの原料として)に5万円で売る。差益は2万円。 2万円X5,464(1,000t)=10,928,000円。(これが調整利益)
 内麦生産量は837(1,000t)。これを1トン15万円で買って、4万円で売る。差額は11万円。11万円X837(1,000t)=9,207,000円。(これが農家への補助金となる)
 この計算では10,928,000円の利益を出し、9,207,000円を使うことになる。差額は1,721,000円。これは調整に拘わる諸費用ということなのだろう。
 この調整金は税金を使うわけではないので、表面に出にくい。いわば「消費税」のような、消費者が負担することになる。
価格調整による自給率向上で良いのか?  このように見てくると、小麦の自給率向上は、農水省の価格調整をうまくやれば向上することになる。 「小麦の自給率向上は農水省の価格調整をうまくやれば良い」と言うことになる。それで良いのだろうか?コメの自給率が高いのは、高い関税をかけているから。これと基本的に同じ政策になる。 どちらも市場のメカニズムは無視されている。
健全な自給率向上は生産性向上による価格競争に立ち向かうこと
 資本主義社会にあって、食料自給率を向上させるには、国際価格競争に勝てるようにすることだと思う。 それが健全な自給率向上政策だと思う。だとすれば、生産性を向上させるにはどうしたら良いのか?が議論されなければならない。 生産性を向上させるのは、もちろん栽培方式とか、大規模農地などの他に、品種改良も検討されなければならない。
内麦は良質なのか?  これほど生産コストの高い内麦、品質はどうかというと、次のような指摘がネットにあった。
 まず内麦は外麦に比べ、粒が小さいので、製粉歩留りが良くない、つまり同じ量の小麦からとれる小麦粉の量が少ない。 また、色がくすんでいるので、うどんにしたときに色が冴えない。そして、低たんぱく傾向にあるので、製麺適性が少し劣るといった点が、内麦が低く評価される理由です。
結局コムギの自給率向上政策は何もされていない コムギの自給率向上に対して、農家はコスト削減や生産方式改善をしているわけではない。 政府も、外麦の対抗できる品種の改良をやっているわけではない。パン業界、うどん業界が内麦を積極的に使おうとしているわけでもない。 勿論消費者が国産品愛用運動をすることもできない。結局「コムギの自給率向上に関しては、誰も努力をしていない」ということになる。
消費者はコムギに関して「地産地消」はできない 「食料自給率向上」と言うと、「地産地消」を推進すべきだ、との主張が出てくる。 しかし、コムギに関して、消費者が国産コムギを選ぶことはできない。国産コムギだけを使ったパンやうどんなど購入することはできない。 それに、内麦は品質が劣るようだ。コムギの自給率向上は、農水省の価格調整に税金を投入して内麦を高く買うことしか手段はないようだ。
農水省、10月から輸入小麦の価格を10%値上げ  農林水産省は8月24日、輸入小麦の売渡価格を10月から10%値上げすると発表した。小麦の国際相場の高騰に対応し、パンや中華めん、日本めん、菓子用の各銘柄で一律引き上げる。
 小麦の自給率は13%でほとんどを輸入に頼っており、主に政府が商社から買い上げ、価格を決めて製粉企業などに売り渡している。政府は4月から年間固定価格を廃止して相場連動制に移行しており、今回の値上げはこれに沿った措置となる。
*                      *                      *
<「平成19年度からの輸入麦の売渡制度」について>   このようなタイトルのサイトがあった。 これによると、19年4月(4〜9月期)の政府売渡価格は、全銘柄の加重平均価格で1.3%の引上げとなる。
(単位:円/トン(税込み)、%)
  現行の標準売渡価格  [1] 19年4月(4〜9月期)の価格  [2] 対比  ([2]-[1])/[1]
全銘柄加重平均 47,820 48,430 1.3
注:上記の数値は、SBS方式に移行する銘柄以外の、5銘柄(WW、ASW、HRW、 1CW、DNS)の平均値である。
<2006年の輸入実績>   コムギの2006年輸入実績は次の通り。 輸入量=5,337千トン。金額=148,919,000円。
輸入単価=27,900円/トン。
 内訳 アメリカ=3,002千トン、53.8%。カナダ=1,193千トン、24.2%。オーストラリア=1,134千トン、21.9%。 つまり、1トン当たり27,900円で輸入したコムギを、政府は48,430円で売り渡している。その差益を利用して国内の農家から高く買い入れている、ということだ。
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<主な参考文献・引用文献>
( 2007年12月24日 TANAKA1942b )
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(2)ダイズの自給率を上げる方法は? 
品種改良や遺伝子組み換えへの挑戦をするか 

 ダイズの自給率は昭和50年から、3,4,5%台で移行している。当然ダイズも補助金でこの自給率を保っていると考えられる。 実体はどうなのか?
<ダイズの自給率> 
自給率\年 1965年 1975年 1985年 1995年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年
ダイズ自給率 11% 4% 5% 2% 5% 4% 3% 5% 5%

 ダイズの自給率が低いのは、国産ダイズと外国のダイズの価格差が大きいからだ、とはすぐに気付くのだが、どの程度の差があるのかは、ネットで調べても良く分からない。 2006年のダイズ輸入量は4,042千トン。内訳は、アメリカ=3,225千トン、ブラジル=278千トン、カナダ=282千トン、中国=156千トン。輸入価格=36,900円/トン。

 大豆の輸入関税はゼロで、国産大豆は、アメリカ、カナダ、ブラジルなどの輸入大豆と、素手で競争しなければならないのである。 それでは、とても生産コストが10倍もかかるわが国の大豆生産は成り立たないと、早い時期からその生産条件格差を緩和させるための直接支払が大豆ではとられてきた。大豆交付金制度がそれである。大豆生産者に、たとえば平成14年産大豆では、60キロ当たりの販売価格4815円に対して8280円の交付金が、国庫、すなわち税金から支払われているのである。その上、水田転作で大豆生産を行なう場合、転作奨励金が上乗せされる。 そのような、保護政策のうえで、わが国大豆生産は成り立っている。「食用大豆の自給率向上の課題」▲

 その第一のカベは輸入ダイズとの価格差。少なくとも2〜3倍はあるコスト差を豆腐製造メーカーなどはまず敬遠する。いままで1丁100円の豆腐が国産大豆を使えば最低180〜200円にはなる。消費者が要求するので作ってみたが、思ったほどには売れない。口では安全と言いながら、いざ買う段になると安い方を選ぶ。いったい消費者を信用していいのかわからないと悩む。 「ダイズ生産と食卓をダイレクトにつなごう」▲

 ダイズは各種補助金が交付される。それについては「大豆の需給・価格の動向等」▲に詳しい。 ここではそこから一部を引用しよう。
1 7年産大豆の交付金単価等について 04/10/29
1 7年産大豆の交付金単価等が1 0月1日に以下のとおり決定された。 なお、農業経営基盤強化特別対策については、16年産大豆をもって終了することになった。
( 1 ) 交付金単価8 , 0 2 0 円/ 6 0s ( 8 , 1 2 0 円/ 60s )
( 2 ) 担い手支援・良質大豆生産誘導対策3 0 0 円/ 6 0s ( 2 0 0 円/ 60s )
○ 担い手が生産する大豆又は1 等・2 等の大豆に対して交付
( 3 ) 標準的な生産費として定める金額1 3 , 6 0 6 円/ 6 0s ( 1 3 , 7 3 0 円/ 60s )
( 4 ) 高品質畑作大豆の推進1 , 0 0 0 円/ 6 0s ( 1 , 0 0 0 円/ 60s )
○ 実需者と結びついた契約栽培による生産を推進
( 5 ) その他
○ 大豆作経営安定対策について、価格変動の影響を緩和する観点から補てん基準価格算定
方法を見直すとともに( 5年中庸3年)、拠出率を引き上げ( 国: 9→ 1 2% 、生産者: 3→ 4%)、 資金の強化を図る。
○ 実需者ニーズに応じた大豆供給を図るため、高品質大豆への誘導に資するよう交付金制 度等の運用のあり方について今後検討する。

 国産ダイズと海外のダイズ価格との「内外価格差」については、次のような説明があった。「大豆まめ知識」▲
 問屋の購入額の内外価格差は、
  平成9年産の輸入大豆と国産大豆の販売価格を比較すると国産大豆 は輸入大豆の約3倍です。
  農家手取り額の内外価格差は、
  平成8年産の米国と日本の農家手取り価格を比較すると日本は米国 の8.6倍となっています。
解説 輸入価格はCIF価格+輸入諸掛 (2,709円/60kg)、ただしこの価格は油脂用大豆(比較的安価)と食品用大豆の価格を加重平均したものです。
9年産の国産大豆は交付金大豆の販売価格 (8,403円/60kg)

 食料安保の観点からダイズの自給率を上げるべきだ、との主張があったので、ここに引用することにした。「編集室」▲
 世界最大の農産物純輸入国・日本は、大豆の自給率がわずか4%(食用16%)でしかなく、輸入先を米伯等4カ国に依存する脆弱な輸入・供給構造にあり、いつ起こるかもしれない需給・価格、安全性リスク(遺伝子組み替え大豆の輸入等)に晒され、食料安全保障が脅かされております。ところが、新たな食料・農業・農村基本計画では、大豆の自給率目標は6%、食用は24%、03年より2ポイント引き上げようというものです。政府の食料安全保障認識とはこの程度のものかと疑いたくなる、生産拡大意欲を萎えさせるような目標です。米麦と違い、幸いなことに豆乳ブーム等に支えられて国産大豆に対する需要は強く、品質・コスト・安定供給などニーズに即応できれば、食用大豆は趨勢的には18万トン、5割増の40万トン程度生産可能で、昭和30年に50万トン超の実績もあり、自給率を45%程度まで引き上げることは可能と考えられます。したがって戦略目標として15年の食用大豆自給率目標は、新基本計画よりもう一段高い45〜50%を目標とすべきです。この戦略目標を達成するためには、国内食用大豆市場で品質・価格両面で競争力を強化し輸入品から市場を奪回する戦略を構築する必要があります。それには用途別に消費者・実需者ニーズに即応した安全で高品質、高単収・低コスト、気象変動に対応し安定供給できる生産・流通・市場・販売体制、供給構造を構築しなければなりません。このために必要な生産・担い手・経営・農地・価格・所得・流通・市場・販売に係る政策・制度改革、消費者・実需者ニーズ・市場動向に即応できる経営革新、技術革新などイノベーション、国民の健康増進に寄与する大豆の栄養・機能性成分の解明と、その食生活改善への普及・利用、製品開発など消費拡大戦略を 構築し、展開する必要があります。こうした戦略的観点から、既存の政策・制度的枠組みにとらわれない自由な発想、戦略的思考、広い視野、多様な視点からご提案を頂きました。刺激的な諸論考が大豆の自給率向 上論議を改めて巻き起こし、大豆産業の構造改革論議を深化させ、大豆自給戦略が構築、強力に展開され、強い農業再生の契機となることを期待するものであります。   週刊農林編集部
輸入価格と交付金   2006年のダイズ輸入価格は36,900円/トン。そして交付金は上に引用した通り。 これらの数字をどのように評価したら良いのか?それは、これを読む方々の判断に委ねることにしよう。 1トンは60kgの16.666倍。60kgは1トンの0.06倍。これをもとに計算してください。
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<遺伝子組み換えダイズはどうだ>   ダイズを話題にするとなれば、遺伝子組み換えダイズを無視するわけにはいかない。 日本では生産されていないようだが、販売許可は出ている。それについて「日本の遺伝子組み換え食品 」▲からの表を引用しよう。
日本の遺伝子組み換え食品
・日本に初めて「GM作物」が輸入され、その加工食品である「GM食品」が店頭に並んだのは、1996年暮れと推測されます。
その経過は、まず、1996年8月に農水省が遺伝子組み換えの4作物7品目の「栽培」の安全確認をし、同年の秋に厚生省が「食品」としての安全性確認をしました。それによって、輸入も販売も可能となり、1999年11月現在では、6作物22品目の栽培上の安全性と食品としての安全性が確認され、そのGM食品が市場に出まわっているのです。
・下表に現時点(平成11年12月現在)で、日本での商品化が可能な遺伝子組み換え食品について示します。
GM作物
(6種)
組み換え目的
品目数
(22)
食品としての
安全性確認年
GM食品例
ダイズ 除草剤の影響を受けない 1996年 大豆油(マーガリン、マヨネーズ、菓子、パンにも利用)、
しょうゆ、みそ、豆腐、豆腐加工品、凍り豆腐、おから、
湯葉、調理用大豆、枝豆、大豆もやし、納豆、豆乳、煮豆、
大豆缶詰、きな粉、いり豆、大豆粉を主原材料とする食品、
植物たんぱくを主原材料とする食品等
トウモロコシ 害虫に強い 1996年 コーン油(利用法は大豆油と同じ)、コーンフレーク、水飴、
異性化液糖、コーンスナック菓子、コーンスターチ、
とうもろこし、冷凍とうもろこし、缶詰とうもろこし、
コーンフラワー・コーングリッツ(各とうもろこし粉の一種)を
主原材料とする食品等
1997年
除草剤の影響を受けない 1997年
ナタネ 除草剤の影響を受けない 1996年 なたね油(利用法は大豆油と同じ)
1997年
1998年
ワタ 害虫に強い 1997年 綿実油(利用法は大豆油と同じ)
除草剤の影響を受けない 1997年
トマト 日持ちがよい 1997年 *商品化は見合わせ中
ジャガイモ 害虫に強い 1996年 じゃがいも、マッシュポテト、ポテトチップ、ポテトフレーク、
冷凍・缶詰・レトルトのじゃがいも製品、じゃがいもでんぷん
1997年

 米国農務省農薬統計部の2006年農作物作付調査によると、アメリカでは除草剤耐性をもつなどの組み換えダイズの作付けはダイズ全体の89%、組み換えトウモロコシは61%、組み換えワタは83%です。  「遺伝子組み換え作物の栽培面積 2004年」▲
*                      *                      *
<内外の価格はまったく別物>   上記説明を見て思うのは「内外の価格はまったく別物。比較にならない」ということ。まるで勝負にならない、と初めから諦めるほどの価格差がある、ということだ。 ダイズに関しても、生産性を向上させて価格競争をしよう、とか、経費節減して外国産に負けない低価格ダイズを生産しよう、などという具体策や改革意欲は全く感じられない。 自給率を上げるということは、補助金を増やす、ということに尽きる。
 アメリカではバイオエタノールの原料としてトウモロコシの価格が上昇している。これにともなって、ダイズの作付けからトウモロコシに変更する農家が増えている。 「バイオエタノールの普及が日本の農業を変える」▲  普通に考えるとこのことによってダイズ価格が上がるのだから、国産ダイズにも大きな影響がありそうなのだが、アメリカのダイズ価格と日本のダイズ価格は全く別のジャンルで関係がないようだ。
<バイオエタノール関係でトウモロコシ価格が高騰>   2007年11月19日、NHKスペシャル「ファンドマネーが食を操る」で、アメリカのトウモロコシ価格形成にファンドマネーが参入し、価格が高騰している、との報道があった。 この番組からの話題を紹介しよう。
 アメリカ中西部で日本向けの大豆を作ってきたジョンソンさんの話。
 ジョンソンさんは長年作り続けてきた作付を変えた。大豆畑を減らして、価格の上がったトウモロコシに切り換えたのだった。 トウモロコシは同じ畑で作り続けると病気や虫の被害を受けやすい。それを防ぐには年ごとに大豆と向後に植え換えなければならない、とされている。 しかし、今年は価格の上がったトウモロコシの植え付けを増やし、大豆畑の3分の1をトウモロコシに切り換えた。
 大豆畑でジョンソンさんは長年日本向けの豆腐の大豆を作ってきた。味や風味はよいが栽培に手間がかかる遺伝子組み換えしていない大豆だった。
 「私は遺伝子組み換えしていない豆腐用の大豆、日本人に食べてもらう大豆を作るのが好きでした。 でも私はビジネスを第1に考えているのです。だからどれだけ収益を上げられるかが最も大切なのです」
<ダイズの海外との価格競争力強化努力は何もなされていない>   コムギと同じように、ダイズの自給率が低いのは、生産者価格が外国に比べとてつもなく高いからだ。 自給率向上をスローガンにしながらも、コムギもダイズも価格競争力強化の努力はされていない。品種改良、生産システムの改良、消費者への国産品のアピール。 こうした努力がみられない。自給率低下は補助金に頼っていた生産者の責任であって、消費者に責任はない。「地産地消」とのスローガンで、食料自給率低下が消費者の責任であるかのように言うのは間違っている。
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<主な参考文献・引用文献>
( 2007年12月31日 TANAKA1942b )
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(3)牛肉・豚肉の自給率を上げる方法は? 
飼料の自給率が低い。まず、この向上から 
<カロリーベースの食料自給率の意味は?>  ここでは豚肉の自給率向上を扱うのだが、初めに「カロリーベースの食料自給率の意味」をシッカリ理解しておこう。 ……… は じ め に ………で書いたように豚肉の自給率は、平成18年度概算で豚肉52%。ただしこれは「重量ベース自給率」で計算した数字。 「食料自給率39%とは、「カロリーベース総合食料自給率」で計算したもの。その違いは……… は じ め に ………で書いた。そこで、豚肉の自給率を「重量ベース自給率」ではなくて、 一般に使われている「カロリーベース総合食料自給率」で計算するとどうなるかと言うと、答えはたったの5%となる。理由は、「カロリーベース自給率の場合、牛乳、牛肉、豚肉、鶏肉、卵には、それぞれの飼料自給率がかけられて計算されます」ということ。
 「カロリーベース総合食料自給率」の計算について説明しよう。ここでは、農水省のホームページ  と、 「財団法人 食生活情報サービスセンター」の「食料自給率とは何ですか」 から引用してみた。
 カロリーベースの食料自給率の計算上、輸入飼料によって生産された畜産物は、国産であっても国産熱量には算入しない
 カロリーベースの食料自給率を見る上で注意を要するのが畜産物の取扱いです。我が国において、畜産物は農業総産出額の28%(平成14年度現在)を占める重要な農業生産 分野ですが、とうもろこし等の飼料穀物の大部分は輸入に依存しており、それら輸入飼料により国内で育成された分については厳密には自給とは言えません。
 したがって、畜産物については、国産であっても飼料を自給している部分しかカロリーベースの自給率には算入しないこととしています。
 例えば、豚肉自体の品目別自給率は53%ですが、このうち自給飼料によって生産された豚肉の国産熱量は、豚の飼料自給率9.7%を乗じて算出されるため、結果的にカロリ ーベースの食料自給率の計算上用いる豚肉のカロリーベースの自給率は5%となります。
 豚肉の品目別自給率× 豚の飼料自給率= 豚肉のカロリーベースの自給率〔53%〕〔9.7%〕〔5%〕
 豚肉の品目別自給率〔53%〕× 豚の飼料自給率〔9.7%〕= 豚肉のカロリーベースの自給率〔5%〕
 この計算方法により、畜産物のカロリーベースの自給率は次のようになります。
畜産物のカロリーベース自給率(平成15年度)
単位:%
  品目別自給率× 飼料自給率= カロリー自給率
牛 肉 39 26.2 10
豚 肉 53 9.7 5
鶏 肉 67 9.7 7
鶏 卵 96 9.7 9
牛乳・乳製品 69 42.3 29
 

*                      *                      *
<牛肉の価格安定制度>   輸入牛肉の「価格安定制度」に守られて、日本の畜産業は保護されている。その制度を 「熊本県畜産協会のHP」http://kumamoto.lin.go.jp/shokuniku/kisochisiki/ryutu/kakakuantei1.html から一部引用しよう。
●輸入自由化後の価格安定制度

 平成3年4月1日の牛肉の輸入自由化以降、牛肉の価格安定制度は大きく変化しました。すなわち、事業団による一元的な輸入が廃しされ、定められた関税を払えば誰でも自由に牛肉を輸入できるようになりました。
 このため、それ以前のように輸入牛肉の流通量をコントロールすることによって価格の安定を図ることが困難となったのです。
 そこで、輸入自由化以降は、次の3つのポイントを中心に価格の安定を図っていくこととなりました。
生産の安定
 牛肉価格の安定を図るには、国産牛肉の資源である肉用子牛の生産を確保して国内生産を安定化させることが重要となります。
 しかしながら、輸入自由化に伴い牛肉の供給過剰が生じやすくなり、肉用子牛の価格及び生産に悪影響が生じることが懸念されました。
 このため、輸入自由化後におけるわが国の肉用子牛生産の価格などに及ぼす影響に対処し、肉用子牛生産の安定そのほか食肉にかかる畜産の健全な発達を図ることを目的として、昭和63年に肉用子牛生産安定等特別措置法が制定されました。 平成2年度から、従来から実施していた肉用子牛価格安定事業を拡充強化した肉用子牛生産者補給金制度が設けられました。
 この制度の仕組みは、あらかじめ、都道府県ごとに設けられた肉用子牛価格安定基金協会と補給金交付契約を結んでいる生産者に対し、肉用子牛の平均販売価格(四半期毎に全国ベースで算定する)が保証基準価格(農林水産大臣が毎年度定める)を超えて低落した場合に、その程度に応じて補給金を交付する制度です。
 なお、保証基準価格についても、指定食肉の安定上位価格などと同じく畜産振興審議会の意見を聴いたうえで定めることとなっています。
適正な輸入
 肉用子牛の生産が安定しても、需要に見合った輸入が実施されなければ、需給と供給のバランスが崩れて、牛肉の価格が暴落したり逆に暴騰する可能性があります。そのような事態を回避するためには、国内外の生産及び消費の動向を把握して、需要に見合った秩序ある輸入が行われるようにすることが大切です。
 牛肉の輸入自由化が決定した昭和63年に「畜安法」を改正して事業団の業務に畜産物に関する情報の収集提供が追加されました。この改正に基づいて、事業団は牛肉に関する国内及び国外情報を収集分析し、定期刊行物などを通じて情報をフィードバックしています。
調整保管
 これまで述べてきた方法により需要と供給のバランスをとり、価格の安定を図るように努力していても、為替相場の急激な変化など、予期せぬ変動により牛肉の価格が下落することが考えられます。
 このため卸売価格が安定基準価格を超えて暴落するかその恐れがある場合には、国内の卸売価格の安定を図るため事業団が一定の牛肉を市場から買い入れて隔離し保管する調整保管を行うことが可能となっています。
 なお、買い入れた牛肉は市況が回復したり、価格が安定上位価格を超えて高騰した時に放出し、価格を下げる仕組みとなっています。
<牛肉の輸入量ー2006年>  「農林水産物輸出入概況」平成19年5月23日 (30P) によると、牛肉の輸入量は462千トン、2,263億円、単価=490.3千円/トン(490.3円/キログラム)(49円/100グラム)。 牛肉の輸入単価は100グラム49円。これが小売の段階で???円になる。
*                      *                      *
<豚肉の差額関税制度>  豚肉に関しては「差額関税制度」という制度がある。これを「岐阜県西濃農林事務所」のHP http://www.pref.gifu.lg.jp/pref/s24802/tikusan/buta/kanzei-seido/sagaku-kanzei-seido.htm から一部引用しよう。
 輸入豚肉の価格が低いときには、基準輸入価格に満たない部分を関税で徴収し、国内養豚農家を保護する。 輸入豚肉の価格が高いときには、低率な従価税を適用することにより、関税負担を軽滅し、消費者の利益を図る。
 この制度によって、国内生産者のみならず、消費者に対しても、新鮮で安心な国産豚肉の安定供給の確保が図られています
 昭和40年代前半に国内外から豚肉の輸入由由化を求める声が高まり、その対応を求められた際には、(1)で述べた豚肉の特性から、輸入数量制限が撤廃されると、安価な豚肉が大量輸入され、国内生産に悪影響を及ぽし、ひいては、海内の生産基盤が縮小し、消費者への安定供給に支障を来たすことが懸念されていました。
 昭和46年10月には、それまで完全自由化されていた輸入牛肉が政府一元化輸入となり、それに変わって外貨割り当てであった輸入豚肉が自由化されました(畜安法の改正)。
 輸入豚肉は、差額関税制度の適用を受けることとなり、畜安法に基づく上位価格と下位価格の中間を基準輸入価格とし、この基準輸入価格を上回る輸入価格(CIF)の場合定率関税、下回る場合、基準輸入価格と輸入価格の差を関税とすることになりました。
 これにより、基本的には基準輸入価格を下回る価格では輸入出来ない制度となりました。輸入契約量を一単位として、そこに混載される各部位は自由な組み合わせ(Combination)を黙認し、一契約一単価が慣例となり今日に及んでいます。
<飼料の自給率を上げる努力はされていない>   牛肉、豚肉の自給率を上げるには、@価格安定制度や差額関税制度を十分活用して、輸入肉に不利な状況をつくる。 A生産の合理化により輸入肉より安くして国産肉の消費量を多くする。B飼料の自給率を上げる。
 @はこれ以上は貿易自由化の趣旨から言って難しいだろう。ウルグアイラウンドの趣旨に反するので、現状維持が精いっぱい、というところか。 Aができれば1番良い。品種改良や経営の合理化などでコストダウンできれば1番良いが、その努力はされていない。Bは、エタノール関連でアメリカのトウモロコシ価格が上がっているのに、何も対策が取られていない。
<豚肉の輸入量ー2006年>  「農林水産物輸出入概況」平成19年5月23日 (28P) によると、豚肉の輸入量は725千トン、3,836億円、単価=529.1千円/トン(529円/キログラム)(52.9円/100グラム)。 豚肉の輸入単価は100グラム53円。これが小売の段階で???円になる。
<バイオエタノール関係でトウモロコシ価格が高騰、日本の商社はどう対処するのか?>   2007年11月19日、NHKスペシャル「ファンドマネーが食を操る」で、アメリカのトウモロコシ価格形成にファンドマネーが参入し、価格が高騰している、との報道があった。 この番組からの話題を紹介しよう。
 ◎ 豊田通商は日本向けトウモロコシの1割、200万トンを輸入してきた。アメリカのトウモロコシ農家はエタノール用に高く売れるので、そちらに売り先を変えている。 今年はトウモロコシは豊作が予想された。当然価格が下がると思ったが、ファンドマネーが参入し、思惑とは違って高くなった。 農家はエタノール用に売り先を変え始めた。
 豊田通商の古米さんは直接農家を訪ねて契約栽培を続けてくれるよう頼んだ。この農家は豊田通商が特別に持ち込んだ品種を2年前から作ってきた。
 「エタノール工場が周りにできてきているなかで最近の状況はどうですか」
 「エタノール産業がどんどん大きくなっていってトウモロコシの価格が上がって嬉しいよ」
 「来年も又同じようにトウモロコシを植え続けてくれますか」
 「それは状況次第だね。俺は利益を出すためにやっているんだ。どっちが得か計算してみないと分からない。好き嫌いじゃないんだ。状況に応じて1番利益が出るものを選ぶだけなんだ」
 契約を続けて貰うためには特別に料金を支払わなければならない。
 「経済原理で決めるという事情も分かりますが、私たちの国では価格の高騰で苦しんでいるのですから」
 こんな会話が放送された。
 アメリカでは農業は産業であり、利益追求が目的となる。この当たり前のことが分からない日本人が多い。 「トウモロコシの価格が2倍になったの。このチャンスを逃すわけにはいかないわ」 これがアメリカの農業だ。
 ◎ EUの考えは違う。ここで欧州委員会農業総局前副局長=ディビット・ロバーツ氏のコメントを紹介しよう。
 農業は地域の活性化を維持する役割を果たしています。私たちは地域政策の中で農業を効率化しすぎないように、細心の注意を払わなければなりません。 農業の効率化によって、地方に住む人が減ってしまうことになってしまえば、基本的な地方行政を維持していくうえでの人口が保てなくなるために、その地方は衰退していかざるを得ないからです。
 我々は地域に雇用機会を様々なかたちで保証し、農村を活性化しようとしているのです。
 「乏しきを憂えず、等しからざるを嘆き悲しむ」そうした社会。「先に豊かになれる者から豊かになり、他の人は少し遅れて豊かになる」社会とは違う。 EUでは農業でもワークシェアリングを始めた。人々が等しく貧しくなる社会主義社会を目指している。
<世界の動きを理解していない>  日本の商社マンがアメリカの農業経営者に 「経済原理で決めるという事情も分かりますが、私たちの国では価格の高騰で苦しんでいるのですから」 と訴えて交渉しようとする。アメリカの農家は、「農業は産業である」との当たり前の論理で話をする。その違いを日本の商社マンが理解できないでいるようだ。
 商社マンがこの程度なら日本の農業経営者、農協関係者、その他農業関係者もその程度なのだろう。アメリカの農作物市場のファンドマネーが参入する。その意味は何か? 分からないのだろう。ヨーロッパの農業政策担当者と同じように、「農業で儲けてはいけない。農業は産業ではなく、公共事業なのだから。農業関係者の間で所得格差が生じてはいけない。そのために、農業が儲かってはいけない」 と考えているのだろう。
<結局、牛肉・豚肉の自給率は価格安定制度や差額関税制度に頼る他はなさそうだ>   牛肉39%、豚肉53%という自給率の高さ(平成15年の数字、平成18年は牛肉43%、豚肉52%)に安心して外国産に対抗するようなコストダウンなどは行われていない。 カロリーベース総合食料自給率で牛肉10%、豚肉5%という数字を問題にすれば「何とかしなくては」となるのであろうか?それとも、 カロリーベース総合食料自給率を話題にすると対策を講じていないことがバレるので、「カロリーベース総合食料自給率」という言葉は使わないようにしているのであろうか? 結局、牛肉、豚肉の自給率向上は価格安定制度や差額関税制度に頼る他はなさそうだ。
(^o^)                  (^o^)                  (^o^)
<主な参考文献・引用文献>
( 2008年1月7日 TANAKA1942b )
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(4)鶏肉・鶏卵の自給率を上げる方法は? 
種鶏を輸入しているこの現実を直視しよう
<鶏肉の自給>  鶏肉の自給率は品目別自給率で67%(18年概算では69%)、これに飼料自給率9.7%を掛けてカロリー自給率7%となっている。 ところでこの品目別自給率で67%をそのまま日本での飼育自給率と考えると間違えのようだ。食用となる鶏はずうっと日本で飼育されたのではない。 「フランスハバード社」と題されたサイトに次のような文章があった。http://www.yamamoto-corp.jp/flow#a3 
 美食の国で有名なフランス。この世界でも有数の食・素材にうるさい国で大事に育てられた特殊鶏の原種鶏(スーパーに並ぶ肉鶏の祖父母にあたる鶏)を親に持つ雛(種鶏)を飛行機にのせて輸入しています。
 15年以上にわたり日本の特殊鶏種鶏輸入の約80%を当社が輸入・販売を行っております。
 また弊社は様々な鶏種を保有しており、その組み合わせでお客様のニーズに合わせた鶏種を創り出すことが可能です。
 これと似たようなサイトがあったのでここに引用しよう。http://www.tohkaishimpo.com/scripts/index_main.cgi?mode=kiji_zoom&cd=nws2784 
 年間約一千万羽を商品化している南部どりは、フランスから輸入された赤鶏が親鶏である「種鶏」となっている。農場内での交雑によって生まれた南部どりで赤鶏独特の旨みが引き出され、全国に商品展開をしている。
 これまでは種鶏をフランスから二カ月に一回程度輸入していた。アマタケグループでは今回新たに種鶏の親鶏である「原種鶏」をフランスから直接輸入し、ABCファームが新しく設けた鶏舎で育てて種鶏を生ませ、さらにその種鶏によって南部どりを育てる取り組みを進めている。
 アマタケ(株)は今年四月にフランスの育種会社・ハバード社と契約し、厳しい格付け基準をクリアし、一羽ごとに情報データが管理されている原種鶏「赤ラベル」を定期輸入することになった。七月に初めてヒナの状態で七百五十羽を輸入し、検疫を経て、現在養鶏が始まっている。
 原種鶏から種鶏、南部どりが生まれて商品として流通するのは来年秋以降となる見通し。今後は年二回のペースで原種鶏の輸入が行われる。
 これから分かることは、鶏肉の自給率は品目別自給率で67%(18概算では69%)と言っても、親の親を輸入しているのだから、その輸入が止まったら鶏肉の国内飼育が止まることになる。 カロリー自給率の考えを拡大すれば、鶏肉の自給率は更に低くなる。
<鶏卵の自給>  鶏卵の自給率は品目別自給率で96%(18概算では95%)、これに飼料自給率9.7%を掛けてカロリー自給率9%となっている。 鶏肉と同じように、鶏卵も輸入に頼っている。「和田鶏卵」http://www.wada-egg.co.jp/index.html から引用しよう。
 日本の食糧自給率は40%といわれています。卵の国内自給率は96%ですが、卵の生産する鶏の94%が海外から輸入された外国鶏種です。 当社の「卵丸」は、日本の食料自給率を高めるために日本国内で育種改良された純国産鶏「もみじ」を採用しています。
 <あいくるしい「鶏卵生活」>http://aiki117.at.webry.info/200610/article_11.html  に次のような文があったので引用しよう。
 白玉卵はほとんどレグホン鶏種であり、赤玉はブラウン鶏種ですので、ヒナ親は海外鶏ということになります。
 海外鶏が海外原料飼料を食べて、国内で飼育管理されて、国内で産卵させ、国産として販売している。鶏卵自給率は95%だがそれを支えているのは海外依存度95%である。したがって90数%の国内の鶏卵=「輸入と同等」となる。
 ブロイラーと同じように鶏卵も種鶏は輸入されている。どちらも親鶏の自給率まで勘定に入れれば一体自給率は何%になるのだろうか?
<鳥インフルエンザが日本で流行らなくても、日本の養鶏に壊滅的打撃>  このような見出しの文章がネットにあったので引用しよう。
 鳥インフルエンザ、日本の報道は小さくなっていますが、ヨーロッパでは各国で広がっており、米国など北米も時間の問題。人間での感染も増えています。
 この鳥インフルエンザの蔓延で、日本の養鶏、ブロイラーや鶏卵生産の弱点が浮き彫りになってきています。最悪の場合、2〜3年後のは鶏肉や鶏卵が日本で生産できなくなるかもしれないのです。卵を採る卵用鶏(レイヤー)と鶏肉として利用する肉用鶏(ブロイラー)のヒナが、ほとんど日本から姿を消す可能性があるのです。
純日本生まれ、日本育ちはごく僅かワケ 
 市販の鶏卵を孵しても、親と同じ品種の鶏は生まれません。仮にブロイラーも卵を産ませて、その卵を孵しても同じ品種ではありません。飼育される実用鶏・コマーシャル(CM)鶏は交雑種だからです。ヘテローシス (雑種強勢)を利用して、少ない飼料で、短期間に、多くの卵・鶏肉を得られるよう、鶏を長い年月をかけて何世代も交配させて品種改良を積み重ねて作られた雑種だからです。
 飼育される実用鶏の親鳥にあたる種鳥(しゅけい)の雄メスも交雑種、祖父母に当たる原種鶏(げんしゅけい)も雄雌とも交雑種、祖々父母の原原種鶏(げんげんしゅけい)から曾孫にまで行き着いた時、初めて最適の食肉・採卵用に育つよう“設計”されています。
 原種鶏から種鳥が供給され、種鳥から実用鶏のヒヨコが供給されます。裏返せば、原種鶏抜き、原原種鶏抜きではブロイラーや鶏卵生産はあり得ません。原原種鶏、原種鶏まで国産というと採卵鶏で7%、ブロイラー、食肉では1%。これ以外は何らかの形で海外からの輸入に頼っています。種鶏が最も多いのです。原種鶏は、現在1〜2か国のみから輸入し、国内のごく限られた原種鶏農場(肉用鶏2社4農場、卵用鶏1社1農場)で種鳥が生産されています。
種鳥の2年輸入停止で鶏が姿を消す 
 半世紀ほど前、世界には50社以上の鶏の育種、原種鶏生産する会社がありました。だが「大規模な会社ほど多くの鶏の中から優秀な鶏を選抜でき、改良成績もいい。代を重ねるごとに差は開き、売れない鶏を作る会社は淘汰(とうた)された」結果、現在では世界的な規模の育種会社は肉用鶏(ブロイラー)で3社、卵用鶏で3社程度しかありません。どのように組み合わせたらどのような交雑が生産できるかは、長年の経験や積み重ねたノウハウから導かれ、原原種鶏やその親のエリートストック(ES)は門外不出。米国や欧州に本社を置くこれらが、アメリカ・イギルス・ブラジル・南アフリカ・カナダ・ドイツ・デンマークなど世界各地で原種鶏、種鶏を飼育し、世界に供給しています。
 日本は昨年2005年は種鶏・原種鶏を約100万羽を輸入し、(1)英国(37.4%)(2)フランス(20.5%)(3)米国(16.2%)(4)ドイツ(13.6%)(5)オランダ(8.8%)でした。鳥インフルエンザはヨーロッパの種鶏生産国に拡がったため、イギリス、フランスとドイツ、そして予防ワクチンを使い始めたオランダからこの輸入を停止しています。これは、80%約80万羽の原種鶏、種鶏にあたります。輸入先を米国などに振り替える措置を取っていますが、残されたアメリカ、カナダなども鳥インフルエンザ発生は時間の問題と現地はとらえています。これまでに輸入された原種鶏、種鶏のストック、種鶏からの実用鶏の供給期間などから種鶏の輸入・供給数の減少は約半年後に実用鶏の減少になって顕れ、約2年間、原種鶏、種鶏雛の輸入が停止すると、採卵鶏で93%、ブロイラー、食肉では99%分の鶏がいなくなります。
人間の新型インフルエンザ対策にも影響 
 対策の一つは原原種鶏、原種鶏まで国産の鶏を増やすことですが、原原種鶏から実用鶏まで約三年かかりますから、最悪の事態(2年以上長期の輸入停止)を考えると今から大増産する必要があります。しかし農水省は手を打っていません。もう一つは、オランダなど予防ワクチン使用国からの雛の輸入を認めることです。ワクチンをつかうと鳥インフルエンザにかかっていても、判別が難しいので禁止しています。この措置を解除するのです。そうすると罹患鶏、鳥インフルエンザのウイルスの輸入を完全には防げませんから、国内対策の見直しが必要となります。鳥インフルエンザに罹患した鶏は全部殺す「殺処分」からワクチン接種への移行です。また鶏卵や鶏肉も、ウイルスの移入、それによる国内での鳥インフルエンザ発生を理由に禁止していますから、これも同時に解禁になります。鶏卵や鶏肉は価格の点から否応無しに輸入品に大半が取って代わられることになる可能性が高い。
 影響は、新型インフルエンザ対策にも及びます。ワクチンを接種すれば、鶏は死ななくなります。昨年の茨城で鶏を殺さない弱毒性の鳥インフルエンザが流行しましたが、鶏との接触機会が多い養鶏業者、従業員で広く弱毒性の鳥インフルエンザ罹患が認められました。これと同じ事が起きます。つまり、人間の感染は避けられない。日本国内での人の感染発生を想定しての対策、つまり人間での鳥インフルエンザ感染者、新型インフルエンザの感染者の早期検出システムの整備や緊急患者ですぐに一杯になってしまうと見込まれる地方の病院の整備などです。タミフルなど幾ら備蓄しても、投与する医者、医療機関の準備がどれほど出来ているでしょうか?
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<関係者は鶏肉・鶏卵の自給率をどのように診ているのか>   鶏肉・鶏卵の自給率を向上させるためにはどうするか?それを考えるとき、関係者がどのように診ているかが問題になる。 そこで、まず「鶏鳴新聞」 から引用してみよう。
 鶏卵自給率は3年連続96%、鶏肉は2ポイント増の67% 2004.08.25発行
  農林水産省が8月6日に公表した平成15年度(2003年度)食料需給表によると、わが国の総合食料自給率(カロリーベース)は40%で、6年連続の横ばいであった。品目別のうち、鶏卵の自給率は前年度と同じ96%、鶏肉は2ポイント上昇し67%になった。 国民1人・1年当たり供給純食料は、鶏卵は前年度比0.6%減の16.7kg、鶏肉は同2.9%減の10.1kgであった。
 生産者団体は、安定的な卵価を維持するための基金を設け、補てん基準価格を下回った場合に補てん金が支払われる体制を整えている(鶏卵価格安定対策事業)。各年度の卸売価格と鶏卵価格安定対策事業による補てんは以下のとおり。
 14年度は、14年12月までは前年を上回って推移したものの、15年1月は冬場の需要期にもかかわらず141円と低迷した。鶏卵価格安定対策事業による補てんは、14年4〜8月、15年1、3月の7回行われた。
 15年度は、卸売価格が大幅に下落した影響で、すべての月において補てん基準価格を下回り、鶏卵価格安定対策事業による補てんが10回行われた。そのため、年度後半には交付金の財源が枯かつする事態にまで陥った。
 16年度は、鳥インフルエンザの発生や夏の猛暑などによる鶏卵生産量の減少が影響して、冬場の需要などを満たしきれなかったことから、卵価は年度後半にかけて高騰した。そのため、鶏卵価格安定対策事業による補てんは、年度途中に補てん基準価格の引き上げ(142円から159円へ改定)があったにもかかわらず、16年7月の1回のみにとどまった。
 17年度は、17年7月以降卵価が前年同月を下回って推移し、7、8、1月の卸売価格は17年度の補てん基準価格である163円を下回った。そのため、鶏卵価格安定対策事業による補てんの実績は、17年7月に2回、8月に5回、18年の1月に18回となった。
 18年度は補てん基準価格が162円に設定され、6、7月と19年の1月の計3回行われた。平成18年度は、平成19年1月および2月に高病原性鳥インフルエンザが発生したにもかかわらず、過去5年間の平均をやや上回る水準で推移しているところである。
 エース交易株式会社のホームページには次のように書かれている。
 鶏肉・鶏卵の自給率は高い
 日本は農水産物や鉱工業の原材料など輸入に依存しているものが多い中、鶏卵や鶏肉の生産においては世界の上位に位置づけられています。また、日本での鶏卵の自給率も高く、貿易量が他の物資に比べて比較的少ないことにも関係しています。 供給 近年の鶏卵の生産量は生産量、出荷量ともにほぼ横ばいです。鶏卵相場の影響を受けにくく固定価格により取引されている特殊卵(ブランド卵)の生産量が増加傾向にあります。生産地域は鹿児島、茨城、千葉と公害を避け、労合力確保のために地方に展開しています。
 日本鶏卵生産者協会のホームページには次のように書かれている。
 わが国の養鶏産業が高い自給率を示し、農業の中で誇るべき地位を占めている
 日本鶏卵生産者協会は2004年1月21日、全国の鶏卵生産者(採卵鶏の雛生産者を含む)の直接加入で組織した生産者団体です。わが国の養鶏産業が高い自給率を示し、農業の中で誇るべき地位を占めていますが、国際化の進展の潮流の中で、海外からの加工卵の輸入拡大や海外悪性伝染病の侵入機会の増大などの当面する重要課題に、生産者自らが力を結集して適切に対処するため設立されました。  生産者の意見を迅速に日本養鶏協会に反映させるとともに、日本養鶏協会と協力・協同して鶏卵産業および養鶏経営の安定に取り組むことを主な目的としており、鶏卵消費の維持拡大および需給の安定、鶏卵の国際競争力の強化、鳥インフルエンザなどの鶏病体策などの事業を実施するなど、国際化時代の諸課題に機動的に取り組んでいます。  現在、会員数は560人、加入羽数は1億800万羽です。活動はすべて会員からの会費(年間飼料購入量がベース)で賄われています。
<鶏肉の輸入量ー2006年>  「品目別輸出入実績」 によると、鶏肉の輸入量は371千トン、784億円、単価=211.3千円/トン(211円/キログラム)(21.1円/100グラム)。 鶏肉の輸入単価は100グラム21円。これが小売の段階で???円になる。
<鶏肉調整品の輸入量ー2006年>  「農林水産物輸出入概況」平成19年5月23日 (32P) によると、鶏肉調整品の輸入量は345.3千トン、3,125億円、単価=383.8千円/トン。(383.3円/キログラム)(38.3円/100グラム)
 鶏肉調整品とは焼き鳥、チキンナゲットなど鶏肉加工品で、タイ、中国からの輸入が主なもの。
<鶏卵・卵黄・液卵の輸入量ー2006年>  「農林水産物輸出入概」平成19年5月23日(46P) によると、鶏卵・卵黄・液卵の輸入量は4,3千トン、59.2億円。13.8億円/千トン。(13万円/トン)(13円/キログラム)。
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<鶏卵価格安定対策事業>  鶏卵の価格が低下した場合、価格差補てんが行われる。農水省の説明を一部引用してみよう。
 【鶏卵価格安定対策事業12億円】  事業のポイント=鶏卵価格の大幅な低落があった場合に価格差補てんを行うことにより、鶏卵生産及び鶏卵価格の安定を図ります。
(鶏卵生産の現状) 鶏卵の需要は比較的安定しているため、生産の変動が大幅な価格の変動につながりやすく、 また、生産構造上も供給過剰を起こし易い状況にあることから、需要に見合った生産を推進し、価格の安定を図る必要があります。
政策目標 食料・農業・農村基本計画における生産数量目標の達成 253万t(15年度) → 243万t(27年度)
<内容>鶏卵の標準取引価格が補てん基準価格を下回った場合に、差額の9割を補てんする 鶏卵価格差補てん事業を卵価安定基金が実施するための基金造成に対して一部助成します。
<政府の、価格変動リスクに対するセーフティー・ネットに安住している>   牛肉、豚肉だけでなく、鶏肉、鶏卵も政府の鶏肉価格安定制度に頼ることにより、生産者がリスクを負わないようになっている。 これは、生産者が安心して生産に専念できる、という半面、安心して、更に生産性向上を目指すとか、生産合理化の努力が忘れられてしまう。 こうしたことの積み重ねにより、外国との価格競争に負けてしまう。自給率向上(生産性向上)と農家が安心して生産に励むことができる環境、とは必ずしも同じではない。 今までは、「自給率向上」は単なるスローガンで、実際の農業政策は「農家保護」であった。
<「食料安保」の観点から、種鳥の育種を進めるべきだ>   先週引用した「畜産物のカロリーベース自給率(平成15年度)」をもう一度引用しよう。 この表の「品目別自給率」を引き合いに出して、関係者は「鶏肉・鶏卵の自給率は高い」と自給率の高さを誇っている。 しかし、「飼料自給率」を考慮した「カロリー自給率」は極めて低い。さらに「種鳥」を輸入していることをも考慮すれば、「日本が、外国の事情に左右されずに鶏肉・鶏卵を安定供給する」 ことに関しては、実に外国の影響を大きく受けることに気付くはずだ。
 では、外国の事情に左右されずに鶏肉・鶏卵を安定供給するにはどうしたら良いのか?それは、種鳥の育種を進めることだ。 「農業は先進国型産業である」との考えにたてば、日本の取るべき政策はハッキリしてくる。そして、育種に関しては「民主導」で行うこと。 官はそれを補助する立場に立つこと。あるいは、民間では研究しにくい分野を受け持つことだ。研究成果が会社の利益に結びにくい分野もあるだろうし、特に基礎研究分野では国の研究機関にも期待することになるだろう。
畜産物のカロリーベース自給率(平成15年度)
単位:%
  品目別自給率× 飼料自給率= カロリー自給率
牛 肉 39 26.2 10
豚 肉 53 9.7 5
鶏 肉 67 9.7 7
鶏 卵 96 9.7 9
牛乳・乳製品 69 42.3 29
 

農水省のホームページ  と、 「財団法人 食生活情報サービスセンター」の「食料自給率とは何ですか」 から引用。
 上記表を見て分かるように、鶏肉・鶏卵の自給率はとても低い。「だからどうだ?」 に対する答えは色々あるにしても、事実を正しく理解することは大切だ。「鶏肉・鶏卵に自給率は高い」との関係者の言い方は訂正しなければならない。
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<他国の事情に左右されずに、食料を安定供給するために>   「食料自給率を高めるべきだ」との主張は「他国の事情に左右されずに、食料を安定供給するために必要だから」ということになるだろう。 安定供給のためには、もう1つ、供給地(供給国)を多くすることだ。リスクを分散させるという意味では、100%日本国内からの供給に頼っていると安定供給が保てない場合もある。 1993年、日本の米は不作で、94年にはタイから米を輸入することになった。日本の天候は米作りには不向きであったが、タイ、アメリカ、中国、オーストラリアは天候不順ではなかった。 「農作物の出来不出来は天候に左右されやすい」これは正しい。けれども「だから自給率を高めよ」は正しくはない。 供給地が日本だけであれば1993年の米不作のような事態が起こりうる。
 「自給率が高ければ、他国の影響を受けにくい」は正しい。けれども農水省が採用している数字だけでは資料として不足だ。 鶏肉・鶏卵に関しては種鶏の輸入のことも考慮しなければならない。
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<主な参考文献・引用文献>
( 2008年1月14日 TANAKA1942b )
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(5)家畜用飼料の自給率を上げる方法は?
エタノール用でトウモロコシの価格高騰
<家畜用飼料の原料とは?>   家畜用飼料の原料にはどのようなものがあるのだろうか?(協)日本飼料工業会のHP から原料となる主な品目を抜き出してみよう。
 トウモロコシ、コウリャン、大豆油かす、菜種油かす、大裸麦、コメ、ふすま、魚かす・魚粉などがある。日本飼料工業会で扱っている品目の中では、 トウモロコシが抜群に多く、コウリャン、大豆油かすが続く。農水省の統計では、飼料自給率25%となっている。牛、豚、鶏などの飼料は全体の飼料自給率とは違って低い数字になっている。
<飼料の自給率ー2006年>  「食料自給率の推移」 http://www.kanbou.maff.go.jp/www/fbs/dat-fy18/sankou2.pdf によると2006年の飼料自給率は25%。
<飼料の輸入量ー2006年>  「農林水産物輸出入概況」平成19年5月23日 http://www.maff.go.jp/toukei/sokuhou/data/yusyutugai2006/yusyutugai2006.pd  (32,52,56P) から飼料となる、飼料用トウモロコシ・グレインソルガム(コウリャン)・大豆油粕・魚粉を集計してみた。
 飼料用トウモロコシ     =12,396,728トン  216,111,912千円
 グレインソルガム(コウリャン)= 1,354,424トン   24,219,937千円
 大豆油粕          = 1,647,492トン   51,573,736千円
 魚粉            =   408,189トン    46,300,426千円
 上記計           =15,806,833トン  338,206,001千円
 上記品目で計算すると2006年の飼料輸入量は1,581万トン、3,382億円。単価は2,139.1円/トン(2.1円/キログラム)となる。
<品目別の自給率向上努力はみられない>   このような家畜用飼料の原料であるトウモロコシを始めとする各品目について、自給率向上の努力はみられない。 わずかに価格安定に対して基金が設けられている程度だ。それは次の通り。
家畜用飼料の価格安定基金   共同組合 日本飼料工業会という組織があって、別に社団法人 全日本配合飼料価格・畜産安定基金をつくり、 ここで家畜用飼料の価格安定基金を運営している。その趣旨は次の通り。
 原料価格に起因する配合飼料価格の変動によって生ずる畜産経営者の損失を補てんすること、及び畜産経営安定長期平均払事業の円滑な実施を図ることにより、 畜産経営の安定を図り、もって畜産の健全な発展に資することを目的とする団体です。
<エタノール用でトウモロコシの価格高騰にどう対処するのか?>   TANAKAが「バイオエタノールの普及が日本の農業を変える」と題して書いたのが今年(2007)5月のこと。 アメリカのトウモロコシ価格が高騰し、この影響でダイズ価格が高騰し、これに目をつけたファンドマネーが参入し、トウモロコシ価格が投機の対象になった。 日本の農業はこの影響を大きく受ける。マスコミで大きく取り上げられ初めているが、農業界での影響は、一部の食料の価格値上げ、という程度でしかない。 まだ、関係者は事態を深刻に受けとめてはいない。
 アメリカのエタノール用トウモロコシの価格高騰に伴って、大豆生産が減少し価格が高騰し、それによって多くの食料品の価格が影響を受ける。 大豆の価格が上昇し、大豆を原料とする植物油の価格が上昇し、それによってマヨネーズの価格が上昇した。
<飼料輸入の実情>   飼料の輸入がどうなっているのか、品目別の表があったので引用することにした。 http://www.town.yuza.yamagata.jp/Files/1/3616/html/fodder_self.html 
我が国の飼料穀物の品目別・国別輸入量の推移(出典:農林水産省HPより)  単位千トン (%)
品名 国名 平成14年 平成15年 平成16年 対前年比
とうもろこし 総輸入量 12,321 12,566 12,035 95.8%
米国 11,840(96) 11,659(93) 11,587(96) 99.4%
アルゼンチン 138(1) 292(2)
中国 164(1) 605(5) 445(4) 73.4%
こうりゃん 総輸入量 1,562 1,285 1,256 97.8%
米国 1,087(70) 942(73) 696(55) 73.9%
アルゼンチン 175(11) 270(21) 0.0%
オーストラリア 300(19) 16(1) 418(33) 2554.3%
中国 56(4) 118(9) 210.7%
大麦 総輸入量 1,127 1,201 1,132 94.3%
米国 307(27) 406(34) 161(14) 39.7%
カナダ 14(1) 83(7) 211(19) 253.6%
オーストラリア 775(69) 487(41) 761(67) 156.0%
小麦 総輸入量 278 52 93 179.5%
米国 95(34) 20(38) 1(1) 5.9%
オーストラリア 166(60) 6(12) 42(46) 707.1%
カナダ 9(3) 3(5) 10(10) 352.7%
らい麦 総輸入量 335 366 258 70.6%
えん麦 総輸入量 79 69 64 92.3%
合計 総輸入量 15,701 15,538 14,838 95.5%
米国 13,329(85) 13,027(84) 12,445(82) 95.5%
アルゼンチン 314(2) 562(4) 0.0%
中国 165(1) 684(4) 602(4) 88.0%
カナダ 47(0) 111(1) 337(3) 303.6%
オーストラリア 1,296(8) 557(4) 1,257(9%) 225.8%
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<アメリカのトウモロコシや大豆の品種改良の成果>   家畜用飼料の原料をみると、日本で栽培されていない物が多い。多くはアメリカからの輸入に頼っている。 そのアメリカの農業と言えば、大規模農業が頭に浮かぶ。アメリカの農作物のコストが低いのは、大規模農業だからであって、日本でも大規模農業にすべきだ、というのが日本の農業政策の基本になっている。 けれどもアメリカの場合忘れてならないのは、品種改良。「品種改良にみる農業先進国型産業論」で書いたように、農業は先進国型産業で、特に「品種改良」という面から見れば、日本に適した産業だ、と書いた。 この点、アメリカも品種改良で成果を上げている。叶芳和著『先進国農業事情』から引用しよう。
研究開発と高生産生  研究開発投資の成果は農業分野でも大きい。農業は研究開発集約型の産業であり、またその発達は人的資本の蓄積を前提条件とする産業である。 そして、競争秩序の如何が農業の研究開発のあり方に影響している。また、競争原理が機能している経済ほど、研究開発の成果がスムーズに農家に伝播されていくように思われる。
競争原理と高収量品種の育種  トウモロコシや大豆の品種改良の成果はすばらしいものがある。トウモロコシの場合、アイオワ州の平均的農家のエーカー当たり収量は1926年の30〜35ブッシェルから、79年には126ブッシェルに向上した。 50年間で約4倍という驚異的な向上である。大豆は全米平均で25年の12ブッシェルから79年の32ブッシェルに向上した。
 トウモロコシの収量向上はハイブリッド革命(一代雑種の育種)の成果だ。ハイブリッド・コーンが商業的に普及し始めたのは1926年であるが、それ以来の育種面での研究開発努力と、農民の栽培技術向上の成果である。 ハイブリッド・コーンを商業的に手がけたパイオニア社の説明によると、収量向上の貢献度は純粋に遺伝的改良の成果が年率1ブッシェルという(1930年代、40年代、50年代、60年代の最高の種子を栽培技術で収量検査した結果)。 50年間で50ブッシェルの貢献である。収量は50年間で約90ブッシェル向上しているから(26年の35ブッシェルから79年の126ブッシェルへ)、貢献度は遺伝的要因50ブッシェル、栽培技術要因40ブッシェルということになる。
 もちろん、育種の目標は増収だけではない。病虫害への抵抗を増したり、味をよくすることも目標である。しかし、主要な換金作物の研究目標は優先順位を増収においているように思われる。 収量向上は生産性向上、コスト低下につながるからである。日本と大きく異なる点である。政府の価格介入のもと減反政策をとっている日本では、国のレベルでは米の増収技術の研究は長年ストップしている。 一方、競争原理のもとコスト引き下げを目指すアメリカでは、民間部門を含めてあくことなく増収のための研究開発がつづいている。(ミネソタ大学のルタン教授によると、アメリカにおける農業の研究開発投資額は国・州で10億ドル、民間で20億ドルである)。
 育種の研究開発についてはすでに別の機械に何回もふれた。より詳しくは拙著『日本よ農業国家たれ』第1章および『農業・先進国型産業論』第1章参照。 (『先進国農業事情』から)
<農民が研究資金を拠出>   アメリカでは、ランド・グランド・カレッジと呼ばれる農学校から発展した州立大学農学部が、農事改良普及事業の中心になっている。 この普及事業が活性化していることが新技術の伝播を速め、技術革新に大いに寄与している。この点については『農業・先進国型産業論』(34P)で述べた。
 ところで、能力の高い農民は改良普及事業のシステムを利用する以外に、自分の出身大学の研究所に出入りして直接教えを乞うことも多い。 その場合、一般に公表される前の、質・量ともに豊富な情報を入手できることになる。また、アメリカでは民間企業が農業の研究開発に貢献をしているが、 農民は民間企業の研究室が出す技術情報にも目をくばり、あるいは民間コンサルタントから情報を買ったりもする。ある農民は「新しい技術に対しては目も耳もフル・オープン」と語った。
 注目したいのは、大学の研究者に農民組織が研究資金を提供している点である。農民自身が資金を拠出し、農民自身が研究テーマを設定し、農民自身が研究者を選定するシステムが、各作目の農民組織ごとに一般化している。 これはある意味で大変なことである。農民に役立たない研究者は研究費の調達さえうまくいかない(給料は政府からもらう)。 農家の経営コンサルタントができないようでは、農業経済学者は飯がくえないことを意味する。これも大学の研究活動が農業の現場から遊離できないことを物語るものである。 それと同時に、農民自身がいかに研究開発に熱心であるかを物語っている。
 アメリカの農家経営では、情報の活用がきわめて重要になっている。どの州でも、競争裏で農家戸数はドンドン減っている。 勝ち残るためには技術、市場についての最新の情報を入手しなければならない。 (『先進国農業事情』から)
<日本の農業経営者と産学協同は可能か?>   アメリカの農業経営者は「農業を産業」としてとらえている。ヨーロッパのように「儲けっていけない公共事業」ではない。 そこで産学共同が積極的に行われる。では日本ではどうであろうか?「土の臭いがしない」とか「鍬を持つ汗の匂いがしない」と言って部外者の」意見を無視する。 あるいは「学者の教条的おしゃべりには付き合えません」などとも言う。
 農業は先進国型産業である、とか知識集約型産業である、と考える人と、労働力集約型産業であり、儲からないので国の保護が必要だ、と考える人がいる。 儲からないから国の保護が必要だと主張し、競争原理を省き、そのために合理化が進まなかった。けれどのそのことによって農村部では大きな改革もなく、変化もなく、 「先に豊になる者から豊になる社会」ではなかったので、あまり格差は広がらなかった。そしてそれは日本の農業者が望んだ社会でもあった。食料自給率の低下とはそうした結果生まれたものだった。 つまり、農業者の望む農業政策を推し進めた結果が、日本の食料自給率低下であったと言える。
 そうして叶芳和氏が主張する「農業は先進国型産業である」という考えは無視され、葬り去られることになる。
*                      *                      *
<飼料自給率向上計画に期待はできるか?>   農水省は「飼料自給率向上特別プロジェクトについて」http://www.maff.go.jp/lin/kaigi/h190215/ref_data01.pdf  や 「畜産関連事業における飼料自給率向上計画の策定について」 http://www.maff.go.jp/soshiki/nousan/seisantaisaku/sonota_16.pdf  という文書を公開している。これを読んでも、食料自給率が向上するだろうとの期待は涌かない。
<飼料自給率向上は関税政策で> 「食料自給率、飼料自給率向上は、コストダウンを行い外国との価格競争に負けないようにすべきだ」というのがTANAKAの考えだが、実際は政府の補助金や高関税など政府の政策によって現在の自給率を保っているのが現実だ。 そして、業界関係者はそれに頼って生産性向上とか、品種改良に対する熱意は感じられない。 行政の保護を求める主張があったのでここに引用することにした。
「飼料自給戦略への提言」酪農学園大学経済学科教授 荒木和秋
 日本農業において、今や畜産は最大の産出額を誇る部門である。畜産の成長を支えてきたのはアメリカからの輸入穀物であった。 畜産物は高い関税に守られる一方、輸入穀物は無税同然であったことから、日本畜産は国内産飼料への依存度を低め、海外からの輸入穀物に圧倒的に依存する飼料構造が形成されてきた 広大な草地基盤に恵まれた北海道酪農でさえも輸入穀物に依存する高泌乳牛酪農を展開してきた。こうした先進国のなかで類をみない特殊な飼料構造を抱える日本畜産は黒船の到来とも言うべき二つの大問題に直面している。 一つはオーストラリアとのFTA交渉の開始決定であり、他は世界の穀物需要の逼迫である。穀物需要の逼迫はアメリカにおけるバイオエタノールの増産と中国における畜産物消費の激増によるもので、これまでの気象変動による年次的な逼迫要因と性質を異にする長期固定的な構造的要因である。 両者の展開如何によっては日本の畜産を崩壊させかねない。・・・ 「週刊農林」http://nourin.vis.ne.jp/2007/190105.htm から
「再生産を確保できる所得・経営安定対策を」農業・農協問題研究所 常任理事 岡本末三  自給率をアップし、農業経営を安定させるには、 すべての農産物に生産費を償う価格を保障し、生産意欲を向上させることである。そして輸入の自由化に歯止めをかけ、農林予算の大半を占める公共事業を価格保障に充当すれば、価格の安定、再生産の確保は実施できる。 「農業共同組合新聞」 http://www.jacom.or.jp/ronsetsu/jiron/jiron00/00062001.html から
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<自由貿易を基本とした自給率向上政策を>   コムギ、ダイズ、牛肉、豚肉、鶏肉、鶏卵と自給率向上について見てきた。どの品目も、自給率向上は関税政策、補助金政策などで、 生産者のコストダウンには期待できない状況であることがわかった。そして、「地産地消」という国産品愛用運動を含んだ「自給率向上運動」が自由貿易を阻害する「保護貿易政策」へと進んで行く恐れがある。 日本だけでなく各国が「地産地消」を進めたら、戦前の保護貿易主義が台頭し、経済ブロック主義が復活してしまう。 マーガレット・サッチャーが「偏狭な国際主義」と指摘しているように、それはジョージ・オーウェルの『1984年』の悪夢が実現することになる。
 生産方式の改善、品種改良などにより生産コストの低減により外国との価格競争に参加すること。それと、供給地、供給国を多くしリスクを分散させること。自由貿易を更に進めながらこうした政策を採るべきだと思う。
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<主な参考文献・引用文献>
『先進国農業事情』     叶芳和 日本経済新聞社   1985.2.25
( 2008年1月21日 TANAKA1942b )
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(6)トマトの自給率を上げる方法は? 
アメリカ並の品種改良と機械による収穫は
<生食用トマトと加工原料用トマト>  トマトの自給率を問題にする場合、生食用トマトと加工原料用トマトとを分けて考えなければならない。 これに関して分かりやすい説明があったのでここに引用しよう。トマトの自給率を問題にする場合、生食用トマトと加工原料用トマトとを分けて考えなければならない。 「ナガノトマト」http://www.naganotomato.jp/tomato/kinds.html から。
 トマトはトマトジュースやピューレーなどに加工する「加工用トマト」とサラダなど生で食べる「生食用トマト」があります。
◇加工用トマト 加工用トマトは「赤系トマト」と言い、真っ赤な色をしており、畑で完熟するのを待って収穫されます。そして、加工用トマトはその日のうちに工場に運ばれトマトジュースなどに加工されます。
◇生食用トマト 生食用トマトは「ピンク系トマト」と呼ばれ、店頭に並んだ時に赤くなるように、まだ熟さないうちに収穫し出荷されます。1984年に品種改良からつくられた“桃太郎”がその代表格です。
「加工用トマト」と「生食用トマト」は栽培方法がまったく違います。
◇加工用トマト 露地栽培で夏の太陽をいっぱいに浴びられるように地面に這うように栽培されます。そして、夏の最盛期である8〜9月のみに収穫されます。加工するのに「へた」は邪魔物なため、収穫する時にへたが取れるような品種です。
◇生食用トマト 支柱を立てて茎を上に伸ばすようににして栽培されます。ビニールハウスででも栽培できるので1年中収穫できます。
<加工原料用トマト>  加工用トマトについて「国産加工原料用トマトの生産の動向と課題」と題された詳しい説明があったのでここに引用しよう。 http://www.nochuri.co.jp/report/pdf/n0208re3.pdfから。
 現在,わが国ではトマトは大きく生食用と加工用の2つに分けられ,加工原料用トマトは,生食用トマトとは品種や栽培方法が大きく異なる。 加工原料用トマトは,契約栽培により安定した収入が得られることから,契約安定作物として,また稲作の生産調整における転作作物として栽培され生産が拡大した。 わが国では主にトマトジュース用原料として,長野県,福島県,茨城県等の少数地域に集中して生産されている。
 今後,国産の加工原料用トマトを安定的に確保していくためには,国内産地が直面している, @生産者の高齢化や後継者不足への対応,A機械化の推進と規模拡大,といった課題について具体的な取組みを行うことが必要であろう。
 加工原料用トマトについては,夏場の収穫作業が生産者の負荷となっており,収穫時の労働力確保が栽培規模を左右することになる。 しかし,1戸当たりの作付面積は平均20 未満と小規模であり,大きな動きはみられない(第10図)。 生産者の高齢化,後継者不足の問題に直面している主産地でも20 未満の栽培農家戸数が全体の7割弱を占めている(第11図)ように規模の拡大が進んでおらず, 機械化を推進するまでには至っていない。
 89年にはトマトジュース,トマトケチャップの輸入自由化が行われ,2001年のトマト加工品輸入量は18万7千トンとなっている(第4図)。
 トマト加工品の関税率は,トマトケチャップ,トマトソース製造用のトマトピューレー・ペーストについてはゼロ(無税)であるが, それ以外のトマト加工品については,国内トマト生産者,製造業者保護という観点から関税がかけられている。 ただし,94年までは20〜35%の関税率であったが,ウルグアイラウンドの結果,95年から2000年にかけて徐々に引き下げられ,2001年では関税率は9.6〜29.8%になっている。
 93年には8年ぶりに作付面積が増加したものの,生産量の回復には至らなかった。近年は,作付面積は安定し,生産量は6万トン前後で推移している。
<トマトの生産量>  トマトの生産に関しての資料を農水省のHPから引用しよう。
トマトの栽培面積と出荷量(H13農水省統計から計算)    露地栽培 5570ヘクタール 20万トン    施設栽培 7990ヘクタール 60万トン
http://homepage2.nifty.com/bombus/Page10-1.html から。
http://www.tdb.maff.go.jp/toukei/a02smenu2?TokID=F005&TokKbn=B&TokID1=F005B2005-002&HNen=H17&Nen=2005 から。
トマトの生産額 農林中金総合研究所のホームページ「統計の眼」http://www.nochuri.co.jp/report/pdf/r0403sta.pdf からトマトの生産額を引用すると、 2001年の粗生産額は1,904億円となっている。
<トマト出荷量>  単位トン
季節\年 12ー2000 13ー2001 14ー2002 15ー2003 16ー2004 17ー2005
全季節 708,500 699,800 688,600 669,000 665,900 668,100
冬 春 362,900 365,300 370,800 359,000 365,900 362,700
夏 秋 345,600 334,500 317,700 309,000 300,100 305,400
[農水省統計表]収穫量〜出荷量(カリフラワー〜すいか)  http://www.tdb.maff.go.jp/toukei/a02smenu2?TokID=F005&TokKbn=B&TokID1=F005B2005-002&HNen=H17&Nen=2005 から。

<輸入トマト(生鮮のもの及び冷蔵したもの)>
 \年 12ー2000 13ー2001 14ー2002 15ー2003 16ー2004 17ー2005
数量(トン) 13,003 9,452 4,193 4,185 4,857 5,894
金額(百万円) 2,898 2,093 1,463 1,149 1,646 1,820
価格(円/Kg) 223 410 349 275 339 308
トマトの輸入関税(生鮮のもの及び冷蔵したものに限る)2003年1月1日から 3%
[輸入トマト(生鮮のもの及び冷蔵したもの)]   http://www.officej1.com/tomato/data/y_ryou.html から。

<加工トマト輸入(調整したトマト、トマトピューレ、トマトペースト、ジュース、その他)>
 \年 12ー2000 13ー2001 14ー2002 15ー2003 16ー2004 17ー2005
数量(トン) 190,967 184,565 177,324 177,746 197,351 215,412
金額(百万円) 51,368 53,954 51,087 51,389 18,765 20,252
[加工トマト輸入]   http://www.officej1.com/tomato/data/tdkakou_yunyuu.html から。
<トマトの自給率>  トマトの自給率に関して2つの資料があったので両方を紹介しよう。
 トマト自給率 55% http://cache.yahoofs.jp/search/cache?p=%E3%83%88%E3%83%9E%E3%83%88%E3%80%80%E8%87%AA%E7%B5%A6%E7%8E%87&fr=top_v2&tid=top_v2&ei=UTF-8&search_x=1&u=www.foodpanic.com/index2.html&w=vc%3A%E3%81%A8%E3%81%BE%E3%81%A8+%22%E8%87%AA%E7%B5%A6+%E7%8E%87%22&d=Upqxn7XiP2pf&icp=1&.intl=jp から。
 トマト自給率 59% http://www.foodkingdom-miyagi.jp/jikyu/jikyu15.html から。
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<トマトの品種改良> アメリカには1860年頃イギリスやフランスから導入された。1910年頃にかけては、偶然変異の選抜や純系選抜法によって、ポンデローザ、アーリアーナ、ボニー・ベストなどの優れた品種が育成された。さらに1911年から1935年頃には、品種間交雑に重点をおいた改良で、地域適応性や輸送加工性に優れた品種が多く育成された。1936年以降は一代雑種の利用が急速に普及するようになった。
  トマトの品種改良、それには他の農産物とは違った目標を持った改良が行なわれた。『世界を変えた作物』から引用しよう。
<機械で採るトマト>  わが国のトマト栽培は、ほかの野菜類と同様に、多肥集約の支柱栽培が多い。促成栽培や抑制栽培な作型が分化し、1年中市場に出回っている。 園芸加工品の中では、果樹のミカンと野菜のトマトは重要な位置を占めている。最近では、農産物の貿易自由化の波に中で、生産コストの低減が大きな課題となっている。 とくに、加工原料としてのトマトの生産は、国際的な競争力に乏しい。たとえば、1トンのトマトの生産に必要とされる労力をみると、日本はイタリアの3.5倍、アメリカの9倍にも達している。
 アメリカのトマトの生産コストがきわだって低いのは、トマトの品種改良によって、もっとも多くの労力を必要とする収穫作業を機械化したことによる。 (『世界を変えた作物』から)
 サンフランシスコから双発のプロペラ機で、サクラメントに飛んだときの話である。海岸山脈を越えてセントラル谷に入ると、色タイルを敷き詰めたような模様が眼下に開けた。西の海岸山脈と東のシェラネバダ山脈にはさまれて広がるセントラル谷は、温暖な気候とサクラメント川の豊かな水に恵まれて、みごとな灌漑農業を発達させていた。色タイルのように見えた模様のなかの赤い部分がとくに目についた。双発機がサクラメントに近づき高度を下げたとき、赤いタイルがなんとトマト畑であることがわかった。トマト畑を大型コンバインが走り、トマトが機械で収穫されていた。これは、著者の一人が、もう10年以上も前にアメリカで見た光景である。 (この本は1985年初版)
機械で収穫できるトマトの改良は、まず草丈の短縮。2メートル以上の草丈になると支柱を立てて茎を固定することになる。 しかし支柱があると機械収穫ができない。草丈の低い矮生と呼ばれる突然変異体を利用し、草丈の低い品種を改良した。
機械収穫に必要な第2条件は、均一な成熟だ。機会で一気に収穫するには果実がいっせいに成熟する必要がある。
第3の条件は、果実の離脱性が優れていること。普通の栽培ではあまり取れやすいと、収穫前に落ちてしまうので、逆に離脱しにくい方に改良がされていた。
そして第4の条件は果実の破損耐性。トマトは薄い果皮と多汁質の軟らかい果肉からなっているので、少しの衝撃でも果実が破損しやすい。 機械収穫に適したトマト品種育成では、衝撃に強いことが最も大切であった。
 1942年、アメリカのトマト栽培家ジョンゲニールが思いついた、トマトを機械で収穫すること、これは約20年かけて達成された。矮性化で無支柱栽培を可能にし、心止まりで果実の成熟をそろえて一斉収穫を可能にし、果実の小形化、細長化、硬質化によって損傷にたえるようにし、さらに離脱性を適度につけて、機械収穫用トマトの改造は成功した。 このトマトの改造は、アメリカならではの資本主義的機械文明の落とし子といえよう。 (『世界を変えた作物』から)
<新鮮野菜は地産地消>  生食用トマトと加工用トマト、両方を1つにして考えると、輸入の方が少し多いということになる。 これを、生食用と加工用と別に考えると、生食用トマトは国産、加工用トマトは輸入という図式になる。 生産コストを比べれば、国産トマトはアメリカ産に遠く及ばない。それでもアメリカのような機械で収穫する、ということは研究されていない。 詰まり、コスト競争には参加使用としていない、ということだ。
 生食用トマトは新鮮さが売り物になる。そこで、国産品が多くのシェアを占める。加工用は保存状態が良ければ新鮮さはあまり要求されない。そこで、価格の安い輸入品が多くなる。
 国産トマトの強みは、「地産地消」ということになる。新鮮さを売り文句にする野菜には「地産地消」という言葉が生きてくる。もっとも北海道産のトマトを熊本で販売するのは「地産地消」に反しないか、という疑問には何と答えて良いのか分からない。
(^o^)                  (^o^)                  (^o^)
<主な参考文献・引用文献>
『世界を変えた野菜読本』  シルヴィア・ジョンソン 金原瑞人 晶文社      1999.10.10
『世界を制覇した植物たち』    大山莞爾・天知輝夫・坂崎潮 学会出版センター 1997. 5.10
『トマトが野菜になった日」             橘みのり 草思社      1999.12.25
( 2008年1月28日 TANAKA1942b )
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(7)ブロッコリーの自給率はどうか? 
種子は日本の種子会社が作り栽培は米国農家
  今週はブロッコリーの自給率を扱う。今まで扱った品目は、価格競争に勝てずに、政府からの補助によって細々と生産していたり、 よく調べてみると、数字に表されたものよりも実際は他国の事情に左右されやすい状況であったりと、悲観的なものが多かった。 今週扱うブロッコリーは違う。自給率50%との数字はあるが、他国の事情に左右されずに安定供給できる確率はもっと高い。 そして、食料自給率が低い日本で、他国の事情に左右されずに安定供給できる確率を高める方策が見いだされるように思える。
<ブロッコリー出荷量>  単位トン
\平成ー西暦 12ー2000 13ー2001 14ー2002 15ー2003 16ー2004 17ー2005
数量(トン) 69,800 75,500 79,800 91,300 80,000 90,800
[農水省統計表]収穫量〜出荷量(カリフラワー〜すいか)  http://www.tdb.maff.go.jp/toukei/a02smenu2?TokID=F005&TokKbn=B&TokID1=F005B2005-002&HNen=H17&Nen=2005 から。
<ブロッコリーの自給率>  ブロッコリーの自給率に関して次のような説明があったので、ここに引用しよう。
ブロッコリーの国内輸入状況と自給率   日本での主産地は埼玉県(2004年収穫量:14,000t、栽培面積:1,110ha)、愛知県(同:11,700t、825ha)、北海道(同:10,800t、1,250ha)で、市町村別では愛知県の田原市が全国一の生産量を誇っている。 現在の国内自給率は50%前後を推移しており、消費量の半分は輸入に頼っている状態です。 今、ブロッコリーの最大の輸入相手国はアメリカです。。シャーベット状の氷に埋まって、新鮮さを保って輸入されます。今後の対策としては、もっと国内の生産を増やし、海外の輸入にはできるだけ頼らないようにするのが課題です。
 「ブロッコリー食料自給率解説ページ」http://www.foodpanic.com/jikyuritu/No15.html から
ブロッコリーは輸入が大半?  日本で消費されるブロッコリーの半分以上が、アメリカからの輸入品となっています。初めて輸入されたのは1980年、台湾からわずか8tだけでしたが、今では約10万t(うち96%がアメリカ)に急増しています。  また、輸入ブロッコリーのほとんどが、日本で開発された品種なため、国産と輸入品の外観の区別が付かない農産物です。
 「ブロッコリーあれこれ」http://www.agri.pref.hokkaido.jp/fukyu/isc/buro_iba/are_kore.htm から
ブロッコリーの輸入はアメリカからが89%  ブロッコリーの2003年(1〜12月)の輸入数量及び主な輸入先国は 66,019トンで、そのうち89%がアメリカからの輸入。
 「農水省 消費者相談Q&」http://www.maff.go.jp/soshiki/syokuhin/heya/qa/alt/altqa040417.htm から
*                      *                      *
<「サカタのタネ」がアメリカブロッコリー種子60%のシェア>  日本市場でブロッコリーはアメリカ産が多くのシェアを誇っている。 そのアメリカ産のブロッコリーも種子は日本の種子会社「サカタのタネ」が60%を占めている。これについての「サカタのタネ」のホームページの記事を引用しよう。
ご参考:ブロッコリーについて=(株)サカタのタネ  国内におけるブロッコリーについてはすでに記述したとおりです。海外における当社ブロッコリーについてご紹介いたします。
 日本の種苗会社の中で海外においてはサカタのタネが、最初にブロッコリーのF1品種の販売を開始しました。特にアメリカにおいて当社品種は広く普及しました。アメリカでは、同国内の種苗会社が最初のブロッコリーのF1品種を発表しましたが、生産者の支持を得られず普及しませんでした。その3〜4年後、1971年に、当社の「グリーンデューク」が発表され、その後、「ショーグン」「グリーンバリアント」といった当社品種が順次導入され、1980年にはアメリカにおいて爆発的に普及した「マラソン」が発売されました。「マラソン」はそれまでの品種の作型をおおむねカバーできる万能品種で、収量性も高く、アメリカ国内では過去最高の8,000ポンド/エーカーを記録しました(従来の固定品種:2,000ポンド/エーカー、「グリーンデューク」:4,000ポンド/エーカー、「グリーンバリアント」:6,000〜8,000ポンド/エーカー)。このため、1970年代初め、アメリカにおけるブロッコリーの作付面積は25,000エーカーほどでしたが、1980年代には100,000エーカーと、その面積は約4倍となりました。このように研究開発も進み収量性は、3〜4倍になり、その期間にオイルショックがあったにもかかわらず、ブロッコリーの値段がほとんど変わらなかったのは、品種が変わり、収量が上がったことも一つの理由といえます。現在も、アメリカにおいて当社ブロッコリー品種は広く使われ、同国内の当社のシェアは、約60%※を維持しております。このように当社のブロッコリーは、アメリカ国内においても消費者の生活に大きく貢献しています。     ※当社推定値
 http://www.sakataseed.co.jp/hotnews/2006/060425-1.html から
輸入野菜と国産野菜の栄養成分に差はあるのでしょうか?  近年、生鮮野菜および冷凍野菜を中心に輸入野菜が増加しています。生鮮野菜のうち、特に輸入量の多いのはタマネギ、カボチャ、ブロッコリーなどであり、最近増えてきたものとしてショウガ、ニンニク、レンコン等があります。 ブロッコリー(生鮮もの)については、いくつかの試験研究機関で輸入品と国産品の品質の比較が行われました。形状は、輸入品は主枝が細く分枝が長いのに対し、国産品は輸入品に比べて主枝が太く分枝は短く、花蕾部(先端の蕾の部分)に厚みがあります。このような形状の違いにより輸入品と国産品を区別できます。ブロッコリーはビタミンC(アスコルビン酸)を多く含む野菜です。いくつかの調査によると、全体としては輸入品よりも国産品の方がビタミンC含量が高い傾向がありました。これは、輸入品の場合、収穫後、店頭に並ぶまでに20日間くらいかかるためと考えられます。ビタミンCの含量については、他の輸入野菜でも同様のことが言えるものと考えられます。 ブロッコリーの食味に大きく影響する甘味成分である糖の含量も、国産品の方が高い傾向があると報告されています。通常食べられている花蕾部(分枝も一部含む)には果糖とブドウ糖が多く、捨てられることが多い主枝部にはショ糖が多く含まれますが、いずれの部位でも国産品は輸入品に比べてこれらの含量が高いという調査結果が出ています。このため、食味の官能評価でも甘味やコクなどの点で国産品の評価が輸入品を上回っていました。 但し、野菜の品質は、輸入品、国産品を問わず、産地、天候、収穫時期などによって変動するため、現段階で輸入野菜と国産野菜の品質について結論的なことは言いづらいとされています。
 「(財)食生活情報センター 野菜・果物に関するFAQ」http://www.v350f200.com/faq/08.html から
輸入野菜は割安  輸入野菜は基本的には,同種国産品に比べて安価である。品目によって輸入品単価と国 産品単価との差は一様ではないが,卸売市場における輸入品単価は,国産品に比べて,ブ ロッコリーで約9割,アスパラガスで約6割,ネギで約5割の水準,等となっている。
 「野菜の輸入動向と輸入野菜流通の特徴78P」http://www.primaff.affrc.go.jp/seika/pdf/primaffreview/1/primaffreview2001-1-12.pdf  から
*                      *                      *
<ブロッコリーの自給率は80%?>   ブロッコリーの国内消費量の約半分は国産で、残りの半分はアメリカからの輸入ということになっている。 だからブロッコリーの自給率は50%というのが正しいように言われる。ここで、畜産品の自給率のことを思いだしてみよう。 品目別自給率に飼料自給率を掛けることによってカロリー自給率が導き出される。「食料自給率が40%を割った」と言う「自給率」とは、「カロリーベース総合食料自給率」のことを言う。 この計算の趣旨を尊重するならば、種子の自給率も考慮しても良いはずだ。ブロッコリーについて言えば、輸入されるアメリカのブロッコリーの60%は日本の種子会社「サカタのタネ」の種子を栽培して出荷したものだ。 「カロリーベース自給率」の計算を応用すれば、50%+(50%X0.6)=80% となる。 つまり、ブロッコリーの「カロリーベース自給率」は80%ということになる。
 このことは単に「数字上のマジック」とか、「数字のお遊び」ではない。「日本でのブロッコリーの安定供給に外国の影響を受けない割合」という点に注目すれば、大きな意味を持つことが分かるはずだ。 アメリカが「わが国の言うことを聞かなければ、ブロッコリーの輸出を制限するぞ」と脅しを掛けてきたら「結構ですよ。それならば、日本の種子会社「サカタのタネ」にブロッコリーの種子をアメリカに輸出しないように行政指導することになるでしょう」と言えば良い。
 「農業は先進国型産業である」とのテーゼがここで生きてくる。このブロッコリーの例が、日本での食料の安定供給に関する問題点を検討する際の大きなヒントになる。 「重量ベース自給率」だけでなく「カロリーベース自給率」を理解することによって、食料の安定供給戦略が練り直されることになる。 ブロッコリーのように種子を育成し、栽培は大規模農業が可能な外国、あるいは人件費の安い国に任せて、知識集約型な産業である品種改良を積極的に進めることが、先進国型産業である農業のあり方だ、ということが導き出される。
 このことの重大さを理解すれば、「コメ自由化」の問題も、今までとは違った観点で考えることができる。答えはこうだ「コメの輸入を自由化する」「民間の種子会社を支援し、F1コシヒカリ、F1あきたこまちを育成する」という戦略だ。 さらに将来は「GMコシヒカリ」「GMあきたこまち」を育成することになるだろう。日本は、品種改良という先進国型部門であり日本人の得意とする分野を担当する。 実際の栽培は、それぞれ得意な国の人々に委ねる。これが将来の日本農業のあり方だと思う。当然品種改良には優れた農業経営者の協力がなくてはできない。 そして、それには当然十分な対価が支払われることになるだろう。
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<主な参考文献・引用文献>
( 2008年2月4日 TANAKA1942b )
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(8)外国の事情に左右されないで安定供給できる確率 
自給率を高めることの意味は
<ブロッコリーの自給率と鶏肉・鶏卵の自給率>  ブロッコリーの自給率は通常50%と言われるが、アメリカでのブロッコリーの種子シェアは60%を日本の、「(株)サカタのタネ」が占めている。 従って、カロリーベース食料自給率の考え方に立って言えば、ブロッコリーの自給率は80%ということになる。 同じように、カロリーベース食料自給率の考え方を更に徹底して、鶏肉・鶏卵の自給率を考えると、7%とか9%よりももっと低くなる。 種子のシェアとか種鶏についてこれを自給率に取り入れてはいないが、このことも自給率を考えるうえで考慮すべきだ。 それは、自給率とは「外国の事情に左右されないで安定供給できる確率」と考えるとハッキリする。
<自由貿易とリスク分散と自給率>  食料の安定供給には「@自由貿易とAリスク分散とB自給率」がポイントになる。
 @自由貿易 当たり前のことだけど、議論する場合忘れがちになる。農水省のホームページ 「食料自給率の低下と食料安全保障の重要性」http://www.kanbou.maff.go.jp/www/anpo/sub13.htm には次のような文章がある。 ● 国内500万haに加え、海外に1,200万haの農地が必要 このような私たちの食生活は、国内農地面積(476万ha(平成14年度))とその約2.5倍に相当する1,200万haの海外の農地面積により支えられています。
 このため、農産物の輸入が行われなくなってしまうような場合には、大幅な食料の不足がひき起こされることとなります。
 つまり日本では食料自給率100%は不可能だということになる。だから海外から食料を輸入するということは避けられない。それには自由貿易が保証されなければならない。 保護貿易政策が台頭してくると食料安定供給が不安になる。政策担当者は自給地を広めようなどと考え、「大東亜共栄圏」などという幻想を抱くことになる。 従って日本が率先して関税障害を設けたり、保護政策を実行したりして、他国がそれに追従して保護貿易政策が大手を振るうようになると安定供給が不安になる。 当然のことであるにも拘わらず、忘れがちになる。
 Aリスク分散 農作物の収穫量は天候・気候に左右されやすい。「だから、自給率を高めよ」は間違っている。 「だから、供給地・供給国を多くせよ」が正しい。このことは「もう「尊農攘夷論」はやめにしましょうよ 安定供給のためには、自給率を下げること」と題して、 2001年5月14日に書いた。そしてリスクを分散させる関税率の工夫についても書いた。
 B自給率 今回書いている自給率とは、「外国の事情に左右されないで安定供給できる確率」と考えると理解し易い。 けれども、これは@自由貿易、Aリスク分散と組合わせた政策によってこそ効果がある。自給率を高めるために、関税率を高めたり、国内農業の保護政策を進めたりして、結果的に保護貿易政策をとったならば、他国も保護貿易政策を選択することになる。 日本だけ農業保護を行い他国の農業保護政策を批判するのは「身勝手なわがまま」だ。日本が率先して「国内農業の保護政策」から「自由化政策に政策転換」することによって、日本の食料安定供給は推進されることになる。
<食料自給率の推移>  食料自給率の推移を農水省のホームページから引用しよう。「日本の食料自給率」 http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/012.html の「総合食料自給率の推移(カロリー・生産額)(昭和35年度〜平成17年度)(エクセル:21KB)」
<総合食料自給率の推移(カロリー・生産額)(昭和35年度〜平成18年度) %> 平成18年度は概算
項目\年度 昭和35年 40年 45年 50年 55年 60年 平成元年 5年 10年 15年 16年 17年 18年
穀物自給率 82 62 45 40 33 31 30 22 27 27 28 28 27
主食用穀物自給率 89 80 74 69 69 69 68 50 59 60 60 61 60
供給熱量総合食料自給率 79 73 60 54 53 53 49 37 40 40 40 40 39
生産額ベースの総合食料自給率 93 86 85 83 77 82 77 72 70 70 69 69 68

<国土面積に占める農地面積の割合(2001年) %> (注)日本は2003年(平成15年)の数値 
日本 英国 ドイツ フランス アメリカ
パーセント 13 70 48 54 43
http://www.maff.go.jp/www/counsil/counsil_cont/kanbou/kikakubukai/18/01.pdf「国土面積に占める農地面積」14P から

<食料自給率の変化>  昭和14年度86% 昭和21年度88% 昭和40年度73%
「C戦前・戦後と現在の食料需給の構造変化」http://www.maff.go.jp/www/counsil/counsil_cont/kanbou/kikakubukai/18/01.pdf から
*                      *                      *
<自給率低下、2つの理由>  「食料自給率が40%を割って39%になった。大変なことだ」との危機感があるようだ。では、なぜ自給率が低下したのだろうか?理由は2つあると思う。 まず、「地産地消という保護貿易政策  食糧自給とは江戸時代の鎖国が理想なの?」と題して書いたホームページの一部を引用しよう。 http://tanaka1942b.hp.infoseek.co.jp/chisann.html#1-10 から
食料の完全自給は不可能  農水畜産物個々の生産性向上を目指しても、食料自給率100%は不可能だ。農産物に関して言えば、この狭い日本列島という限定された区域内では、食料の完全自給はできない。 その根拠は農水省のホーム・ページに書かれている。<食料自給率の低下と食料安全保障の重要性>を見て頂きましょう。 <国内500万haに加え、海外に1,200万haの農地が必要>と題されたところに次のように書かれたいる。
 このような私たちの食生活は、国内農地面積(476万ha(平成14年度))とその約2.5倍に相当する1,200万haの海外の農地面積により支えられています。 このため、農産物の輸入が行われなくなってしまうような場合には、大幅な食料の不足がひき起こされることとなります。
 これがどのようなことを意味しているかと言うと、日本列島の土地では、現在の3.5分の1の人口しか養えない、ということを言っていることになる。 別の表現をするならば、@食料自給率100%を達成するには人口を3,600万人程度に減らさなければならない。つまり、江戸時代の人口に減らさなければ完全自給は達成されない。 A生産性を3.5倍にしなければならない。B現在の1億2000万人の人口を維持するには、国民が現在の3.5分の1の食料で我慢しなければならない。
 農水省のこのホーム・ページを読んで、その行間の意を推測するならば「食料自給率100%を目指すなんてことが不可能なのだから止めましょうよ」「農水省の事務方として、そのような正直なことを言うと、農水省にいられなくなる。 まだ、国家公務員を退職したくないので、誰か意を汲んで下さい」「誰か、食料自給率100%を目指すなんてことが不可能だ、とハッキリ言って下さい」と言いたいのだと推測することになる。 <農水省事務方の苦悩>を参照のこと。
海外からの食料輸入が止まったらどうなるか?  農水省・最新食糧自給率表から予測されること──海外からの食料輸入がストップしたら、安定的に供給されるものは「米」だけ。毎食白米ばかりの食事、おかずが少なくなり「おにぎり」中心になる(納豆・豆腐・味噌・醤油は超贅沢品になる=大豆の自給率は3%)。米の供給に関しては、減反政策を止めれば十分米不足は起きない。 それよりも作りすぎて外国に輸出するとなると、他国の食糧自給率を引き下げることになるので、「自給自足論者」はこれを非難することになるだろう。もっとも食料自給率100%以上の国に対して「食料を外国に輸出して、他国の自給率を低下させている。輸出を自粛しなさい」との非難は起きないのは不思議なのだが……。 米以外では、飼料自給率が低いので、牛肉・豚肉・鶏肉・鶏卵の供給は減少し価格が高騰する。このように考えていくと、「いざという時」に備えるには、主食=米に関しては心配ないので、家畜用の飼料(トウモロコシ、グレーンソルガム=コウリャン)の安定供給システムを作ることが必要になる。
 「食料自給率が40%と低い。自給率を上げなくてはならない」との主張は「もしも、外国が日本に食料を輸出させなくなったら大変だ」が根拠になっている。 もっとも、そのように危機感を煽る人たちが「もしも、食料輸入がストップしたらこうなる」とのシミュレーションを発表したという話は聞かない。「国産品愛用運動」が少し言葉を変えた、農産物生産者とその周辺の利益集団のレント・シーキングと見るのが正解のようだ。
@<江戸時代は自給率100%>  平成19年7月1日の日本の人口は1億2,777万人。農水省のホームページによると「日本列島の土地では、現在の3.5分の1の人口しか養えない」ということになる。 単純に計算すると、「日本列島では3,650万人の人口しか養うことができない」となる。幕末の人口は3,000万人から3,400万人と言われている。食料を輸入していなかった江戸時代には食料自給率100%だったはずだ。
 このことから、「現代の食料生産能力は江戸時代からあまり変わっていない。せいぜい2割程度生産性が向上したかも知れない程度だ」と言える。幕末から食料生産能力があまり変わらず、同じ程度の食料が生産されていて、それで自給率が下がったというのは、 それだけ人口が増えたからだ、と言える。江戸時代から21世紀にかけて日本の食料自給率が低下したのは、「食料生産量は変わらずに人口が増えたからだ」と言える。 なぜそうなったのか?なぜ食料生産が増えなくて人口が増えたのか?それは、農業よりも生産性の高い、工業製品を輸出し、代わりに食料を輸入できたから。 「こんなに狭く、国土面積に占める農地面積の割合の低い日本で、扶養可能な人口の3.5倍もの人口を養えるだけの工業生産を発展させた日本の工業技術力の高さを誇るできだ」と思う。 つまり、「食料自給率が低いのは、それだけ工業生産力が高いと評価すべきだ」と思う。
 江戸時代から21世紀にかけて日本の食料自給率が低下したのはこのような理由が考えられる。
A<敗戦直後、昭和21年の自給率は88%と高かった>  明治維新後、日本では加工産業を発展させ、食料を輸入し、人口が増えていった。1929年、ニューヨークの株暴落から始まった世界恐慌は、世界をブロック経済へと変化させた。 先進工業国の多くは植民地を支配し、原材料を輸入し、工業製品を輸出した。後進工業国である、日本、ドイツ、イタリアはブロック経済からはみ出され、自前でブロックを作らなければならなくなった。 日本では、台湾、朝鮮、中国、満州、インドシナ半島を含めた「大東亜共栄圏」構想が誕生した。こうして、多くの人口を養うために自給地を広めていった。 昭和20年、1945年、大東亜戦争は日本の敗戦で終了した。日本列島以外の食料自給地はなくなった。人口は、列島以外の外地からの引き上げを含め、列島での養える人口を超えていた。 昭和21年の自給率88%とは、満足に食べての88%ではない。米の代わりにサツマイモを食べ、多くの栄養失調者を生みながらの88%であった。
 その88%が現在は39%になった。その理由はなにか?日本人のエネルギー源はサツマイモから米に代わり、そうして肉類に変化したことがその理由だ。 米の自給率は100%。その100%の米から10%以下の、牛肉、豚肉、鶏肉、鶏卵にエネルギー源が変化した。このことによって食料自給率が低下した。
<日本人がゆたかになって食料自給率が低下した>  日本の食料自給率が低下した理由として、長期的には生産性の高い工業製品を輸出することによって食料を輸入し、扶養可能な人口の3.5倍の人口を有するようになった。
 短期的にはサツマイモや米に代わり肉類が日本人のエネルギー源に代わったこと。長期的、短期的にこの2つの理由が考えられる。そうしてこの2つの理由の共通点は、「日本人がゆたかになった」ということだ。
 日本人がゆたかになって、外国から食料を買ってこられるようになった。サツマイモや米よりも肉類を主なエネルギー源とすることができるようになった。 「ゆたかな社会」とは、「財政政策の効果」「金融政策の効果」を変えたし、政党間の政策の差を少なくし投票率の低下を招いた。そして「ゆたかな社会」は、日本で食料自給率の低下を招いた。
 このことを嘆くべきことなのだろうか?ただし、「ゆたかな社会」を意識している経済学者はいない。農業関係者もいない。「ゆたかな社会」にどのような対処すべきなのか?答えを用意できる関係者はいない。
*                      *                      *
<外国の事情に左右されないで安定供給できる確率>  「日本の食料自給率が40%を割って39%になった。大変だ」と言う。何故大変なのか?それは「外国の事情に左右されないで安定供給できる確率」だからだろう。 それならば、現在使っている「自給率」だけでは不備だ。カロリーベース総合食料自給率では牛肉・豚肉・鶏肉・鶏卵などで飼料自給率を計算に入れている。けれども今まで見てきたように、種鶏のこと、種子のことは計算に入っていない。 それらを計算に入れた自給率を問題にすべきなのだが、そうした計算例はない。具体的な数字は出せないが、種鶏・種子も「外国の事情に左右されないで安定供給できる確率」には大きく関係してくる、ということは配慮しなければならない。
 食料の安定供給はどのようにして保障するか?という問題を考える場合、@自由貿易、Aリスク分散、B自給率を問題にすべきなのだが、B自給率に関しては種鶏・種子も考慮して考えなければならない。 そうして、これらを総合的に捉えた「食料安保議論」がなされなければならない。
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<主な参考文献・引用文献>
( 2008年2月11日 TANAKA1942b )
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(9)農水省は何故ムリな目標を立てるのか? 
もう尊農攘夷論はヤメにしましょうよ
<自給率は向上しない>  現在食料自給率は、「カロリーベース総合食料自給率」をもとに議論されている。このカロリーベース総合食料自給率で今後自給率が向上するかと言えば、「ノー」と言うより他はない。 これが今まで見てきた過程だ。これはアマチュアが公表されている資料をもとに出した結論であって、よく調べれば誰でも分かる結論だ。 それでも農水省は「自給率向上」を訴える。農水省のお役人さんならば、誰でも食料自給率向上が絶望的であることが分かるはずだ。それにもかかわらず「自給率向上」を訴える。何故だろうか?
<農水省のお役人さんは、農政圧力団体に逆らえない>  農水省に所属し、自給率問題に取り組んでいれば「自給率向上は無意味」と分かるにしても、それを公の場で言い出すわけにはいかない。 「農水省事務方の苦悩」 で書いたように、周りの人たちが、「もう「尊農攘夷論」はやめにしましょうよ」と言い出さなければならないと思う。
<役職者になると言いたいことが言える>  圧力団体に弱いお役人さんも、肩書きがつくとけっこう言いたいことが言えるようだ。 農水省のお役人さんでも 「食糧自給率が3割を切ってはいけないという根拠は、何ですか?」 ということも非公式の場なら言い切ってしまう。 その例を山下惣一著『それでも農は命綱』から引用しよう。
<自由化派VS自給派の論争> 「なぜ、自らの食を放棄するのか 自由化派VS自給派の論争」 
 霞ヶ関のいわゆる”官僚”と呼ばれる人と飲んでいて、ちょっとした口論になった。 「山下さんねえ。農村で食えないというのは、住んでいる人の数が多すぎるということなんですよ」といい出したからである。
「だって考えてごらんなさい。田畑の面積は限られている。つまり、生産力に限界があるんですよ。だから住んでいる人の数が多いと分け前が少なくなる。したがって、農村では生活できないんですよ」
「ですから」と相手は、口を挟む隙を与えず続けた。「農村の人たちは半分、都会へ出ていらっしゃい。これから都市周辺の農地をどんどん転用して住宅建設を進めますから、そこへ移っていらっしゃい。そうすると、農村に残った人たちも生きていけるんです」
 はじめは冗談かと思って聞いていた。しかし、どうも本気でいっているらしいとわかって、”こいつは馬鹿か”と考えた。
「何をいうんですか」と私は当然、反論した。「村の人間は半分、都会に出てこいというけれど、若い者ばかり出ていっていまって年寄りだけが残されているのが農村の現実じゃないですか。残った者のパイは大きくなりませんよ」
「あのね、われわれ国の仕事というのは、国民をまんべんなく豊かにすることであって、なにも住みにくい農村に人を住まわせることじゃないんですよ。住みにくいところに無理に住まなくてもいいんです」
 のれんに腕押しという感じである。どうやら私などは、頼まれもしないのに条件の悪い農業と農村にしがみついて、愚痴や怨み事ばかりいっている不平分子に映るらしい。
 話題は、農業問題からコメの自由化に移った。
「結構じゃないですか」と相手は高らかにいい放った。「日本のコメ市場が自由になれば、日本向けのおいしいコメづくりのオリンピックが始まりますよ」
「そんなことしたら」と私はいった。「10年後には、日本の食糧自給率はカロリーベースで3割を切りますよ。穀物だけだと1割台まで落ちる。本当に農業のない国になりますよ」
 相手は落ち着き払って、こういった。
「食糧自給率が3割を切ってはいけないという根拠は、何ですか?」
「えっ!」私は絶句した。長い間たってから、何だろう、と考えた。別の言い方をすれば、なぜ、日本に農業が必要か、ということになる。本当に必要なのだろうか?なぜ必要なのだろう。
 もし、私が生産現場に生きる百姓でなかったなら、この尊大な官僚と同じ考えになっていたかも知れない。農業みたいな効率の悪い仕事を日本でやる必要はない。 日本人にやらせる理由はない。こんなものは外国人にやらせて、必要な分だけ買えばいいのだ。あるいは、日本人が外国へ出かけていって、現地人を使って作って、持ってくればよい。 そのことが相手国の経済発展にもつながる。
 たしかに、環境の悪化、人口増という不安要因はあり、世界的に凶作のとき、どうするかという問題は残る。が、世界に食糧が余っていても、買う金のない人たちは飢えているのだ。 つまり、食糧危機と同義語なのであり、自分たちは飢えても輸出する”飢饉輸出”もありうる。どんな事態になってもお金持ちが餓死しないように、経済大国であるかぎり飢えることはない。 強い円を生かして外国から安い食糧をどんどん輸入すれば、相手国も豊になり、ひいては日本の工業製品のマーケットにもなりうる。一方、国内では所得と実質購買力よの落差が解消されて、日本民族は有史以来の本当に豊かな時代を謳歌することができる。
 いずれにしても、世界のどんな国であれ、一国主義では生きていけない。お互いに相互依存を深め、物と人の交易交流も盛んになり、世界はまさに第2の「大航海時代」に向かいつつある……。
 こういう時に、やれ食糧の自給率を高めよとか、コメ自由化反対などと叫ぶのは、時代に逆行するばかりでなく、一国主義、鎖国主義につながる危険な姿勢でさえある。 今回のコメ不足にしても、一国だけで供給しようとしたから起きたことであって、常にいつでも不足に対応できる輸入のパイプを持っていたなら起きないですんだことだ……云々。
 こういう理論はたいへんわかりやすい。説得力がある。
 それに対して、「いや、そうではない。それは間違っている」と主張し、反論するのは容易なことではない。
 ──地球規模で考え、行動しよう──などと唱えている人たちからみれば、まことに愚劣な、重箱の隅をつつくようなせこい話に聞こえるかもしれない。 一人上目使いに虚空を睨んで虫歯をシーハシーハいわせるようないじましさに映るかもしれない。
 しかし、それでもなお、やはり、それは間違っているのだ。
<『それでも農は命綱』から>
<正義を主張すると農水省に居られなくなる==竹内直一氏>  農水省に入省し、生産者よりも消費者を重視した政策を実行しようとして、業界からの圧力により農水省に居られなくなったのが、後に「日本消費者連盟」を創立させた竹内直一氏であった。 簡単に紹介すると、次のとおり。詳しくは「「お客様は神様」の現代資本主義社会」を参照のこと。
 「消費者は王様なりと言うのは嘘っぱちで、実際は企業の横暴につねに泣き寝入りだ。企業には消費者のことなど頭にない。政府は企業べったり、官僚もまた縄張り争いと思い上がりで全く頼りにならない。 集会を開いて決議したり、チラシを配ったり、デモ、陳情、署名運動といった、それまでの形の消費者運動ではまるっきりパンチが効かないことを、痛切に感じていた。 それが私自身に消費者のために何かやってやろうという気持ちを起こさせ、消費者連盟を生む原動力になったのだ」
 竹内直一(大正7年生まれ)、消費者運動に身を投じる前は、農林省のエリート官僚の1人であった。しかし、竹内本人の表現を借りれば、「素人臭い」いくつかの行動が彼をエリートの座から追いやることになる。 彼が農林省から経済企画庁に出向して、発足したばかりの国民生活局の参事官として物価、消費者行政を担当していたとき、牛乳を安く飲もうという消費者の運動を経済企画庁が支持して、牛乳を値切って買うことを呼びかけた。 呼びかけから、時には消費者への作戦指導にまで進む。それは牛乳の小売価格引き上げを図ろうとしていた農林省や乳業メーカーの神経を逆なでするものであった。43年6月、追われるようにして官僚生活に終止符を打つ。
 竹内が京都に生まれたのは、1918(大正7)年、ロシア革命の翌年で、大正デモクラシーはなやかなりし時代であった。と同時に、この年、米価が暴騰し、善行各地で米騒動が起きた、混乱の時代でもあった。
 京都一中、第三高等学校、東京帝国大学法学部と、超エリートコースを歩み、同大学を卒業したのが、1941(昭和16)年、第二次世界大戦の真っ只中であった。彼の青春時代は、戦争の軍靴の足音と共に過ごさざるを得なかった。 と同時に、国の内外の民衆が、権力と軍国主義の抑圧のもとで、いかに呻吟・苦闘してきたかをつぶさに見ることができた。
 東大卒業の翌年1月、農林省に入省、食糧管理局、食品局、統計調査部などに勤務、続いて経済企画庁では、物価・消費者行政を担当した。まさに、食品行政、消費者行政の第一線の担い手であった。 農林省では、大臣官房、大臣秘書官など農林行政トップの下で、官僚や政治家の悪業の数々を注視してきた。
 このようなエリートコースを歩みながら、官僚帝国の安逸に染まることはなかった。1968年、牛乳一斉値上げ反対運動を先導したとして乳業各社の要求で退職を余儀なくされた。これをきっかけに、彼は、人生をまさに百八十度転換することになる。
 翌69年4月には、日本消費者連盟創立委員会を結成し、代表委員に就任、次々に大企業の不正を摘発し、消費者運動の旗手として活躍することになる。 60年代から70年代前半は、日本経済が高度成長を果たしたが、その一方で、食品禍、薬品禍、公害事件が頻発した。1970年は「安保の年」であるとともに「公害元年」と呼ばれた。
 1974年5月には、日本消費者連盟が発足し、代表委員に選出され、食品添加物追放、合成洗剤追放、企業犯罪告発、行政犯罪告発などの運動の戦闘に立った。 消費者運動でも農林省時代の体験、法制度の知識を十二分に生かしたことが、大きな成果を生み出すことにつながった。
(『官僚帝国を撃つ』から)
 同じ頃、高橋晄正氏・宇井純氏も似たような状況にあり、同じように日本の市民運動に大きな影響を与えた。この人たちの仕事は高く評価すべきだと思う。
<事務次官ともなれば奥さん同伴の接待ゴルフも省内では非難されない==防衛省>  役職者ともなれば、非公式な場面ではかなり言いたいことも言える。さらに、事務次官ともなれば奥さん同伴の接待ゴルフも省内では非難されない。 お役人の世界はこのようだ。「貿易立国日本では、食料自給率の向上は望めない」とは実際の現場担当者は言うことはできない。 周りの人たちはそうした状況を察してあげ、もう、こんな「尊農攘夷論」はやめにしましょうよ。
 竹内直一氏は立派な消費者運動を起こしたけれど、今の若い農水省のお役人さんたちを、農水省に居られなくなるような立場に追い込むのはやめにしましょう。
*                      *                      *
<自給率向上のために何をするのか?>  愛媛農政事務所ホームページ http://www.ehime.info.maff.go.jp/jikyuuritsu03.htm に「どうすれば自給率があがるの?」という項目があったのでこれを引用することにしよう。
 どうすれば自給率があがるの?
 食料自給率向上のためには、政府はもちろん、生産から消費まで、食料に関係する全ての方のご協力が必要です。
関係者の主体的取組例
地方公共団体
(都道府県、市町村など)
地域の食料自給率や地産地消の取組の目標を定める。
(○○市では野菜の自給率100%を目指す!)
農業者 買い手のニーズを積極的に把握し、農産物を生産する。
(地元の食品工場が要望している、特定の栄養価が非常に高い品種を栽培する!)
農業団体
(農協など)
地域の農産物の需要・生産を拡大する。
(地元の農産物直売所を通じて地産地消を進める!)
食品産業
(食品加工業、外食産業など)
適切な食品表示による正確な情報を提供する。
(食材の原産地表示を徹底する!)
消費者・消費者団体 栄養バランスの改善や食べ残しを減らすなど、食生活の見直しを心がける。
(ごはんを中心とした朝食を毎日きちんととり、食べ残しが出ないよう、たくさん作りすぎない!)

 「ごはんを中心に肉や油は控えめに、野菜をたっぷり使った食事を心がけましょう」
 肉類や油のとりすぎは様々な生活習慣病を引き起こす原因にもなっています。ごはんを中心に、野菜をたっぷり使ったバランスのよい食事を心がけましょう。
 (T注) 「ゆたかになったからと言って、敗戦直後のあの食糧不足、栄養失調時代を忘れないよう肉類は控えましょう」
 「食べ残しを減らしましょう」
 現在の日本では、食品の廃棄・食べ残しが非常に多くなっています。食料を大量に輸入して大量に捨てていることは問題であり、環境問題においても改善が必要です。
 (食料の無駄な消費を減らし、食料全体の消費を抑えることは、食料輸入の必要性を抑えることになります。)
 (T注) 「ただしメタボが心配な人は、ムダを怖れずにダイエットに励みましょう」
 「地元でとれる食材を日々の食事に活かしましょう」
 私たちが住んでいる土地には、その風土や環境に適した農産物が育ちます。身近でとれた農産物は新鮮です。一人一人が地元でとれる食材を選ぶことが、地域の農業を応援することになります。
 (T注) 「バナナは贅沢です」「ダイズの自給率は5%。納豆、豆腐、味噌、醤油の原料であるダイズはアメリカの契約農家に作ってもらっています」
 「「いまが旬」の食べ物を選びましょう」
 「旬」の農産物は、もっとも適した時期に無理なく作られるので、余分な手間や燃料などを必要としません。味もよく、栄養もたっぷりで、体にも環境にもやさしい食事が実現できます。
 (旬をはずれた農産物を作るには多くの手間とエネルギーが必要ですが、一方で、旬をはずれた農産物を、日本とは季節や気候の違う外国から輸入している場合も多く、食料輸入の増加の一因になっています。)
 (T注) 「穫れすぎた農作物は最新の技術で保存されて市場に出回りますが、これにより季節感が薄れています」
<これで食料自給率は向上しますか?>  「健康のための食生活」「無駄をなくして資源を大切にしましょう」「地産地消」「食材の美味しい食べ方」。 こうした食育のためのスローガンとしては適切な標語ではあるけれど、自給率向上にはならない。
 「大規模農業」「担い手と集落営農」などの標語も反論はし難いが自給率向上への具体策は生まれない。
農水省のお役人さんたちはみんな分かっているのです。「自給率向上なんて難しいことだ」と。けれどもそれをハッキリ言うとどうなるかも分かっている。 そこでこうした「自給率向上対策」が出てくることになる。もうこんな「尊農攘夷論」はやめにしましょうよ。
(^o^)                  (^o^)                  (^o^)
<主な参考文献・引用文献>
『それでも農は命綱』            山下惣一 家の光協会  1994.10. 2 
『官僚帝国を撃つ』             竹内直一 三一書房   1997. 4.30
( 2008年2月18日 TANAKA1942b )
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(10)種子会社は「F1コシヒカリ」を育成せよ
「農業先進国型産業論」を再び主張する
 外国の事情に左右されないで安定供給できる確率を高めるにはどうしたら良いのだろうか? 農水省の政策を批判したのだから、それに代わる代案を出さなければならない。TANAKAの主張は<種子会社は「F1コシヒカリ」を育成せよ>だ。
 鶏肉・鶏卵、ブロッコリーで分かったように「食料自給率」の数字だけでは「外国の事情に左右されないで安定供給できる確率」を求めることはできない。 米は現在自給率100%ではあるけれどいずれ自由化される。以前に、「米が輸入自由化されたらどうなるか?」についての研究が行われた。 東京大学グループは「米の自給率は20%になってしまう」と言い、青山学院大学グループは「それでも20%は確保できる」と結論づけた。 悲観論、楽観論の違いはあっても20%という数字は同じであった。ただしこの数字は「重量ベース自給率」で「カロリーベース総合食料自給率」の考え方は取り入れられていない。 「外国の事情に左右されないで安定供給できる確率」という視点に立って考えると、もう一歩踏み込んだ見方が必要になる。 それは「将来は米もF1ハイブリッドライスが主流になるだろう」との見方だ。中国ではF1ライスが普及していると言う。 食料安保戦略から言えば、「F1ライスを育成することによって世界の米生産市場をコントロールすることができる」。
 日本のコメ市場開放を狙って各国の政府、農業団体、農業経営者が戦略を練っている。日本へ輸出する品種は「コシヒカリ」「あきたこまち」が主流になるだろう。 日本の種子会社が「F1コシヒカリ」「F1あきたこまち」を育成し、日本の消費者がこれを受け入れるならば、他国もこの品種を栽培し日本に売り込むことになるだろう。 このとき、日本の自給率が20%になったとしても、種子のシェアが80%とすれば、0.2+0.8X0.8=0.84 つまり実質的な自給率「外国の事情に左右されないで安定供給できる確率」は84%ということになる。
 「品種改良にみる農業先進国型産業論」の<ハイブリッドライスの可能性>で書いたように日本の品種改良関係者には中国のF1ライス育成に対する危機感は全くない。 「食料安保」意識もなければ「品種改良先進国」のプライドは感じられない。
<花粉症緩和米>  日本では遺伝子組み換え技術を応用した花粉症緩和米の研究が進んで、実用化に近づいた。 けれどもこれは、遺伝子組み換えであるという理由で反対が強く、農作物ではなく医薬品として扱われることになり、実用化には大きな壁が立ちはだかる。
 遺伝子組み換え農作物では食用・飼料用を中心にイネやダイズ、トウモロコシなどの研究が進んでいるが実用化へのめどは立っていない。
 イネをはじめとする農作物の遺伝子組み換えに関しては、「遺伝子組換え植物(GMO)の安全性確認状況」 を参照のこと。
<中国のハイブリッド米がコシヒカリより美味くなったらどうなる?>  中国ではハイブリッド米が実用化されている。これに対して日本の科学者たちの反応は鈍い。危機感もプライドも感じられない。 もしも中国でのF1ハイブリッド米がコシヒカリ並の旨さになったらどうなる?日本の農家は中国から栽培用のF1コシヒカリの種子を買い、それを栽培することになる。 「米は日本の文化だ」などと言っていられない。
 日本の消費者も農家も、中国から種子を買って、それでコシヒカリを栽培することに何の抵抗も感じないのだろうか?そうした危機感を持たないのだろうか? 日本にとってコメ栽培とはその程度のことでしかないのだろうか?「農業は先進国型産業である」「品種改良にみる農業先進国型産業論」などと言っていても、 日本がコメの品種改良の後進国になり、他国から種子を買い入れることになるかも知れない、そうした危機感が、農業先進国としてのプライドが感じられない。 このままでは、日本の農業は労働集約型の、汗を流すことに意義のある「発展途上国型産業」になってしまう。「土の臭いのしない人の意見は聞かない」少人数の特殊な人たちによる、 「生きることもなく、死ぬこともない」職業(百姓は生かさず、殺さず)になってしまう。
<コメ栽培の技術改革を>  インターネットの農業問題の掲示板で、農業関係者ではない者の意見に対して「土の臭いのしない者の意見は聞かない」と批判することがある。 農業問題を論じるには田畑で汗を流した者だけに発言権があるかのように言う。「鍬を持つ汗の匂いがしな」とか、部外者の発言に関しては「学者の戯言」「理論のための理論」などと表現し意見を無視する。 そこには「農業は労働力集約型の発展途上国型産業だ」との意識があるものと思われる。けれども、日本の品種改良の成果を振り返ってみれば、そしてアメリカの産学協同路線を見れば、「農業は先進国型産業である」ということが理解できるはずだ。
 現在、コメ自給率は100%になっている。しかしこれは高い関税に守られてのことなので、いずれは関税率は引き下げられ、コメの輸入自由化が始まるだろう。 そうなる前に、コメ作りを先進国型産業に変えれば良い。コメ作り産業、まだまだ技術改良の余地は多い。研究者への期待も大きい。 どのようなところに研究改良の問題があるか、アマチュアが思いつくだけでもかなりある。
 ハイブリッド米、遺伝子組み換え米については書いた。コシヒカリの直播はかなり前から実験されていながら実用化はされていない。氷点冷蔵に関しても実用化にはほど遠いようだ。 香り米もその効果は評価されていながら商売としては成功していない。インディカ米はチャーハンやカレーライスには適していると言われながら日本での栽培は進まない。 IR5、IR8などは東南アジアで期待されながら栽培の面倒なことであまり成果が上がっていない、けれども日本でコシヒカリを栽培する事を考えるならば日本の農家では十分な成果があげれられると思う。 こうした技術を組み合わせて、コシヒカリよりもうま味は落ちても生産性の高いコメを栽培し、香り米を加え、氷点冷蔵で収穫後のうま味を熟成させる、このようなことも研究の余地があると思う。
 日本人は農耕機具に関して多くの改良を施してきた。品種改良だけでなく生産方式、生産用具、品種の違うコメのブレンド技術など、日本の米作りに関しての技術改良の余地はイッパイある。
 農業にコンピュータを活用した例としては、天候・気候を予測し、ライバル生産地の出荷予定日を予測し、こちらの出荷日をずらすことによって市場で高く取引できるよう、システムを組んでいる人たちがいる。 これは「農業は先進国型産業」の典型と言えるだろう。
 「土の臭いのしない者の意見は聞かない」と言い、農業を労働力集約型の発展途上国型産業にしておくか、それとも外部の意見を聞きながら、知識集約型の先進国型産業に育て上げていくか?
 とは言ってもそれぞれの農家にとって、先進国型産業であるよりも国からの補助金をたよりに汗を流す労働力集約型の産業であるほうがストレスもたまらず、気楽な農作業だと言えそうだ。 自給率向上、先進国型産業としての農業よりも、「鍬を持つ汗の匂いがする者同士」で汗を流しているほうが気楽だし、特に後継者不足の年寄りにとっては、日進月歩で進歩する技術を追いかけていくストレスの溜まる農業よりも、望ましい日本農業の姿であるに違いない。
*                      *                      *
<総合的な食料安定供給戦略の作成を>  このホームページでは「食料自給率を上げる方法は?」と題して書いている。日本の農業問題、食料問題に関してはこの他に「日本の農政はどうあるべきか?」とか「農業の後継者不足にどう対処すべきか?」とか 「都市と農村の所得格差をどう縮めるか?」など、多くの問題がある。そして、これらがこんぐらかって議論されている。 つまり「食料自給率を上げるには?」との問いに対して「農業の活性化」を主張したり、「自然環境保護のために農業は必要だ」とか「農業への補助金を増やすべきだ」といった、自給率向上とは違ったことに答えていることが多くみられる。
 自給率向上のためには何を為すべきか?農業後継者不足をどうするか?など、それぞれの問題に対して検討し、それらを総合的にまとめる必要がある。
 後継者不足に対しては「農業は儲かる」と印象づければ良い。そのためには補助金を増額するのも方法だ。農業の構造改革を主張するなら、「補助金を削除して自由競争を促進し、生産性向上を目指すべきだ」、が答えになる。 それぞれの問題に対しての答えは、それぞれ相反する答えになるかも知れない。それらを総合的に捉えて答えを出さなければならない。
 そのためにも「自給率向上には何が必要か?」をハッキリさせる必要がある。
<自由貿易とリスク分散と自給率>  食料の安定供給には「@自由貿易とAリスク分散とB自給率」がポイントになる。
 @自由貿易 当たり前のことだけど、議論する場合忘れがちになる。農水省のホームページ 「食料自給率の低下と食料安全保障の重要性」http://www.kanbou.maff.go.jp/www/anpo/sub13.htm には次のような文章がある。 ● 国内500万haに加え、海外に1,200万haの農地が必要 このような私たちの食生活は、国内農地面積(476万ha(平成14年度))とその約2.5倍に相当する1,200万haの海外の農地面積により支えられています。
 このため、農産物の輸入が行われなくなってしまうような場合には、大幅な食料の不足がひき起こされることとなります。
 つまり日本では食料自給率100%は不可能だということになる。だから海外から食料を輸入するということは避けられない。それには自由貿易が保証されなければならない。 保護貿易政策が台頭してくると食料安定供給が不安になる。政策担当者は自給地を広めようなどと考え、「大東亜共栄圏」などという幻想を抱くことになる。 従って日本が率先して関税障害を設けたり、保護政策を実行したりして、他国がそれに追従して保護貿易政策が大手を振るうようになると安定供給が不安になる。 当然のことであるにも拘わらず、忘れがちになる。
 Aリスク分散 農作物の収穫量は天候・気候に左右されやすい。「だから、自給率を高めよ」は間違っている。 「だから、供給地・供給国を多くせよ」が正しい。このことは「もう「尊農攘夷論」はやめにしましょうよ 安定供給のためには、自給率を下げること」と題して、 2001年5月14日に書いた。そしてリスクを分散させる関税率の工夫についても書いた。
 B自給率 今回書いている自給率とは、「外国の事情に左右されないで安定供給できる確率」と考えると理解し易い。 けれども、これは@自由貿易、Aリスク分散と組合わせた政策によってこそ効果がある。自給率を高めるために、関税率を高めたり、国内農業の保護政策を進めたりして、結果的に保護貿易政策をとったならば、他国も保護貿易政策を選択することになる。 日本だけ農業保護を行い他国の農業保護政策を批判するのは「身勝手なわがまま」だ。日本が率先して「国内農業の保護政策」から「自由化政策に政策転換」することによって、日本の食料安定供給は推進されることになる。
*                      *                      *
<NIRA報告書から> TANAKA1942bは「農業は先進国型産業である」との考え、すなわち「農業は日本のような先進国に適した産業で、研究開発に熱心な日本人にこそ適した産業だ」と考える。 「農業先進国型産業論」という考え方は「農業自立戦略の研究」(通称「NIRA報告書」)に書かれたのが最初ではないか、と思う。 「NIRA報告書」をまとめた叶芳和氏が農業問題に発言しなくなってから、「農業先進国型産業論」は聞かれなくなった。「NIRA報告書」の姿勢を引き継ぎながらも、そこでは扱われなかった側面から、日本の農業を考えようと思っている。
 「NIRA報告書」で叶芳和氏等が農業をどのように考えていたか?以前にも「品種改良にみる農業先進国型産業論」で取り上げたのだが、報告書の初めの部分を引用しよう。
 日本農業が直面している高価格、過剰供給(生産調整)、低自給率等の諸困難は、解決可能な課題だと考える。さらに、諸外国の農業者にわが国市場へのフリー・アクセスを与えることも可能だと考える。 農業は先進国で比較優位をもちうる産業である。日本は先進国であり、農産物の輸出国にさえなれる潜在的条件をもっている。この条件をいかに生かすかが重要である。技術革新と規模の利益を実現させるシステムを設計することが肝要である。(中略)
 農業をいかなる産業と把握するかで、農業に対する政策体系は異なる。農業を「後進的な産業」ととらえた場合、国内の自給体制の維持をめざす限り、過保護農政に走ることになる。われわれは、農業は研究開発ならびにヒューマン・キャピタル(人的資本)の蓄積が他産業以上に重要であると考える。 それ故、農業は本来なら先進国で比較優位をもちうる産業であり、最も「先進国型」の産業であると考える。輸入制限がなくても、わが国で農業が発達する条件が潜在的にはあると考える。
<農地売買の自由化を>  「開発独裁」という言葉がある。発展途上国で政府が協力な権力によって経済発展を推し進めるために、独裁的な制度を設けることだ。 東南アジアの一部の国で、独裁的な権力で政府が経済成長を推し進めた国がある。独裁という言葉に抵抗を示す人も、経済成長のためならば致し方ない、との考え方をする人もいる。
 これは発展途上国でのこと。ある程度経済が成長すると、独裁ではなく、企業の自由な活動が経済を成長させる、との考えが強くなる。 日本の場合も、終戦直後は「経済安定本部」を設けて、政府が主導力を発揮して経済を建て直すことに成功した。その後、ドッジライン以後、民間主導の経済体制になった。
 この例は、発展途上国型経済から先進国型経済に移行したと考えられる。産業界が幼稚な時期には政府の保護政策が有効な場合もあるが、産業界が成長してくると政府の保護はむしろ成長にとって邪魔になることが多い。 そこで、日本の場合は「官に逆らった経営者」が出てきた。
 農業もこうした例を参考に考えると、これからは「先進国型産業」として、政府の保護・干渉を少なくして、自由な企業活動を促進する政策に転換すべきだと考える。 「先進国型産業」への転換を促す政策の主要なものが、「農地売買の自由化」と考える。
 農地売買を自由化することによって、@その土地を一番有効に活用できる自信のある者が高い入札価格を示すことになる。 その土地から、一番収益を上げる自信のある個人あるいは企業がその土地を購入することになる。高い価格で購入した企業が、その土地を有効に利用できないからと言って何も利用せず、遊ばせておくことは考えられない。 もし、思ったほど利用できないとなったら、その土地を売りに出し、二番目に有効利用できる自信のある個人・企業がその土地を購入することになる。 その土地にとっても一番有効に利用できる自信のある個人・企業が保有するのが良いことだと思う。土地売買を自由化することによって土地の資産価値が上がり、担保価値が上がり、農業経営の資金手当の手段が増えることになる。 売買が自由にできないと、有効利用できない者が何時までもその土地の所有者になっていて、土地が有効利用できないで、遊ばされることになる。
 A土地を所有しながら、農業後継者がいなくて土地を遊ばせている人、本当は農業を止めたいと思っている人は、農地を売り、その代金で他の事業を始めたり、あるいは老後の生活資金にすることもできる。 この場合、農地売買が自由化されていれば購入希望者が多くなり、売却代金が高くなる期待が持てる。つまり、この場合は農業を止めたいと思っている人にも「農地売買」は喜ばしい制度、と言うことができる。
 土地の売買を不自由にして、人を農地に縛り付けておく制度は「農民は生かさず、殺さず」の制度に近いものだ。「政府の関与はなるべく少なくして、自由な生産活動を保証する、先進国型の産業制度に変えるべきだ」と考える。
 「労働力集約型産業」から「知識集約型産業」(「先進国型産業」)へ政策変更すべき時期に来ていると思う。そして、その具体的な政策の第一歩が「農地売買の自由化だ」とTANAKAは主張する。
(^o^)                  (^o^)                  (^o^)
<主な参考文献・引用文献>
『農業自立戦略の研究』(通称「NIRA報告書」)                総合研究開発機構 1981. 8. 1
『コシヒカリの直播栽培』             姫田正美・今井秀昭・井村光夫 農山漁村文化協会 1999. 3.31
『農業技術を創った人たち』                      西尾敏彦 家の光協会    1998. 8. 1
『古代からのメッセージ』 赤米のねがい                安本義正 近代文芸社    1994. 3.10  
『日本の食料問題を考える』                伊藤元重+伊藤研究室 NTT出版      2002.10.17
( 2008年2月25日 TANAKA1942b )
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食料自給率を上げる方法は?
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