時代にあわせたIT事情

第27日 野辺地−蟹田

1995年3月16日(木) 参加者:安部・安藤・奥田・鈴木(竜)

第27日行程  野辺地にある「大万旅館」を早朝6時に出る。まだ完全に日は昇っておらず、周囲は薄暗い。今日の目的は夏泊半島であるが、半島を1周するバスは存在しないので、間違いなく「歩こう会」の活動になる。野辺地駅では早朝から駅弁を販売しており、朝食用に購入する。ところが売店に残っていた弁当は3つだけ。私と鈴木クンが弁当にありつけなかったが、売店のおばさんは駅近くの製造元を教えてくれ、そこに行けば入手できるという。鈴木を伴って線路沿いの道を少し青森方面に歩くと、伯養軒野辺地営業所が目に入る。事務所に入り、駅売店で教えられたと言うと、出来たての「ほたて弁当」(550円)が運ばれてきた。調整印は自分で押したのだから間違いない。まだ暖かい「ほたて弁当」を持ち帰ると、安藤クンが羨ましそうにしている。駅弁は作り置きするのが通常だから、ほかほかの駅弁は貴重だ。野辺地始発のため、既に入線していた6時41分の青森行き521客車列車に乗り込み、早速包みを開いた。
 小湊には6時59分に到着。野辺地からの客車列車の旅もわずかに18分で終わり。ここからはしばらくバスと徒歩の旅になる。駅前に出ると、待ち合わせたかのように東田沢漁協前行き青森市営バスがやってきた。行政上では小湊町であるが、この辺りも青森市域に含まれるのであろう。青森市営バスは驚くべきことにバスカード方式を採用していた。バスカードとは、オレンジカードのバスバージョンであり、一定金額のプリペードカードをあらかじめ購入し、下車時に運賃箱に備えられた機械に挿入すれば、運転手の操作により、乗車した運賃相当額が差し引かれるというもの。平塚に本社のある神奈川中央交通が全国に先駆けて導入したシステムなので、私自身は珍しくもなかったが、全国的にはまだ普及したシステムではない。それを青森の公営バスが導入しているというのは意表をつかれた気がする。
 小湊駅前7時15分の東田沢漁協行きバスで夏泊半島に突入。夏泊半島を一周するバスがないことは、昨夜のうちに平内町役場で確認した。町役場によると、夏泊半島の先端にある大島へ行くためには、このバスで東田沢まで行けばよいとのことであったが、運転手に確認すると終点まで乗って行けばよいとのこと。東田沢までよりも10円だけ運賃が高い560円を払って終点の東田沢漁協前で下車。大島までの4キロは徒歩に頼るしかない。
 黙々と大島を目指して歩き始めると、近くにはキャンプ場や海水浴場がある。夏場だけ多くの人々がここへ泊まるから夏泊というのであろうか。今は春なので、ときどき釣り人を見掛ける程度だ。
夏泊崎・大島  大島は夏泊崎と橋で結ばれており、小高い山の向こうには大島灯台が待ち構えている。折角なので灯台を目指すことに決定。山道を登り始めると汗が吹き出てくるので着ていたコートを脱いで手に持つ。地図ではすぐのように思えた灯台であるが、灯台までの道は登り降りを繰り返す。白い小さな灯台にたどり着いたときにはへとへとになっており、皆その場に座り込んでしまった。それでも、目の前には津軽海峡が広がり、さわやかな風が吹き抜けて気持ちがいい。1時間近くも灯台で憩いだ。
 夏泊半島の西海岸には、大島から5キロ程の油目崎から青森市営バス茂浦線があることも確認済みなので、再び黙々と歩く。途中の食料品店でパンとコーヒーを買って店先で昼食。季節外れの旅行者に女将さんが話し掛けてくる。
「夏場は海水浴やキャンプに来る人で夏泊半島の道路は大渋滞。ここにはゴルフ場もあって、この前はジャンボ尾崎もプレーしていったのだから」
夏泊半島には青森シーサイドカントリークラブもあるのだが、にわかに信じがたいほど今はひっそりしている。
 油目崎停留所を見過ごして稲生という集落から小湊駅行き青森市営バスを捕まえる。線名にもなっている茂浦峠を超えて国道4号線に出たところで下車。ここからバスは夏泊半島の付け根を横断して小湊駅に向かうので、浅虫温泉方面に向かって歩くことにする。バスもあるのだが運悪くこの時間帯は空白。左手には東北本線が並走する国道4号線は別名陸羽街道。陸羽と聞くと陸羽東線・陸羽西線を連想してしまうので違和感がある。20分も歩くと右手に青森湾が広がり足取りも軽い。途中、白根崎に寄り道して裸島や鴎島を眺め、浅虫温泉駅にたどり着いたときは15時をまわっていた。
浅虫温泉  駅前ロータリーには温泉の街らしく、温泉の噴水が湧いていた。周囲は観光ホテルや旅館が建ち並んでいるが、安く入浴できる公衆浴場もあるに違いない。温泉街に来て素通りするのももったいないので入浴を試みる。浅虫郵便局で旅行貯金のついでに温泉に入れるところがないかと尋ねてみると、駅から徒歩7分程の公衆浴場「裸湯」を教えてくれた。
 「裸湯」は東北本線よりも内陸に位置し、一見すると一般の銭湯のようであるが、きちんと温泉の効用の説明書きが掲示されていた。地元の人は100円の入浴料に対し、旅行者は200円で料金に差を付けているのも特徴である。ドライヤーを使うと10円加算というのには恐れ入るが・・・。
 可もなく不可もなくという印象をもった浅虫温泉の入浴を済ませ、浅虫温泉駅前16時ちょうどのJRバス浅虫線で青森駅を目指す。この区間はJRバスが約30分間隔で運行されており、鉄道よりも利便性が高い。おまけにバスの方が外周ルートを走るので好都合である。青森駅前には16時45分に到着。
 青森でのポイントはかつての青函連絡船発着場に展示されている「八甲田丸」である。私自身はかつて訪れたことのある施設なので無視しても良いのだが、それではあまりにも自分勝手過ぎるし、外周の旅としても時代が時代ならお世話になっていたであろう青函連絡船に敬意を表して訪問する。入館券は「八甲田丸」の単独券と少し離れたところにあるピラミッド状の観光物産館「アスパム」とのセット券が販売されていたが、時間的に「アスパム」まで足を伸ばす余裕はない。「八甲田丸」の単独券を購入すると11月から3月は冬季割引が適用されるとのことで通常800円の入館券が700円になる。「八甲田丸」は青函連絡船の往年の姿を伝える実物の博物館で展示物も充実している。青函連絡船の運航シュミレーションゲームもあり、半日程時間を費やす価値のある施設であるが、今後の予定もあるので1時間少々で退散する。
 青森駅18時05分発の快速「海峡15号」に発車間際に乗り込むと帰宅途中の高校生で混雑しているので驚く。「海峡」といえば青函連絡船に代わって本州と北海道を結ぶ観光色の強い連絡鉄道という印象をもっていたのだが、意外にも地元の足として根付いているようである。近くにいた高校生の男女がSEXの練習をしようなどとささやき合っているのには参ったが・・・。
 私たちは18時34分の蟹田で下車。例の男女を含めてほとんどの高校生も蟹田で下車し、さすがに北海道からの通学者はいないようである。
 今宵の宿は駅から徒歩15分の「佐々木屋旅館」。素泊まり3,000円の宿にしては珍しく若い女性の宿泊客がおり、安部クンが声を掛けに行ったが、ナンパは失敗した模様。
「蟹田へは両親と一緒に親戚の法事に来ただけだって」
両親が一緒でしかも目的が法事であれば、安部クンならずともナンパは成功しないであろう。

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