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  紫花人形  序の章=ゆかり花)


KISEI  YUKARIHANA    MUSEUM  OF  ART 


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女性が大人と成り他家への嫁入りは運命の岐路となります。嫁として最初の務めは隣近所への挨拶廻りです。姑が家紋の付いた提灯で夜道を照らしながら花嫁を誘う姿は嫁の不安な気持ちに寄り添い願う優しい親心を感じます。 提灯が誘う花嫁の行く末が具足の明日である事を願っているようです。
人形には幼き頃から成人して迄の過去の人生を顧みて、未来への祈りと願いの姿が美しく物語られていました。 現実にある姿の琴を奏でる「白梅」、火鉢を囲んだ「雪割草」とか、 芝居や物語りの「鐘の音」,「十三夜」、生涯を省りみた「福寿草」、バスケット一つ「望月」の 姿に織り成す魂の煌(キラ)めきを観せていました。
掌に乗るような寸法の人形ですが写真に撮り拡大しても人形の美しい寸法は見事に狂いがなく変わりません。これは如何に人形の形態が確りしているかが解ります。 実在の舞台でも斯様な難しく美しい表状を人形で演じています。有り得無いような 魂の輝きを全ての人形が語り演じています。 写真では表現されてない感情も想像して女性の愛おしさ享受して下さい。


これは花嫁が親戚廻りをしている処です。もう陽も暮れて母親から提灯で道を照らしてもらっている情景です。花嫁は家から嫁ぎ、相手の家風に合うようにと願い。母親が提灯を灯すという事は、これからの道(嫁としての人生)を照らしている優しい親心です。昔の花嫁衣装は、親が細やかな金を貯めて、心を込めて作ったものでした。それぞれ、分相応に丹精込めて母親が縫ったものでした。心の隠(コ)もった衣装でした。

自分が立派に扱われる場所に居る事は、処を得たという事です。

昔の女性は着物が相手と自分が調和するよう、美しく質素で在るべく身繕ったものです。

母は「貴女が偉い人になる為に茶を習わしているのでなく、物事が観えるようになる為に習うのです。素晴らしい人の作品を観て謙虚な精神で素晴らしい事が耳に目に入る為に習わしています」と言っていました

母はどんなに遅くなっても「もう先生はお帰りか」と案じていました。

母は「お父さん」のする事は是が非でも立派だと子供には教えていました。