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やがて花嫁は歳老いた姑を労るように成っていきます。家庭に居て女性が家族を支えている健気で優しい姿がありました。嫁が羽織る薔薇色の綿入り半纏、厚めの肩掛け、姑は
小さく黒色の羽織、肩掛けに杖を持たせた姿です。嫁が姑の背中を支える手、姑の杖の角度に積年の安心感があります。 家族の運命を支えて生活していた自身の多難な人生があり、運命に気丈にも立ち向かう優しい女性の生き方を懐かしく想い出しています。「ゆかり花」「初時雨」は対になる作品です。
人形の芯は細い針金に奉書(和紙)を巻いて自在に形状を整えていました。戦時中に兵隊さんに慰問品として送呈した人形の芯に巻きつけた奉書に作者の哀感溢れる願文が書かれていました。一度も咎(トガ)められる事はなかったそうです。 人形の髪型は江戸時代から伝承された既婚女性の綺麗な丸髷です。大正時代には上流社会女性の気位を保つ様式であり、作者の育った環境にも丸髷姿が日常的でした。 終戦後までの女性は普段に和服を着て長い髪を結っていました。普段でも長い髪を結ぶ事が当たり前でした。現代では調髪する店舗を「美容院」と呼称しますが、戦前までは「髪結(カミユイ)」 でした。髪を結う事で女性は襟首が目立つので襟足(後頭部の髪の生え際)には着物の 襦袢に半襟を付けたりして気配りしたものでした。 現代に於いても礼服として和服を着用する現象を喜ばしく思います。紋付き羽織と言う言葉には気持ちが引き締まります。 婚礼で花嫁が着る綺麗な和服( 白無垢、打掛、振袖)に丸帯を結び島田髷に着飾る風習にも伝承の美しさを感じます。戦後暫(シバラ)くは街中で正月に日本髷を結った女性を観たものでした。 だが昨今通常の着物姿には、何か我国の伝統的な感覚と違い派手な着物が多く観られます、戦前迄の着物姿は随分と地味なものす。テレビや演劇の舞台でも奇抜な着物が時代感覚を変化さしている様に思われます。 昭和の初年頃、陸奥伯爵家の御女中(女性の使用人)皆が日本髷を結っていたので驚いたと話していました。 花嫁は家から家へ嫁ぎました。それが何か女性の運命となっていくようで、哀れです。結婚が不仕合わせな運命の始まりのような気がしました。 女性は歳の暮れ、丸髷に襷を掛けて、台所を駆け回ってい姿が美しく懐かしいものです。昔は何故か優しかったかと思うのです。人形には大正時代の風俗を出来る限り残して表現しています。決して誇張したものではありません。花のように、美しい姿が女の修行でした。 御陰様とは、何に縋(スガ)るかという事です。縋って何かを戴くという事です。 御陰の光をこの身に受ければ水晶玉が反射する如く光り輝きます。 文学とは「お経」の様なものであると思いました。小説「滝口入道」の文章にも人生が語り伝えられているものがあります。文章の語呂の中に「人生の美」が織りなされているように思われます。詩を読んでいると小説を読みたくなるものです。 展覧会は素朴な雰囲気でした。ある場所ではダイヤモンドが素朴である事もあります。 時と場所とを弁える事が教養です。此処では皆が自分の晴着を着るのが良いのです。 純朴な素直さが、賢い人と凡人との共感する箇所です。 |