(2021年3月23日) 高度400Kmの地球周回軌道にある宇宙機が地球大気に再突入するために必要な速度(減速度)を求めます。周回高度を遠地点とし地球表面が近地点になる楕円軌道の遠地点速度まで宇宙機の速度を落とせば地球表面に必ず達します。 数式はペリジキックとアポジキックで求めた式を利用します。近地点高度0kmで遠地点高度400kmの楕円軌道の近地点速度Vpと遠地点速度Vaを求めます。 Vp2= 2GME(ra/rp )/(rp+ra) Va=Vprp / ra ra=(RE+ha)=6.778×106 [m] rp=RE = 6.378×106 [m] 万有引力定数 G: 6.674 × 10-11 m3kg-1s-2 地球の質量 ME: 5.972 × 1024 kg GME=6.674×5.972×1013=3.986×1014 m3s-2 Vp2=2×3.986×1014×6.778/6.378/(13.16×106)=64.4×106 Vp=8.02×103 Va=8.02×6.378/6.778×103=7.54×103 [ms-1] 高度400kmの地球周回軌道速度vは次のように7.67 km/sでした。 v=(rg)1/2 =(GME r-1)1/2 v2=3.986/6.778×108 =58.8×106 v=7.67×103 [ms-1] 従って、必要な減速度は(7.67−7.54)×103 =0.13 ×103 [ms-1] 高度400kmの円軌道を回っている国際宇宙ステーション(ISS)から放れた宇宙ステーション補給機(HTV)は宇宙ステーションと同じ秒速7.67kmで周回しています。そして、HTVの小さなロケットを作動し、わずかに減速(130m/s)させると必ず地球大気に突入します。地球大気への突入角は突入楕円軌道が高度100kmの円軌道と交差する角度程度になります。この後HTVの突入角は数度から徐々に大きくなっていくでしょう。 HTVは揚力を出さないので楕円軌道の通りに突入します。スペースシャトルは三角翼を持っているのですが再突入に際しては揚力飛行はしていなかったようです。これは再突入を決めてから短い時間に予定の着陸地点に降りるためでしょう。 もし、再突入の始めから揚力飛行をして可能な限りゆっくり降りたらどうでしょうか。時間は掛かりますが重量よりわずかに小さい揚力を出し続ければ空気抵抗で減速し続けます。空気が薄いところでは発熱も酷くならないうちに減速できるでしょう。高度40Kmまで降りたときに水平速度がゼロに近ければ、後は自由落下でも加熱は許容できる範囲です。これは勇敢なスカイダイバーがアドバルーンで実証しています。 かって、JAXAで宇宙からの折り紙ヒコーキが計画されていたのですが、いつの間にか破棄されてしまいました。技術的に可能性があることをもっと説明すべきであったと悔やまれます。
(了) 戻る
|