慣性運動とは  

(2014年6月17日)


 種子島から静止衛星を打ち上げるH-UAロケットはロケットの2段目の燃焼停止の後そのまま飛行を続け赤道を越えるあたりで再着火を行う。2段目の燃焼停止の後「ロケットは慣性飛行に入りました。」とのアナウンスが流れる。

   この「慣性飛行というのは正しい表現か」と疑問が出されたことがある。慣性運動とはニュートンの運動の第一法則が示す運動である。ニュートンの運動の第一法則は、物体に何も力が働かないとき、その物体が静止の状態にあるときは静止を続け、運動している場合には同じ速度で直線運動を続けるというものである。

   2段ロケットが推力飛行を止めたとき、既に衛星速度に達しているので高度を保ち同じ速度で赤道上空に到達する。一見、上述の慣性運動のように見えるが、重力が働いているのでロケットは直線運動をしているわけではない。「慣性運動というのは正しい表現か」との疑問は当然である。

   物体に力が働かないとき、静止を含めて慣性運動というならば、自由落下も慣性運動の一つである。重力は力でないからである。推力を停止した2段ロケットは慣性運動に入ったのである。アインシュタインの慣性運動とも呼ばれるが、ニュートンの運動の第一法則は、「物体に何も力が働かない時、その物体は慣性運動を続ける」と修正すべきなのである。

   宇宙には星が存在するから重力(Gravity)は普遍的に存在する。重力(Gravity)はすべての物体に加速度運動を引き起こす。この運動を静止させるためには力が必要である。地球の表面では、この力がその物体の重さであり、重量である。自然は運動ありきなのである。

   全ての物体に対し、自然の決める運動が慣性運動である。慣性運動に逆らうには外力が必要である。この外力に釣り合う力が慣性力である。慣性力はその物体の質量に比例し、外力に逆らうことによる運動の変化の大きさ、つまり加速度に比例する。F=mαである。外力Fは慣性力mαに等しい。これがニュートンの運動方程式である。

  自然は普遍的に重力が存在するので、ニュートンの運動方程式は重力場での運動方程式として修正されなけらばならない。

(参考)
物理用語の使い方は出来るだけ誤解を生じさせないものであるべきだが、一度内容を正しく把握してしまうと、少しぐらい用語の不適切さがあっても気にならなくなる。最先端を行く物理学者が「質量と重さは同じようなもの」と言って一般読者に説明しているのも、本人は気にならないからであろう。

しかし、一般読者としては出来るだけ真理を誤解せずに理解するために用語の適切さは望みたいものである。

類似の例で、自然界に存在する「4種の力」は「4種の相互作用」とすべきであろう。


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