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ハーディ・ガーディ

 

3574

3574 {『ヴィエル弾き』 楽師たちの集い の破片? ジョルジュ・ド・ラ・トゥール 油彩カンバス 85,5 x 58.5 cm
ブリュッセル ベルギー王立美術館蔵  ラ・トゥール展  2005・4・12入手   
ハーディガーディ

 

3575

3575   犬を連れたヴィエル弾き ジョルジュ・ド・ラ・トゥール 油彩・カンヴァス 186 x 120 cm
ベルグ(フランス)市立美術館  ラ・トゥール展  2005・4・12入手   
ハーディガーディ

 

 

のカデンツ

 

楽器においての ヒエラルキー というのも変ですが 

ハーディ・ガーディは ↑ 辻音楽師が演奏していることも多く

どちらかといえば ノーブルというよりは 

低い階級に属する楽器のように思われます。

これは半機械的な楽器で 弓の代わりに回転板が回って弦を押さえる仕組み。 

鍵盤も少しついているので いくらか音階は出せるようです。

 右手でハンドルを回し、左手で鍵盤を押さえる演奏スタイル。

偶然

 NHK 『世界ふれあい街歩き』 という番組を観ていたら

プラハの旧市街の広場で 辻音楽師の老人が

このハーディ・ガーディの弾き語りを していました。

その味わい深いオリエンタルな響きに すっかり聞きほれてしまいました。

老人は ハーディガーディの うなるような低い音にあわせて 

まるで吟遊詩人のように歌います。

「その楽器は、なんですかぁ?」

「これはじゃな、ニニェラ というんじゃよ。 

英語では ハディ・ガーディ、仏語では ヴィエン・ラ・ルー

イタリア語では ラ・ギロンダ  スペイン語では サンポニエ・・・じゃったかな」

「もともとは 中東の楽器でな、たしか9世紀ごろに伝わってきたらしいんじゃ。」

このご老人 なかなかの博学です。

番組でも この楽器は ハンドルを回し、連動した木の円盤が弦をこすって音を出す 

との説明がありました。

こんなふうに 外国の街をぶらりと歩き

そこで出会った人と自由に会話できたら どんなに楽しいことでしょう。

 

 


 

 

さて もう一枚

↓この絵には 民衆の聖母 という題名がついています。

宗教画にハーディ・ガーディってめずらしい と思ったのですが

なるほど 民衆の聖母 ということなので

あえてハーディ・ガーディを登場させたのでしょうか。

右下の黄土色の衣装の男性が、奏でています。

 

3773       

3773   Firenze Uffizi    Federico Barocci (Urbino 1535-1612)  Madonna of the People
datata 1579  olio su tavola  cm 359 x 232    2005・9・30入手   
ハーディガーディ

 

 


 

 

 

せっかく が 

ハーディガーディのヒエラルキーについて 仮説を立ててみたというのに

 

楽器においての ヒエラルキー というのも変ですが 

ハーディ・ガーディは ↑ 辻音楽師が演奏していることも多く

どちらかといえば ノーブルというよりは 

低い階級に属する楽器のように思われます。

 

これを覆すようなカードをゲットしてしまいました。

あらら 天使が しっかりハーディガーディを奏でていらっしゃいます。 

ということは 天上の音楽を奏でる高貴な楽器 でもあるのですね。 

たいへん失礼いたしました。

 

5578

5578   Zavattari   Ange et instrument de musique   Cathedrale, Monza (イタリア)
2008・11・24入手    
ハーディガーディ

 

 

 


 

 

↓ フランス オーヴェルニュ地方 カンタル県 の アンティークカード

中南部の高地にあり、カンタルチーズで有名です。

紀元前にまで遡るといわれる 歴史の古いチーズですが 

セミハードで とってもおいしいそうです。

って 何の話?

 

4858

4858  Edition speclale des Produits Eclipse  Cirage el tous Produits d'ebtrelien  Paril − Lyon
2008・1・11入手    
ハーディガーディ 

 

 


 

 

<追記>

 

サンティアゴ・デ・コンポステーラの大聖堂にある 栄光の門 の展示室を作成していたとき

参照 → これはどんな場面 Scene10 栄光の門

↓ こんなふうに 一つの楽器を 二人で演奏するスタイルもあるんだなと びっくりしました。

カード情報では オルガニストルム という楽器。

 

   

    6721

6721  Elderly musicians with an organistrum in the keystone tympanum of the archivolt 
at the top of the tympanum on the Portico of Glory  2012・4・9入手    オルガニストルム 

 

 

 

 たまたま サロンノの奏楽天使の本を 眺めていたら  ↓ この楽器を発見。

これは 栄光の門 の楽器と ほぼ同じだわ と思いました。

この本での イタリア語の注釈では la ghironda (ギロンダ) となっていますが

英語の注釈では a hurdy-gurdy!

やっぱり、ハーディガーディ! これで裏がとれました(笑)

中世では 二人がかりで 奏楽していたのですね。

 

 

 

  参照 →   サロンノの奏楽天使大集団   

 

 

 

↑ 冒頭のテレビ番組の プラハのご老人が言っていたように 

国によって名称も さまざまみたいなので

ウィキペディアで ハーディガーディを 検索してみたところ

長年 手探り状態だった この楽器の全容を

ようやく知ることができて 目からうろこ。

ウィキペディアの記事にそって

これまでの ハーディガーディの整理をしてみたいと思います。

 

ハーディ・ガーディは 弦楽器の一種で 

貼られた弦の下を通るロジンを塗った木製の回転盤が 

弦を擦ることで音を出す。

回転盤はヴァイオリンの弓と同じような機能を果たしているが

ハンドルで操作されており 従って 

ハーディ・ガーディは一種の機械仕掛けのヴァイオリンともいえる。

胴は ギターやリュートの形をしたものが多い。

旋律は鍵盤を使って演奏される。

ほとんどのハーディ・ガーディには旋律弦の他にドローン弦があり

旋律と同時に常に持続音が響いている。

同じように ドローン弦をもつバグパイプ と似たところがある。

 

 

前述のテレビ番組で ご老人が演奏してくれた ハーディ・ガーディの音の感想を

(もう まったく記憶にないのですが・・・)

うなるような低い音 とか オリエンタルな響き とか 書いてあるのは

きっと ドローン弦のせいなんですね。

 

 

ハーディガーディは 西ヨーロッパにおいて 

11世紀以前に発生したと考えられている。

最も古い形態のひとつは 

オルガニストルムと呼ばれる ギター型のボディに

鍵盤(音域は一オクターヴの全音階)が設置された

長いネックを持つ 大型の楽器である。

オルガニストルムは

駒を共有する一本の旋律弦と ニ本のドローン弦をもち

比較的小さな回転盤を持っていた。

大型の楽器のため 演奏は2名で行われ 

一人がクランクを回し もう一人が鍵を引き上げた。

この鍵を引き上げるという操作は難しく そのため オルガニストルムでは

ゆっくりとした旋律しか演奏できなかった。

オルガニストルムのピッチ(音高)は ピタゴラス音律で調整されており

修道院や教会での合唱音楽の伴奏楽器として 主に使用されていた。

オルガニストルムの最古の表象物の一つとして

スペイン ガリシア地方の サンティエゴ・デ・コンポステーラ にある

栄光の門の 二人のオルガニストルムを奏する彫像 があげられる。

やったぁ〜!

6721

6721  Elderly musicians with an organistrum in the keystone tympanum of the archivolt 
at the top of the tympanum on the Portico of Glory  2012・4・9入手    オルガニストルム 

 

 

ルネサンス期には ハーディ・ガーディは バグパイプと並んで高い人気があり

ハーディ・ガーディの特徴である 短いネックと

角ばったボディー 湾曲したテール という形を獲得していった。

絵画に描かれた楽器に 『うなり駒』 が登場するのも この時期からである。

 『うなり駒』 は ドローン弦の下にある非対称形の駒で

回転盤の速度があがると 駒の足の片方が持ち上がって響板から離れて振動し

ブーンという うなりを発生させる。

うなり駒は トロンバ・マリーナという単弦の擦弦楽器から借用されたと考えられている。

ヒエロニムス・ボスの 快楽の園の楽器は うなり駒を持つ最古の画像である。

 

 

 

やったぁ〜!

 

 7158

7158  BOSCH  El Jardin de las Delicias Fragmento  The Garden of Delights: Detail
MUSEO DEL PRADO  2012・12・19入手   
楽器

Scene4 ボッス音楽地獄 

 

 

 

後期ルネサンスの  ハーディ・ガーディ には 2つのタイプの外形が発達した。

一つは ギターに似たもので 

もう一つは リヴを持つリュートに似た丸いボディーのものである。

リュート型ボディーは 特にフランスの楽器に多くみられる。

 

17世紀末になると 

音楽の趣味の変化と 多声を同時に奏することができる楽器が好まれるようになり

ハーディ・ガーディは 最下層の地位に追いやられていく。

その結果 例えばドイツ語では 

農民のリラ を意味する バウエル・ライアー 

乞食のリラ を意味する ベットラーライアー などと呼ばれる。

 

 

3574

3574 {『ヴィエル弾き』 楽師たちの集い の破片? ジョルジュ・ド・ラ・トゥール 油彩カンバス 85,5 x 58.5 cm
ブリュッセル ベルギー王立美術館蔵  ラ・トゥール展  2005・4・12入手   
ハーディガーディ

 

 

  が 初めてこの楽器を知ったのが この ラ・トゥールの絵だったので

楽器のヒエラルキー などと言ってしまいましたが

 出自は 中世に誕生した ピタゴラス音律で調整された 高貴な楽器だったのでした。

 

 

逆に 18世紀には フランスのロココ趣味で 田舎風がもてはやされたことから

再び ハーディ・ガーディが宮廷に持ち込まれ 上流層の間で人気を博した。

この時期に 現在もっとも一般的なハーディ・ガーディの形である 

6弦の ヴィエル・ア・ルーが確立した。

2本の旋律弦と 4本のドローン弦をもち

ドローン弦を鳴らしたり消したりすることで さまざまな調に対応できるようになっている。

 

ウィキペディアには

ハーディガーディは 西ヨーロッパにおいて 11世紀以前に発生したと考えられている。

とありますが 

昔 テレビで見た プラハの辻音楽師の ご老人も

「もともとは 中東の楽器でな、たしか9世紀ごろに伝わってきたらしいんじゃ。」

と おっしゃっていました。

「これはじゃな、ニニェラ というんじゃよ。 

英語では ハディ・ガーディ、仏語では ヴィエン・ラ・ルー

イタリア語では ラ・ギロンダ  スペイン語では サンポニエ・・・じゃったかな」

ということでしたが 確かに ウィキペディアにも

ドイツ語では ドレーライアー  イタリア語では ギロンダ   フランス語では ヴィエール(ラ ルー)  

ハンガリー語では ニェニェーレ チェコ語ではニニェーラ スロバキア語では ニネーラ

です。

う〜〜ん あのご老人 本当に博学!

すごいな〜〜。

 

 


 

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