独断的JAZZ批評 857.

ULF MEYER & MARTIN WIND
楽器を通した会話が温かくて、切なくて、心地よい
"AT ORPHEUS THEATER LIVE MAY 2012"
ULF MEYER(g), MARTIN WIND(b)
2012年5月 ライヴ録音 (LAICA : LC 07577)


今までにギターリストがリーダーのアルバムをどれだけ紹介してきたかを調べてみたらわずか8人だった。340人のピアニストの数に比べるとあまりにも少ない。普段からピアノ中心で聴いてきたことがそのままの数字となって反映されている。
だからというわけではないがギター・アルバムにもちょっと目を向けてみた。本アルバムはベースのMARTIN WIND(1968年ドイツ生まれ)買いである。リーダー・アルバム"GONE WITH THE WIND"(JAZZ批評 176.)では、「MARTIN WIND、ポストGARY PEACOCKを担う逸材として要注意」と書いている。
一方のULF MEYERは初めて聴く。ドイツの中堅ギターリストだ。
ライナップされた選曲を見ると新旧のスタンダードやカバー曲も配置されていて楽しみだ。オリジナルは
AのMEYER作とBのWIND作の2曲となっている。

@"THE OLD COUNTRY" NAT ADDERLEYの書いたとても素敵な曲。こういう選曲をすること自体が憎いね。MEYERのブロック・コード連発もゾクゾクさせてくれるし、二人のコンビネーションも抜群!こりゃあ、最高でしょう!
A"GANDHI" 最後にYouTubeのURLを記しておいたが、そのライヴ映像はこのアルバムのこの曲そのものなのでお楽しみいただきたい。WINDはハイトーンでも目を瞑って弾いているが、音程にも揺るぎがないのは流石。
B"RAINY RIVER" ミディアム・テンポの牧歌的な雰囲気がいい。
C"DON'T KNOW WHY" 
NORAH JONESの大ヒット曲がさりげなく入っているのがいいね。良く歌うWINDのベース・ソロが最高!
D"JUST SQUEEZE ME" 
大御所、D. ELLINGTONの曲。WINDのアルコ奏法も楽しい。
E"LITTLE ANNA" 
偉大なヨーロピアン・ベーシスト・N. H. O. PEDERSENの曲。軽快なボサノバ・タッチ。
F"FRAGILE" 
今度はSTINGの大ヒット曲。ベースがテーマを奏でるが、正確な音程が耳に心地よい。カバー・アルバムとしてKENNY BARRONの"THE MOMENT"(JAZZ批評 26.)やYARON HERMANの"VARIATIONS"(JAZZ批評 670.)も忘れられない1枚。
G"BLUES INTHE CLOSET" 
アメリカの偉大なベーシスト・O. PETTIFORDの曲。グイグイ前に進むドライヴ感満載の4ビート。こういうブルースが1発入っているとアルバムがグッと締まる。ここでもWINDはアルコでソロを執っている。これが上手いだなあ!
H"MY FUNNY VALENTINE"
 ミディアム・テンポの4ビートで始まる。二人の会話に心が温まる。

電子楽器を駆使した仰々しい演奏ばかりが能じゃない。
デュオ演奏で音数は少なくても密度が濃い音の小宇宙。ベテラン奏者の楽器を通した会話が温かくて、切なくて、心地よい。やはり、こういう演奏を聴くと心からほっとするということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2014.03.04)

試聴サイト : http://www.martinwind.com/recordings/MeyerWindLive2012/Credits.htm
          http://www.youtube.com/watch?v=d5eQqFjHXcg#t=166



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