独断的JAZZ批評 830.

THOMAS ENHCO
音楽は国を問わず、老若男女を問わない共通言語
"JACK & JOHN"
THOMAS ENHCO(p), JOHN PATITUCCI(b), JACK DEJOHNETTE(ds)
2012年1月 スタジオ録音 (EIGHTY-EIGHT : EECD-8802)


THOMAS ENHCOのアルバムは"THE WINDOW AND THE RAIN"(JAZZ批評 688.)を紹介しているが、「フランスに現れた新たな才能」と表現したくなるほどの多才ぶりを見せつけてくれた。ピアノのほかにバイオリンまで流暢に弾きこなしてしまうんだから・・・。そのアルバムには日野皓正(tp)や仙波清彦(percussion)がゲスト参加している。
本アルバムはベースにPATITUCCIとジャズ界きっての名ドラマー・DEJOHNETTEのトリオ。初顔合わせでスタジオでの録音時間は6時間。ぶっつけ本番でほとんどがファースト・テイクだったという。

@"GASTON" この曲、愛犬が作曲したらしい。ピアノの前で膝に乗せていたワンコが突然、鍵盤に飛び乗って何歩か歩いた時の音を採譜して曲を作ったそうだ。タイトルはワンコの名前らしい。CHICK COREAの"MATRIX"がテーマ崩しで挿入されていて、「あれっ!?」と思った。ピアノの一音一音が瑞々しい。ここでは手数の多いDEJOHNETTEのドラミングも聴きもの。
A"I'M OLD FASHIONED" 
ベースのウォーキングが躍動していていいね。ピアノの音色がとても良い。
B"A TIME FOR LOVE" 
JOHNNY MANDELの書いた美しいバラード。若いのに歌心がある!この曲というと、僕はKENNY WERNERとJENS SONDERGAARDのデュオ(JAZZ批評 509.)を思い出してしまう。併せて聴いてほしい演奏だ。
C"EBONY" 
DEJOHNETTEの書いた手の込んだ曲だが、ここではハードに演奏している。ウォーキングだけで躍動感が湧いていくるベース、シンバルレガートだけで躍動感が湧いていくるドラムス、どちらもジャズに欠かせない要素だ。アルコ奏法を交えながら最後は高潮感を増して終わる。
D"JACK & JOHN" 
勿論、これはDEJOHNETTEとPATITUCCIのことだ。録音が素晴らしいこともあるのだけど、このENHCOの粒立ちの良いピアノは良いピアニストの条件を備えている。後半にはDEJOHNETTEのキレの良いドラム・ソロが用意されている。
E"PANNONICA" 
T. MONKの曲。ミディアム・テンポで、テーマの後はベース・ソロ。PATITUCCIはどちらかというと弾き過ぎるタイプだけど、このくらいならグッドだ。太いウォーキングに繊細なシンバル。これがミディアム・テンポだとノリノリの雰囲気が充満する。
F"ALL OR NOTHING AT ALL" 
スタンダード・ナンバー。アップ・テンポで躍動し、突っ走る運指に乱れなはい。後半のインタープレイからエンディングまでがスリリング。
G"ETUDE OP. 10, NO.6"
 フレデリック・ショパンが書いた練習曲だという。確かにクラッシックなのだけど、美しいバラードになっている。最後は激しく燃え上がって終わる。

フランスの若手ピアニスト(25歳)にアメリカのベテラン・サポート陣(DEJOHNETTE、71歳とPATITUCCI、53歳)。
この3人が一発勝負の録音を任されても、これだけのアルバムに仕上がってしまう凄さ。
音楽は国を問わず、老若男女を問わない共通言語ということを再確認させてくれるということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2013.10.27)

参考サイト : http://www.youtube.com/watch?v=Cd34E-YxZVo



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