独断的JAZZ批評 805.

JUAN ORTIZ
土の匂いのする埃まみれみたいな演奏で、これはこれで味がある
"LIFE IS TOO SHORT"
JUAN ORTIZ(p), DAVID RUIZ(b), BORJA BARRUETA(ds)
2012年5月 ライヴ録音 (ERRABAL JAZZ : ER 057)


2〜3月にかけて注文したアルバムが予約を必要とするアルバムばかりだったので、繋ぎに購入したのがこのアルバムだったのだが、これも結局1か月以上待たされてしまった。
このJUAN ORTIZはスペインのピアニストで硬派だという。スペインの硬派のピアニストというとMARTI VENTURA(JAZZ批評 287.)が思い出される。"MY ONE AND ONLY LOVE"や"NATURE BOY"を硬質さとリリカルさを併せ持つユニークな演奏で楽しませてくれた。機会があれば一聴をお勧めしたい。
翻って、このアルバムはジャズ・クラブでのライヴ盤である。ライヴならではのリラックスした熱気が伝わってくるだろう。

@"NO WAY" しっとりとした出だしだ。と思っているとブロック・コードによるモーダルな激しい演奏に一変。その後、重厚で硬派な4ビートをズンズン刻んで突き進む。ヨーロッパ的な甘さや叙情的雰囲気はまるでない。
A"THANKS MR. BENNY" 
ミディアム・テンポの心地よい4ビートを刻む。途中で倍テンになりそうでならないのでジリジリしていると直に倍テンに落ち着く。その気の持たせ方がいいね。
B"OBSESSION" 
C"FOUR POINTS OF VIEW" 
D"A DOG CALLED JAZZ" 
僕が陶芸でお世話になっている窯元・楡窯で飼っているラプラドールの名前が「ジャズ」 今は老体となったそのワンコに捧げたい。途中からテンポ・アップして元気に走り回るワンコのようだ。
E"ANOTHER UPHILL MORNING" 
この曲なんかは以前紹介したSTEVE KOVENの"20"(JAZZ批評 799.)のアプローチの仕方によく似ている。
F"MOMMENT'S NOTICE" 
J. COLTRANEの曲。流麗、華麗というよりは無骨な感じのするアプローチで、まさに、土の匂いがするのだ。
G"LIFE IS TOO SHORT" 
手数の多い左手のブロック・コードが重厚さを演出している。
H"HOUSE OF THE RISING SUN"
 やはり、この演奏で決まりでしょう!
僕らが若かりし頃に流行ったアニマルズの「朝日のあたる家」をジャズ・プレイヤーが演奏をするのは珍しい。普通は同じ朝日でも「朝日のようにさわやかに」でしょう?この曲をやるっていうことがこのグループの持ち味になっているのだ。やんやの喝采も頷ける。

スペインのジャズっていうのは、所謂、ヨーロピアン・テイストというのとは少し違う。美メロ、リリカルで透明感の強いという感じはない。むしろ、土の匂いのする埃まみれみたいな演奏で、これはこれで味がある。これは先に紹介したMARTI VENTURAのトリオにも共通したフィーリングだ。
このグループを象徴しているのがHの「朝日のあたる家」の演奏だろう。ジャズ・プレイヤーがあまり演奏することのないこの曲を選んだのは面白いし、この曲がこのグループの象徴的演奏になっている。
因みに、下記のURLでは全曲フルに試聴することが出来る。最近、こういうサイトが増えてきたのは嬉しい限りだ。   (2013.05.21)

試聴サイト : http://juanortiz.bandcamp.com/album/life-is-too-short
         


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