独断的JAZZ批評 793.

ELIANE ELIAS
焦点が絞り切れていないようなボヤーッとしたアルバムになっているのが残念
"SWEPT AWAY"
ELIANE ELIAS(p), MARC JOHNSON(b), JOEY BARON(ds), JOE LOVANO(ts)
2010年2月 スタジオ録音 (ECM 2168 : B0017358-02)


MARC JOHNSONとELIANE ELIASは夫婦で、しかも、同じジャズ・ミュージシャンであるから、「おしどり夫婦」と言ってもいいのだろう。
JOHNSONと言えば、BILL EVANSと最後の2年のトリオを組んだメンバーとして記憶に残っている。それが1979年と80年のことだから、あれから33年も経ったということだ。何しろ、JOHNSONの年齢が60歳になったというのだから驚きだ。
一方、ELIASの年齢は・・・女性だから言うまい。でも、推して知るべし。
その二人がECMに吹き込んだアルバムで、結構、ネットでも話題になったアルバムだ。僕はあまり食指が動かなかったのだけど、とりあえず、聴くアルバムがなくなってしまったので注文してみた。

@"SWEPT AWAY" トリオ。この曲の出だしとフィーリングがANDREA VENEVENTANOの"TRINACRIA"(JAZZ批評 168.)の中にある"ANIRAM"にそっくり!驚いた。
A"IT'S TIME" 
LOVANOが加わったリリカルなバラード。ELIASのバッキングがいいし、トリオの演奏になってからも生き生きとしていいね。
B"ONE THOUSAND AND ONE NIGHTS" 
「千夜一夜」ってことかな?東洋的な雰囲気の中で徐々に高揚感を増していくトリオ演奏ではあるが、一種の違和感がある。
C"WHEN THE SUN COMES UP" 
やはりELIASのピアノが入ってくるとグッと演奏が締まるね。LOVANOのテナーって最初から必要だった?
D"B IS FOR BUTTERFLY" 
ELIASの曲をピアノ・トリオで。リリカルだけどいい曲だ。さらに、ELIASのピアノ・プレイがいいね。躍動感もあって、このアルバムのベストかな?こういう演奏なら何回も繰り返して聴きたくなるってものだ。
E"MIDNIGHT BLUE" 
テナーが参加。ブルージーな曲だけどLOVANOのテナーが面白くない。それに対して、ELIASのピアノはフィーリング・グッドで面白い。
F"MOMENTS" 
バラード。LOVANOのテナーはまるでELIASの引き立て役だね。ELIASのピアノはバッキングでも切れていていいね。まるで逆になっている。
G"SIRENS OF TITAN" 
H"FOUJITA" 
ピアノ・トリオのバラード。しみじみと心に沁みるなあ。いいねえ、このピアノ!ウン、これもこのアルバムのベストに挙げたい。
I"INSIDE HER OLD MUSIC BOX" 
JOHNSONのベースが倍音を奏で、その後に、伸びやかなアルコ奏法が聴ける。
J"SHENANDOAH" 
アメリカ民謡をベース・ソロで。慎重に弾いている分、躍動感に欠ける。これならば、日本の安ヵ川大樹の方が断然上手いね。


MARC JOHNSONと言えば、今では、ENRICO PIERANUNZIとのトリオが思い起こされるし、事実、傑作が多い。デュオ・アルバム"YELLOW & BULUE SUITES"(JAZZ批評 487.)や、このアルバムと同様にドラムスを叩いているJOEY BARONが参加しているトリオ・アルバム"DREAM DANCE"(JAZZ批評 548.)もそういう1枚。
一方のELIASにはこのメンバーを集めたトリオ・アルバム"SOMETHING FOR YOU"(JAZZ批評 445.)というアルバムがある。このアルバムは今は亡きBILL EVANSに捧げたトリビュート・アルバムになっている。
それらのアルバムに比べて、どうだろう?何となく、焦点が絞り切れていないようなボヤーッとしたアルバムになっているのが残念。それと、テナーのLOVANOの参加が必要だったか大いに疑問だ。最初からピアノ・トリオ・アルバムとして作ったほうが良かったのでは?
因みに、DとHのようなピアノ・トリオばかりだったら、間違いなく5つ星だったろう。   (2013,03.02)

試聴サイト : http://www.youtube.com/watch?v=HruULd8IA-g



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