独断的JAZZ批評 548.

ENRICO PIERANUNZI
うねるような躍動感
"DREAM DANCE"
ENRICO PIERANUNZI(p), MARC JOHNSON(b), JOEY BARON(ds)
2004年12月 スタジオ録音 (CAM JAZZ : CAMJ 7815-2)


ENRICO PIERANUNZIのアルバムとしては、リーダーこそTERJE GEWELT(b)になっているが2008年録音の"OSLO"(JAZZ批評 528.)が最新盤だろう。"OSLO"はGEWELT(b)にANDERS KJELLBERG(ds)という強靭なバックアップを揃えて、見事にその期待に応えてくれた。「上質感」とも「気品」ともいえる優しさと暖かさに包まれたアルバムであった。多分にリーダーのGEWELTの人となりが反映されていると感じたものだ。従い、PIERANUNZIのアルバムの中では異色の味わいのするアルバムだと思う。
その"OSLO"と相前後して発売になったのが2004年録音のこのアルバム"DREAM DANCE"だ。メンバーには不動のオリジナル・メンバー、MARC JOHNSON(b)とJOEY BARON(ds)が参加している。しかも、全曲がPIERANUNZIの作曲とアレンジとなっている。

@"END OF DIVERSIONS" 
多少アブストラクト的色彩を持った演奏。だからといって、落胆することはない。この後には心に響く演奏が控えているから・・・。
A"NO-NONSENSE" 
この曲もPIERANUNZIらしからぬ曲で流麗、珠玉の演奏とは言い難い。

B"AS NEVER BEFORE"
 このアルバムは出来ればこの曲から入っていけば、すんなりとPIERANUNZI ワールドを堪能できるだろう。
C"CASTLE OF SOLITUDE"
 美しいテーマであるが、甘さだけに流されない。潔くも小気味よく躍動するJOHNSONのベース・ワークが聴きモノ。ちまちまと臆病になりながら高音部を弾いているベーシストはこの潔さを見習って欲しいものだ。このあたりからPIERANUNZIも本領発揮となってくる。ウーン、最高!
D"PEU DE CHOSE"
 ミディアム・テンポのワルツ。絶妙なコンビネーションが素晴らしい。
E"NOPPONO YA-OKE" 耽美的な美しさを持った曲で静かに息づくように躍動している。その様が背筋をゾクゾクとさせてくれる。この手の演奏にかかったらPIERANUNZIの右に出る者はいないだろう。うねるように躍動するPIERANUNZIの真骨頂。
F"PSEUDOSCOPE" 一転して、今度はアップ・テンポの小気味良い演奏だ。BARONの切れのよいドラミングを挟んでテーマに戻る。
G"DREAM DANCE" PIERANUNZI、お得意のワルツ。ちょっとひょうきんなテーマだが、続くJOHNSONのベース・ソロが良く歌っている。
H"FIVE PLUS FIVE" アップ・テンポで3人がグルーヴィに歌う。こいつぁ、最後にビシッと決めたね。

2004年の3月には"LIVE IN JAPAN"(JAZZ批評 426.)の日本公演があったが、このアルバムを含めて2004年はPIERANUNZIにとって充実の1年だったのではないだろうか?
PIERANUNZIのピアノは耽美的であったり、リリカルだったりするけど、決して甘さだけに流されない躍動感が全体を貫いている。このピアニストの特徴は「
うねるような躍動感」なのだ。ヨーロッパ最高のピアニストと言われる所以はこういった部分にあるのだろう。こういうジャズを繰り返し聴けるのは幸せなことだと思いつつ、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。
僕が今、一番生で聴いてみたいと思うピアニストはPIERANUNZI、その人に他ならない。次は何時、日本に来るのだろうか?

同じくCAM JAZZから発売になったJOHN TAYLORの"WHIRLPOOL"(JAZZ批評 535.)のところでも書いたが、このレーベルのCDケースとライナー・ノーツの装丁は素晴らしい。パッケージも一緒になって、その上質感をより一層高めている。   (2009.04.03)

試聴サイト : http://www.camoriginalsoundtracks.com/site/index.php?site=&path=cd&idcd=829&label=CAMJα=D