独断的JAZZ批評 792.

CHIHIRO YAMANAKA
山中千尋がやりたい音楽を好きなようにやらせてあげたい!!!
"AFTER HOURS 2"
山中 千尋(p), AVI ROTHBARD(g), 中村 恭士(b), 脇 義典(b))
2012年9月 スタジオ録音 (VERVE : UCCJ-2109)


山中千尋がレコード会社を澤野工房からユニバーサルに変えたのはもう8年も前のことだ。それ以来、山中の魅力が失せてしまったように感じるのは僕だけではないだろう。ユニバーサルの広告宣伝塔として八面六臂の活躍を強いられているのは想像に難くない。
若かりし頃だったら、これはシャレコマ(コマーシャルの逆さ読み、商業主義の意)だといって一笑に付していたことだろう。流石に、この歳になると、そこまでは思わないまでも、もっと彼女の能力を生かす方法はないのかなあと思ってしまう。
とてつもない才能の持ち主と思っているのだが、どうもそれが活かし切れていないように感じてしまうのだ。昔のレビューにも書いたのだが、「手にとるな やはり野に置け れんげそう」という例えがあるように、あまりいじくり回さずに「素」の山中千尋が表現できたらそれが一番という気がしてならない。
先に結論じみたことを書いてしまったが、これが本音。

@"FLY ME TO THE MOON" 最初の出だしからか〜るい感じの演奏。このアルバムはドラム・レスのギター・トリオだが、主役はピアノの山中だ。あとの二人は山中の引き立て役。
A"WAKEY, WAKEY" 
"FOREVER BEGINS"(JAZZ批評 653.)に入っている"SO LONG"に曲想がよく似ている。どちらも山中のオリジナルだ。
B"DRIFT APART" 
この曲からベースの増幅が大きくなる。このアルバムでは二人の日本人ベーシストが参加しているが、どの曲にどちらのベーシストが参加しているのかクレジットにも書いていない。こういうのって、やっているプレイヤーにも失礼ではないのかなあ?
C"JUST ONE OF THOSE THINGS" 
よどみなく鍵盤を駆け巡る山中のプレイに狂いはないが、緊迫感とかスリリングな展開というのも感じない。むしろ、無機質な印象すら受けてしまう。
D"GEORGIA ON MY MIND" 
まるで、ワンマン・ピアノだね。
E"I'LL CLOSE MY EYES" 
ギターもベースも極めてオーソドックス。丁々発止のインタープレイがあるわけでもなく、やはり「シャレコマ」だ。
F"MOANIN'" 
面白くない「モーニン」だなあ!事務的な匂いさえする。
G"BEAUTIFUL LOVE" 
美しくない「ビューティフル・ラブ」だなあ!粗雑な感じさえ受ける。
H"SKATING IN CENTRAL PARK" 
以下、有名スタンダード・ナンバーがずらりと並んでいるが、推して知るべし。
I"AUTUMN LEAVES" 
J"I DIDN'T KNOW WHAT TIME IT WAS"
 

正直に言って、聴きこむほどに嫌になってきた。1〜2回が限度。
元に戻ると、これは「シャレコマ」だね。このアルバム、3000円以上もするし、DVD付属版は何と3800円。それだけの価値を感じない。悪徳商法とまでは言わないが、買う側が注意しないといけない。輸入盤だったら2〜3枚買えるところだ。
山中千尋を聴くなら"WHEN OCTOBER GOES"(JAZZ批評 113.)か、先に紹介した"FOREVER BEGINS"(JAZZ批評 653.)をお勧めしたい。プレイヤーの本気度が全然違う。
山中千尋がやりたい音楽を好きなようにやらせてあげたい!!!   (2013.02.24)

試聴サイト : http://www.universal-music.co.jp/chihiro-yamanaka/products/uccj-9127/



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