独断的JAZZ批評 717.

MARTIN TINGVALL
圧倒的な躍動感とダイナミズム、更には、牧歌的な美しさが魂を揺るがしてくれる筈だ
"VAGEN"
MARTIN TINGVALL(p), OMAR RODRIGUEZ CALVO(b), JURGEN SPIEGEL(ds,per)
WOLF KERSCHEK(orchestrayion on I), GREGOR LENTJES(horns on I),
SRINGS DE LUXE(on I = JANSEN FOLKERS(vln), ADAM ZOLYNSKI(vln),
AXEL RUHLAND(vla), MARTIN BENTZ(cello))
2011年5月 スタジオ録音 (2011 SKIP RECORDS : DUJ 083)

2005年録音の"SKAGERRAK"(JAZZ批評 473.)に始まって、2007年"NORR"(JAZZ批評 474.)、2009年"VATTENSAGA"(JAZZ批評 586.)と2年ごとにアルバムをリリースしてきたTINGVALL TRIOの第4弾。このグループは"MODERN GROOVE"とでも呼びたくなるグルーヴ感とリリシズムを塩梅良く兼ね備えたスウェーデン、キューバ、ドイツの3人から成る混成トリオ。活動拠点はドイツのハンブルグだ。
今まで発売された3枚の全ての曲がTINGVALLの書いた曲ということでどうしても曲想が似ており、2枚目、3枚目には食傷気味という状況を招いてしまった。やはり、1枚目のデビュー・アルバム"SKAGERRAK"が溢れるダイナミズムと耽美的な美しさを併せ持っており、強烈な印象を残してくれた。
さて、今度の第4弾は10曲目にオーケストレーションを加えて、新たな味付けを加えているが、その結果は如何に?

@"SEVILLA" いやあ、これは凄いね。第1弾の時の強烈なエネルギーが戻ってきた。これぞ、MARTIN TINGVALL TRIOの真骨頂!こういう演奏を聴きたかった!甦ったダイナミズム!
A"VAGEN" 
実に牧歌的な曲想の曲で、このタイトルは「道」を意味しているという。このジャケットにある車のバックミラーに写る「道」は彼らの歩んできた「道」をも表しているのかもしれない。
B"HOGTID" 
何と心地よく、爽やかな演奏なのか!
C"TUC-TUC MAN" 
一転して、賑やかな演奏だ。シンプルだけど分厚い。
D"DEN ENSAMME MANNEN" 
これも牧歌的な匂いのするする演奏。美しさの根底にフォーク的な色合いが混じる。ベースとブラシの合間を縫って進むピアノが美しい。
E"PA VAG" 
ピアノ・ソロ。
F"SHEJK SCHRODER" 
冒頭から効果音的なバイオリンが入る。この圧倒的な躍動感とSPIEGELの叩き出すド迫力のドラミングが素晴らしい。
G"VAGGVISA / MORGON" 
キューバ人、CALVOがベースで描く歌心とテクニックの織り成すサウンドがまた素晴らしい。
H"TIDEVARV" 
「静」から「動」へ、そしてまた「静」に戻る。
I"EFTER LIVET" 
この曲ではオーケストレーションを導入。「ああ、やられたなあ!」と思わせる分厚い演奏に思わず感嘆する。まさにダイナミズムを体現した演奏だ。

今回のアルバムもまた全てがTINGVALLの手による作品だ。が、今回のアルバムはとてもメリハリが利いていて聴くものを飽きさせない。何といっても、全編に漲るダイナミズム、圧倒的なエネルギーと躍動感に感動する。前作より2年。今回は、一皮も二皮も剥けた成長ぶりを見せてくれた。
トリオとしての3人の力量とアンサンブルは申し分ない。加えて、第1弾で見せたエネルギーの放出や圧倒的な躍動感とダイナミズム、更には、牧歌的な美しさが魂を揺るがしてくれる筈だ。最後に加えたオーケストレーションのIも素晴らしい。新たなる可能性を示唆している。当分、このグループからは目を離せない。
次のアルバムもリリースされるのは2年後だろうか?今から2年も待つのはちょっと永いなあと思いつつ、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2011.09.27)

試聴サイト : http://tingvall-trio.de/vaegen



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