独断的JAZZ批評 773.

BRAD MEHLDAU
今や、MEHLDAUはトリオのピアニストというよりは、ソロ・ピアノのピアニストという思いを強くするのだ
"WHERE DO YOU START"
BRAD MEHLDAU(p), LARRY GRENADIER(b), JEFF BALLARD(ds)
2008年11月&2011年4月 スタジオ録音 (NONESUCH : 532029-2)

今年の3月に、姉妹盤とも言える"ODE"(JAZZ批評 747.)を紹介しているが、そのアルバムは2008年録音と2011年録音が混在していた。
本アルバムも同様の手法で2008年と2011年録音が混在している。これなら、最初から2008年のアルバムと2011年のアルバムを別々に作れば良かった。何故こうしたのか、その意図は不明だ。
ただ、"ODE"が全11曲、MEHLDAUのオリジナルだったのに対し、今回のアルバムはGを除くすべての曲がジャズ、もしくは、ポップスのカバー曲だ。そのうち、
@ADEHJの6曲が2011年の録音で、残り5曲が2008年の録音になっている。驚くべきことに、このアルバムの総演奏時間は78分にもなる。いくら聴いても終わらないという感じすらした。
MEHLDAUが現代最高のピアニストという事に異論を挟む気は毛頭ないのだが、このアルバムは果たしてどうであろうか?

@"GOT ME WRONG" いきなり始まる変拍子。1拍足りないムズムズ感が残る7拍子。僕はこの変拍子というのがあまり好きではない。というより、嫌いだ。生理的に心地よくないのだ。
A"HOLLAND" 
B"BROWNIE SPEAKS" 
C"BABY PLAYS AROUND" 
D"AIREGIN" SONNY ROLLINSの名曲を高速4ビートで刻んでいるにもかかわらず、何故か演奏に燃えたぎる熱さがないのだ。クールなのだ。GRENADIERのベースは太い4ビートをズンズンガシガシ弾いているし、BALLARDのシンバリングも小気味よく鳴っているのに、演奏に熱さを感じないのはどういうわけか?
E"HEY JOE" 
F"SAMBA E AMOR" 
ラテン・リズムに乗った軽いノリだが、これはMEHLDAUの独壇場でしょう。他のどんなピアニストにもマネのできないMEHLDAU WORLD!
G"JAM" 
このアルバム唯一のMEHLDAUのオリジナル。
H"TIME HAS TOLD ME" 
I"AQUELAS COISAS TODAS"
J"WHERE DO YOU START ?" 最後は美しいバラード。

このアルバムは輸入盤で78分も入って、わずか1442円で購入した。そういう意味ではとても安いアルバムだと言えると思う。でも、MEHLDAUのアルバムの中で諸手を挙げて素晴らしいアルバムだとは僕には言い切れないのだ。いや、MEHLDAUにはもっと素晴らしいアルバムがいくつもある。
今や、僕にとって、MEHLDAUはトリオのピアニストというよりは、ソロ・ピアノのピアニストという思いを強くするのだ。CDにもなっている"LIVE IN MARCIAC"(JAZZ批評 684.)やCDにはなっていないがYouTubeで観ることできる"JAZZ A VIENNE 2010"(試聴サイトを最後に記しておいた)のライヴ映像などはソロ・ピアニストとしての存在感を強烈に見せつけた内容となっている。こちらの方が、今のMEHLDAUの存在感を輝かしいものにしているように思えてならないのだ。   (2012.10.05)

試聴サイト:http://www.youtube.com/watch?v=AhbDJDXQMGY

"JAZZ A VIENNE 2010"におけるPIANO SOLO
YouTubeサイト:http://www.youtube.com/watch?v=_aRZ7RKM5S0&feature=relmfu



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