独断的JAZZ批評 772.

MAKOTO OZONE
小曽根の音楽性にベクトルを合わせたという感じ
"MY WITCH'S BLUE"
小曽根 真(p), CHRISTIAN McBRIDE(b), JEFF "TAIN" WATTS(ds)
2012年5月 スタジオ録音 (VERVE : UCCJ-2103)


前掲のDAVID KIKOSKI TRIO(JAZZ批評 771.)のサポートはCHRISTIAN McBRIDEとJEFF "TAIN" WATTSという剛腕プレイヤーだったが、小曽根のこのアルバムもメンツが全く同じ。違うのはピアニストの小曽根だけ。サポートが同じでピアニストが変わるとどういう変化があるのか興味津々であった。ピアニストのタイプは全然異なるので、どういう結果が現れるのか楽しみだ。
言うまでもなく、小曽根は日本のジャズ・シーンを代表するピアニストだ。最近では、2007年録音のソロ・アルバム、"FALLING IN LOVE, AGAIN"(JAZZ批評 436.)が僕のお気に入りだ。特に、1曲目のJOHN LENNONが書いた"(JUST LIKE) STARTING OVER"が絶品だった。また、前々掲のELLIS MARSALISとのデュオ・アルバム、"PURE PLEASURE FOR THE PIANO"(JAZZ批評 770.)も人の優しさとか思いやりが音楽に乗り移った好アルバムであった。そのアルバムがニューオリンズで録音されたのが5月16と17日。その直後の19日から21日にかけて、ニューヨークで録音されたのが、この"MY WITCH'S BLUE"だ。

@"BOUNCING IN MY NEW SHOES" 案の定、ベースはズンズン野太いし、ドラムスはガシガシ遠慮がないし、加えて、小曽根のピアノもハイテンションだ。
A"MY WITCH'S BLUE" 
魔女の登場という雰囲気で始まる。透明感のある小曽根のピアノが軽やか。魔女と言っても、洗練されている。
B"GOTTA GET IT !!" 
ユーモアとガッツあふれるプレイ。
C"LONGING FOR THE PAST" 
ELLIS MARSALISとのデュオ"PURE PLEASURE OF THE PIANO"(JAZZ批評 770.)でも演奏されていた美しいバラード。
D"SO GOOD !!" 
陽気な演奏だ。ドラムスとの8小節交換〜4小節交換を経てテーマに戻る。
E"TAKE THE TAIN TRAIN" 
アップ・テンポの4ビートを刻んで進む。McBRIDEのベースは重厚感溢れるものだし、対して、小曽根のピアノは切れていて淀みがない。ここでは"TAIN"のドラム・ソロがフィーチャーされている。
F"TIME WE SPENT TOGETHER" 
バラード。大人の雰囲気だなあ!こういうの聴いていると真昼間からアルコールを手に取りたくなってしまう。
G"NOVA ALVORADE" 
ラテン・リズムに乗った軽快で楽しげな演奏。
H"SOLO IMPROVISATION “CONTINUUM”" 
I"SATIN DOLL"
 ここまですべての楽曲が小曽根のオリジナル。この曲が唯一のスタンダード・ナンバー。こういうスタンダードは目を瞑っていても弾けるだろうから手馴れたもんだ。

あえて、前掲のアルバムとこのアルバムを連続して掲載したのは同じサポート陣でピアニストが変わると、音楽もこれほど変わるということを確認してみたいと思ったから。まあ、当然と言えば当然で、同じような演奏になってしまったら新しいアルバムを購入する意味がなくなってしまう。
全体的な印象でいえば、KIKOSKIのアルバムは3者のベクトルが同じ方向を向いている。特別なことは何もなくて、普段の己がままのスタイルを貫けば良かったという感じ。
対して、小曽根のアルバムはサポートの二人が小曽根に寄り添ったという感じ。それは遠慮したという意味ではなくて、小曽根の音楽性にベクトルを合わせたという感じなのだ。
いずれも素晴らしいアルバムだと思うので、比較されてみたら面白いと思う。   (2012.09.30)

試聴サイト : http://www.youtube.com/watch?v=Akw5wOI7jHU



.