独断的JAZZ批評 770.

ELLIS MARSALIS & MAKOTO OZONE
人の優しさとか思いやりが音楽に乗り移っている
"PURE PLEASURE FOR THE PIANO"
ELLIS MARSALIS & 小曽根 真(p), BRANFORD MARSALIS(as onG)
2012年5月 スタジオ録音 (VERVE : UCCJ-2104)


「チャリティーは継続することが一番肝心」との思いで、小曽根真が昨年、2011年の東北大震災に続いて取り組んだアルバム。
このアルバムの収益の全額のうち、半分は東日本の復興支援に、もう半分が2005年のハリケーン・カトリーナで大被害を受けたニューオリンズに設立されたTHE ELLIS MARSALIS CENTER FOR MUSICに寄付されるという。
ELLIS MARSALIS(現在、77歳)は親友のBRANFORD MARSALISの父親でもある。このアルバムでは、そのBRANFORDが最後の1曲で飛び入りで演奏している。WYNTON MARSALISはBRANFORDの弟にあたる。

@"CONFUSING BLUES" リラックスした二人のアドリブの中から聴き慣れたブルースのフレーズが飛び出したりして楽しげだ。
A"DO YOU KNOW WHAT IT MEANS TO MISS NEW ORLEANS?" 
二人の人柄を表すような優しくて温かみのある演奏だ。知らぬ間に指が鳴っている。そういう楽しさを持っている。(ジャケット写真で見ると)右チャンネルが小曽根でピアノはヤマハ。対して、左チャンネルがMARSALISでピアノはスタンウェイ。ヤマハのピアノはニューヨークから2,200kmの長距離を運んだらしい。
B"SWEET GEORGIA BROWN" 
楽しげなインタープレイだ。ここでもビートルズの"ELEANOR RIGBY"のフレーズが飛び出したりして楽しい。
C"A MOMENT ALONE" 
D"EMILY" 
"THE SHADOW OF YOUR SMILE"や"A TIME FOR LOVE"で有名なJOHNNY MANDELの書いた美しい曲。沢山のプレイヤーが好んで演奏する佳曲。ここでの演奏も愛らしく、そして、品があるね。
E"LONGING FOR THE PAST" 
小曽根の書いた美しい曲。しみじみとした情感と音が積み重なっていく。
F"WHAT IS THIS THING CALLED LOVE" 
COLE PORTERの名曲を躍動感豊かに。こういうスタンダードは今までに何百、何千と弾いてきたのだろうから、その呼吸やピッタリだ。
G"STRUTTIN' WITH SOME BARBECUE"
 この曲のみBRANFORDが飛び入りでアルト・サックスを吹いている。何とも楽しげな演奏で、終わった後は、皆で笑顔で喝采という状況が目に浮かぶ。

何とも、優しさと慈しみに溢れたアルバムだ。人の優しさとか思いやりが音楽に乗り移っている。音楽家として今できることを具現化したアルバムだと思う。その志は高い。
こういう活動によって、多くの被災者が勇気づけられ、また、恩恵に預かることが出来るのだろう。   (2012.09.17)


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