独断的JAZZ批評 748.

CHICK COREA & GARY BURTON
タッチの強さも、沸き立つ躍動感も、更にはダイナミズムも本来の姿ではないと感じてしまう
"HOT HOUSE"
CHICK COREA(p), GARY BURTON(vib)
2011年 スタジオ録音 (CONCORD JAZZ : UCCO-1116)


このアルバムが録音されたのは2011年とジャケットには書いてあるが、月までは分からない。YouTubeの2011年のライブ映像を観るとCHICKが激痩せしているのが分かる。それまでは、どちらかというと肥満気味であった。この変わりように驚いた。健康に何事もなければいいなと思う。
このアルバムはCHICKとBURTONの競演40周年を記念して15年ぶりにレコーディングしたアルバムである。最初のデュオ・アルバムであったLP盤の"CRYSTAL SILENCE"をよく聴いたものだが、あれから40年も経ったとは!歳をとるわけだ。
その後、二人の競演アルバムとして"LIKE MINDS"(JAZZ批評 21.)や"NATIVE SENSE"(JAZZ批評 73.)をレビューしているが、どちらも辛い点を僕は点けている。

@"CAN'T WE BE FRIENDS" 何しろ、ピアノとバイブのデュオである。かなり近しい楽器のデュオだ。(ハーモニーを作れて、メロディを弾くことも出来て、リズムを刻むことも出来る)例えばピアノとホーン楽器とか、ピアノと弦楽器というのとわけが違う。ある意味、ピアノ(鍵盤楽器も弦を打っている)もバイブも打楽器だが、その競演だ。
A"ELEANOR RIGBY" 
レノン、マッカートニーによるビートルズ・ナンバー。実に生き生きとした演奏だ。
B"CHEGA DE SAUDADE" 
この演奏を聴いていると、CHICKに往年のというか、今までのような「演奏の切れ」がないように感じてしまうのだ。
C"TIME REMEMBERED" 
BILL EVANSの書いた曲。穏やかな演奏だ。
D"HOT HOUSE" 
E"STRANGE MEADOW LARK" 
似たような音色の競演に、この辺まで来ると次第に飽きてくる。音色のメリハリがほしいところだ。
F"LIGHT BLUE" 
いかにもT. MONKの曲といった曲想。二つの楽器が溶け込んで一つになったような感じ。バイタリティあふれるBURTONの演奏に比べるとHICKのピアノのタッチが弱い。
G"ONCE I LOVED" 
CHICKらしいタッチの強さや躍動感の希薄さが気になる。激痩せの体調と関係があるのだろうか?
H"MY SHIP" 
このアルバムではBURTONが主役だ。
I"MOZART GOES DANCING" 
この曲のみ弦楽四重奏が加わっている。ジャズ・フィーリングというよりはクラッシク・フィーリング溢れる演奏になっている。

このアルバムの録音時間は全部で74分を越える。10分以上の演奏が2曲あり、総じて6分以上。デュオというフォーマットの割には長い。ピアノとヴィブラホーンというフォーマットは比較的類似した楽器のデュオのため、ともすると聴き飽きてくる。その上、長尺だ。
一番心配していたことだが、CHICKの健康状態は良好なのだろうか?激痩せの影響はないのだろうか?タッチの強さも、沸き立つ躍動感も、更にはダイナミズムも本来の姿ではないと感じてしまうのだ。
下記にYouTubeの映像を2点、記しておく。ひとつがこのアルバムと同じ年、2011年のライヴ。もうひとつが激痩せ前の2007年のライヴ。曲は"LA FIESTA" 是非、聴き比べていただきたい。勿論、僕は2007年の演奏のほうが素晴らしいと感じている。   (2012.03.30)

試聴サイト : http://www.youtube.com/watch?v=-Uok_WpjCTc&feature=related
         http://www.youtube.com/watch?v=TK492iphiEc&feature=related




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