音楽って不思議だ。下手でも感動を呼ぶ演奏がある。反面、このアルバムのように非の打ち所がないにもかかわらず、何故か心に響かないアルバムがある。
"NATIVE SENSE" CHICK COREA(p), GARY BURTON(vib) 1997年スタジオ録音
(STRETCH MVCL-24003)

前回に引き続き、デュオ・アルバム。今回は COREA と BURTON、ピアノとヴァイブのデュオ。
ジャズを聴き始めた頃、 BURTON の"DUSTER"(1967年録音)はお気に入りだった。新進気鋭で野性味溢れるギターリスト・LARRY CORYELLが素敵だった。(次頁で、この"DUSTER"を紹介したいと思う)

転じてこのアルバム、CHICK COREA と GARY BURTONのデュオということで期待は大。しかしながら、何かが足りない!テクニック抜群、コンビネーション抜群、音楽性豊か、完璧な演奏!だのに、何かが足りない。強い感動を呼ばないのだ!

音楽って不思議だ。下手でも感動を呼ぶ演奏がある。反面、このアルバムのように非の打ち所がないにもかかわらず、何故か心に響かないアルバムがある。本当に不思議だと思う。これは理屈ではない。僕の素直な感想なのだ。

何がそうさせているのか?
ふっと、思ったのは、完成されすぎた面白みのなさとでも言うのだろうか。完璧主義の窮屈さがあるのだ。美味い酒を飲みたくなるような、あるいは、もっと酒が美味くなるようなリラックスしたムードがない。
それと同時に、才能に溺れて独り善がりになってはいないか。

CHICK COREAという人は才気溢れるピアニストだが、ここ10年以上感動を呼ぶアルバムにめぐり合えない。JAZZ批評 1.50.のような絶品もあれば、5.や今回のアルバムのような感動を呼ばないアルバムもある。最近の作品は全て僕には受け入れ難い。何故なら、JAZZ批評 1.のような素晴らしいアルバムがあり、それに感動してJAZZの世界にのめりこんだという自分の過去の経験があるからだ。
原点に帰って欲しいと願わずにはいられないプレイヤーの一人だ。文字通り"NATIVE SENSE"に経ちかえって欲しいと思う。   (2002.06.07)


CHICK COREA / GARY BURTON

独断的JAZZ批評 73.