TADATAKA UNNO
本場のジャズの洗礼を受けたのだろうか?
リラックスしてユーモアを交えた演奏には余裕さえ感じさせる
"AS TIME GOES BY"
海野 雅威(p), HASSAN J. J. SHAKUR(b), JIMMY COBB(ds), FRANK WESS(flute
on E, ts on I)
2010年4月 スタジオ録音 (HAPPINET : HMCJ-1002)
海野雅威のアルバムはこれが2枚目になる。1枚目は2006年録音の鈴木良雄(b)がリーダーとなったピアノ・トリオ・アルバム"FOR
YOU"(JAZZ批評 416.)で、新レーベル誕生と鈴木良雄自身の還暦を記念したアルバムであった。聴くほどにナチュラルで「ほっと」するアルバムであった。
海野は、その後、2008年6月には本場アメリカのニューヨークに移住し、現在もそこを拠点に活動しているようだ。
この"AS TIME GOES BY"は海野自身がリーダーとなり、サイド面にアメリカのプレイヤー、HASSAN
J. J. SHAKURとベテラン・ドラマー、JIMMY COBBを擁している。リーダーとしては3作目にあたるという。
@"ROUND MIDNIGHT〜I HAVE DREAMED" ピアノ・ソロ。粒立ちのしっかりした良い音色だ。時に優しく、時に激しく、思いの丈をしっかりと鍵盤に伝えている。
A"HOW HIGH THE MOON" COBBのドラムスに始まり、3者が合流する時の重厚感が素晴らしい。楽しげに躍動する海野のピアノはかつてのRED
GARLANDを彷彿とさせる。老いを知らないCOBBの威勢の良いドラミングを経てテーマに戻る。JIMMY
COBBは1929年生まれというから80歳を超えたところだが、ジャズの世界では驚くに当たらない。
B"BIRDBATH"
C"TROUBLE AIN'T ALWAYS BAD" 海野のオリジナル。アップテンポで心地よくスイング。典型的な32小節の歌モノ。
D"MY BOAT FOR YOU" 日本的なメロディーライン。作曲者はHIROSHI MIYAGAWA とある。なるほどね。遊び心もあって、ついニヤリとしてしまう。
E"GONE WITH THE WIND" FRANK WESSがフルートで参加。このチューンはこのアルバムの中でアクセントになっている。フルートの入ったアルバムを聴くなんて本当に久しぶりだ。ついつい、HERBIE
MANNとかJEREMY STEIGなんて名前が浮かんでしまってはお里が知れるというものだ。
F"LITTLE GIRL BLUE" しっとりとバラードだけど、海野のピアノはベターッとしていない。カラッとしていて良いと思う。
G"IN THE BLUE MOMENT" ブラシ・ワークに乗ったワルツ。
H"IF I WERE A BELL" 煌びやかなピアノのタッチがメロディを紡いでいく。こんなにも陽気で茶目っ気のあるピアニストだとは知らなかった。このアルバムのベスト・チューン。ライヴでこんな風に弾いたら大受け間違いなしだ。
I"AS TIME GOES BY" FRANK WESSがテナーサックスで参加したピアノとのデュオ。
J"DROP ME OFF IN HERLEM" 今度はベースとのデュオ。太くて重量感のあるSHAKURのベースが良い音色だ。
どちらかというと生真面目な印象が強かった海野であるが、本場のジャズの洗礼を受けたのだろうか?リラックスしてユーモアを交えた演奏には余裕さえ感じさせる。
アメリカ武者修行によって歌心に遊び心が加わって良いピアニストになった。といっても、ここが終点ではない。星5つにするか迷ったが、迷った時は厳しいほうの点をつけると決めているので星4.5とした。まだまだ成長してもっともっと楽しませて欲しいと思う。 (2010.11.09)
試聴サイト : http://www.happinet-p.com/jp2/music/jazz/unno.html