AARON GOLDBERG
これはROGERSとHARLANDが
主役のGOLDBERGを喰っているのかもしれない
"HOME"
AARON GOLDBERG(p), REUBEN ROGERS(b), ERIC HARLAND(ds), MARK TURNER(ts:@,D,H)
2007年8月 スタジオ録音 (SUNNYSIDE : SSC 1232)


未だ若きフランスのサックス・プレイヤー、JORIS ROELOFSの2007年9月録音の傑作アルバム"INTRODUSING JORIS ROELOFS"(JAZZ批評 523.)でピアノを弾いていたのがこのAARON GOLDBERGだ。地味だけど良い仕事をしているなあと思ってピアノ・トリオ・アルバム"FLOW"(JAZZ批評 542.)を買ったら、これが期待に反して酷いアルバムだったのでがっかりした記憶が残っている。
さて、この"HOME"は、僕の中ではGOLDBERGの初めてのリーダー・アルバムだ。テナー・サックスのMARK TURNERが3曲に参加している。よくよく調べてみると、このアルバムの録音日は2007年の8月。JORIS ROELOFSのアルバムよりも1ヶ月前に録音されていたのだ。

@"CANCION POR LA UNIDAD LATINOAMERICANA" 
何とも爽やかなテーマではないか!まるで癒し系ミュージックのようだ。ちょこっと聴いた感じは「コーヒー・ルンバ」みたいに明るくて軽い。クエスチョンの残るトラックだ。
A"SHED" 
GOLDBERGのオリジナル。リズミカルな左手の定型パターンに乗って、右手で伸びやかなアドリブを執る。この演奏は生き生きとしたHARLANDのドラミングがフィーチャーされていて良いと思う。
B"HOMELAND" 
先の"FLOW"でリーダーを務めたOMER AVITALの書いたワルツ。ROGERSがベース・ソロを執っているけど太くて良い音色だ。しかし、"FLOW"におけるOMER AVITALのベースは酷かった。
C"I MEAN YOU" 
T. MONKの書いた曲らしく、グチャグチャしたテーマにつられてGOLDBERGが羽目を外す。ベースもドラムスも思いっきり羽目を外していて、これはなかなか良いと思う。
D"THE RULES" 
GOLDBERGのオリジナルで、先に紹介した"INTRODUSING JORIS・・・・"の中でも演奏されている。一度、聴くと記憶に残りやすい独特のテーマが印象的だ。このアルバムではMARK TURNERがテナー・サックスで参加している。2枚のアルバムを聴き比べてみたけど、JORIS ROELOFSのアルト・サックスに軍配を上げたい。
E"LUIZA" 
GOLDBERGの書いたしっとり系の曲だけど、徐々にグルーヴ感を増してくる。HARLANDのドラミングが冴えわたっている。ROGERSのベース・ソロも実に頼もしくてグルーヴィだ。
F"ISN'T SHE LOVELY" 
STEVIE WONDERの曲らしい。リズミカルな展開に二重丸。しかも、ROGERSとHARLANDのサポート陣は強力無比だ。
G"THE SOUND OF SNOW" 
ここでのGOLDBERGはリリカルだけど生き生きとしていて良いね。
H"AZE'S BLUZES" 
4ビートを刻むROGERSとHARLANDのバックアップが躍動しているがTURNERのテナー・サックスは月並みだ。その後に続くGOLDBERGのピアノは実に伸び伸びとした演奏だ。
I"A TIME FOR LOVE"
 JOHNNY MANDELの書いた佳曲。かつて紹介したKENNY WERNERとJENS SONDERGAARDのデュオによる同名タイトルのアルバム(JAZZ批評 509.)でも素晴らしい演奏が聴ける。

@、D、Hの3曲だけにMARK TURNERを参加させた意味合いがはっきりしない。むしろ、最後までいなくても良かった。トリオ演奏だけに絞ったほうが良かった気がする。
1ヶ月違いで録音された"INTRODUSING JORIS・・・・"とこのアルバムを比較すると、ワン・ホーンのJORIS ROELOFSの出来のよさでJORISに軍配を上げたい。
GOLDBERGのピアノは、どちらかというとリーダー・タイプというよりはサイドメン・タイプかもしれない。事実、サイドメンとして参加した"INTRODUSING JORIS・・・・"のピアノの方が生き生きとした息遣いが聴こえる。リーダーとしてピアノを弾くならもっともっとわがままに自我を通しても良かったのではないだろうか?・・・と、ここまで書いて思ったのだけど、これはROGERSとHARLANDが主役のGOLDBERGを喰っているのかもしれない・・・そう思った。    (2010.04.25)

試聴サイト : http://aarongoldberg.com/home/



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独断的JAZZ批評 623.