独断的JAZZ批評　７２１．

"CRESCENT"
PETER ROSENDAL(p,flugabone,rhodes), MADS VINDING(b), MORTEN LUND(ds,percussion)
2011年4月　スタジオ録音　(CLOUD : DDCJ-4004)

PETER ROSENDALのアルバムを紹介するのは、これが4枚目にあたる。最初の2枚はこのアルバムと同じメンバー、MADS VINDINGとMORTEN LUNDとのトリオだ。3枚目のアルバムはプレイヤー3人の名前をタイトルとした"ROSENDAL,EARLE,TEMPLETON"だった。残念ながら、若手主体の編成と全てをROSENDALのオリジナルで占めた構成が未成熟な印象を与えた。
今回のアルバムは元に戻って、VINDINGとLUNDのトリオだ。この3人のアルバムでは何と言っても最初の"LIVE AT COPENHAGEN JAZZHOUSE"（JAZZ批評　１６２．）が素晴らしく、今こうして聴き返していても全く古さを感じさせない瑞々しさに溢れている。ライヴハウスでの緊張感とリラックスした演奏の両方と牧歌的な味わいの演奏を楽しむことが出来る。当時、26歳だったROSENDALはデビュー・アルバムとは思えない、したたかで神がかり的な演奏を聴かせてくれたものだ。このアルバムはVINDINGのベースなしでは語ることが出来ない。
それから9年、35歳になったROSENDALと62歳になったVINDINGはどんな演奏を聴かせてくれるのだろうか？

①"CRESCENT"　
②"HUMMING ME"　牧歌的な曲想、そして、変拍子。加えてフリューガボーン（別名：マーチング・トロンボーン）のオーバー・ダビング。が、このフリューガボーンが実に効果的。程よい色彩を添えている。このアルバムのベスト。いかにもROSENDALらしい。海のうねりを思わせる。引いては寄せ、寄せては引いていく・・・。もっと聴いていたいと思わせるが4分ほどで終わってしまうのが残念。
③"NEW LINEN"　一転して、モーダルな演奏。LUNDの軽快なブラシ・ワークにも耳を傾けたい。このドラマーは日本公演のときに顔に似合わぬひょうきんさをみせてくれたっけ。
④"PIRANHA"　クラシカルな1分強のピアノ・ソロ。
⑤"THE WATER IS WIDE"　アイルランド民謡といわれている佳曲。この曲というとTERJE GEWELTの"HOPE"（JAZZ批評　２７５．）に入っている演奏を思い出す。直球勝負のその演奏と比較すると、一味凝ったハーモナイズが施されている。この変化球は面白い。VINDINGのベースがテーマを奏でる。
⑥"BELO HORIZONTE"　良く歌うベース・ソロ、良く歌うドラム・ソロ、みんな楽しげだ。
⑦"TUNGE MORKE NATTESKYER"　
⑧"PULP FRICTION"　ここではフリューガボーンとRHODESのオーバー・ダビングが見られる。LUNDの心地よいブラシに乗ってVINDINGのベースが楽しげに歌う。変拍子をわずかに取り入れている。おおっと！もう終わってしまった。
⑨"SILVERY YOU"　バップ・テイスト豊かな曲。へえ、こういう演奏もするんだ！
⑩"TACTILE BLUE"　牧歌的な匂いのするROSENDALのオリジナル。VINDING健在なりを誇示するベース・ワーク。
⑪"LIKE SOMEONE IN LOVE"　スタンダード一発。ごく普通のアメリカの匂いのするメイン・ストリームの演奏だ。4ビートを気持ちよく刻んでいく。

"LIVE AT COPENHAGEN JAZZHOUSE"では恐れを知らぬ若者らしく思い切りの良さと老練ともいえる巧みさを見せてくれた。それから9年。今度は色々な色彩を見せてくれた。牧歌的な演奏、モーダルな演奏、バップ・テイストの演奏、メイン・ストリームの演奏と・・・。どれもがROSENDALの資質の高さを表している。
総じて言うと、各トラックの演奏時間が短い。5分台が4曲、4分台と3分台が3曲ずつで1分台が1曲という構成になっている。長ければ良いってもんじゃないけど、さあ、これからって時に終わってしまうのはちょっと残念。特に、②の"HUMMING ME"や⑧の"PULP FRICTION"はフリューガボーンやRHODESのオーバーダビングを交えたオリジナリティの高いユニークな演奏にもかかわらず、早々に終わってしまったのが勿体無い気がする。もっと聴いていたいという気分の真っ只中でお預けを食った気分かな？　　　(2011.10.15)

試聴サイト　：　http://www.youtube.com/watch?v=LJV43BvIg6M

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