独断的JAZZ批評 720.

BRAD MEHLDAU / KEVIN HAYS / PATRICK ZIMMERLI
いい音楽だとは思うけど、好きな音楽ではない
"MODERN MUSIC"
BRAD MEHLDAU(p), KEVIN HAYS(p), PATRICK ZIMMERLI(composer,arranger)
2010年10月 スタジオ録音 (NONESUCH : 7559-79644-9)

期せずして、2枚のピアノ・デュオアルバムが届いたのは同じ日の10月の1日だった。1枚目が前掲のCHICK COREAとSTEFANO BOLLANIの"ORVIETO"(JAZZ批評 719.)で、2枚目がこのアルバム。BRAD MEHLDAUとKEVIN HAYSとのデュオだ。
この"MODERN MUSIC"では、二人のピアニストと並んで、"COMPOSED AND ARRANGED BY PATRICK ZIMMERLI"という表記がある。このPATRICK ZIMMERLIという名前は初耳だ。このZIMMERLIはMEHLDAUと同じ高校に通った2年先輩だったらしいが、どちらかというとクラッシク畑の人らしい。この辺がこのアルバムの拘りなのかも知れない。
COREAとBOLLANIの組み合わせにも驚いたが、このMEHLDAUとHAYSの組み合わせにも驚いた。KEVIN HAYSについては今までに3枚レビューしているが、2005年録音の"FOR HEAVEN'S SAKE"(JAZZ批評 347.)が印象に残る程度で、残る2枚はすでに手元にはない。


@"CRAZY QUILT" 
A"UNREQUITED" 
MEHLDAUの名作"SONGS THE ART OF THE TRIO VOLUME THREE"の2曲目に入っていたMEHLDAUのオリジナル。まるで別の曲。まるでクラッシク。
B"GENERATRIX" 
C"CELTIC FOLK MELODY" 
D"EXCERPT FROM MUSIC FOR 18 MUSICIANS" 
E"LONELY WOMEN" 
F"MODERN MUSIC" 
"MODERN JAZZ"ではなくて"MUSIC"というところが味噌だ。まさに「現代音楽」という風情。
G"ELEGIA" 
哀愁を帯びたHAYSのオリジナル。
H"EXCERPT FROM STRING QUARTET NO. 5" 

作曲、編曲者がクラッシク畑のPATRICK ZIMMERLIということで、色彩的にはクラッシク側の音楽だろう。これはクラッシク・ファンには喜ばれるかもしれないが、ジャズ・ファンにはどうだろう?ジャンルを超えた音楽と言うことも出来るけど、ジャズ側に立っている僕としては「もうひとつ不満足!」と言わざるを得ない。
先のCOREAとBOLLANIのデュオに比べるとテンション低めで躍動感が少ない。それと即興性という点でも物足りないのだ。恐らく、アレンジ通りに弾いているのだろう。意外性がないのも不満なところだ。これでは、いかにMEHLDAUといえども高い点数を点けるわけにはいかないし、多分、半年後には手元には残っていないだろう。端的に言うと「いい音楽だとは思うけど、好きな音楽ではない」ということなのだ。このアルバムは頭書にも記載したとおり、MEHLDAUとHAYS、二人のピアニストのコラボレーションというよりは作・編曲者であるZIMMERLIを含めた3人のコラボレーションということなのだ。
ところで、このジャケットに表されている線路と工業地帯の風景の意味するものは何だろう?   (2011.10.11)

試聴サイト : http://www.nonesuch.com/albums/modern-music



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