独断的JAZZ批評 716.

MVDE TRIO
この3人ならではの流儀が欲しいところだ
"WHAT YOU HEAR IS WHAT YOU GET"
MICHEL VAN DER ESCH(p), OLIVIER RIVAUX(b), DAVID POURADIER DUTEIL(ds)
2010年10月 スタジオ録音 (ZZP003)


このアルバム・タイトル"WYHIWYG"は何て読むのだろう?どんな意味?と思っていたのだが、手元に届いて初めて分かった。"WHAT YOU HEAR IS WHAT YOU GET"の各単語の頭文字をとったものだったのだ。同様にMVDE TRIOというのもリーダーのMICHEL VAN DER ESCHの頭文字をとったもの。
このMVDEはフランスで活躍しているらしいが、フランス独特のねっとり感とか一筋縄に行かない小難しさというのはなくて、むしろ、ストレートな演奏だ。
ジャズの巨人、B POWELL(A、C)、T. MONK(D、F)、C. MINGUS(E)、S GETZ(@)から全部で6曲、残り2曲がオリジナルという構成になっている。

@"DEAR OLD STOCKHOLM" まさに王道を行く演奏。泰然自若としてまるで揺るぎがない。4ビートをズンズン刻んで進む。これはいいね。こういうの聴いていると俄然、アルコールが欲しくなる。飲みながら指でも鳴らせば最高だ。
A"WAIL" BUD POWELLの書いたテーマがそのまま良かかりし時代の雰囲気を伝えている。
B"OUVERTURE" ノスタルジックな雰囲気を醸し出すオリジナル。伸びのあるアルコによるベース・ソロもピチカートによる演奏もいいね。このグループは色々なスタイルの演奏をこなしている。3人の息もピッタリ。ピアノのタッチはクリアだ。
C"UN POCO LOCO" 一転して、賑やかな展開に。途中にアブストラクト的な展開も垣間見せる。その後、長めのドラム・ソロを経てテーマに戻る。
D"ERONEL" ひょうきんで陽気なテーマに乗って、多彩なドラミングを披露してくれる。
E"SOLFPORTRAIT IN THREE COLORS" メランコリーなバラード。メリハリがなくてダラーっとした感じ。
F"LITTLE ROOTIE TOOTIE" この曲を聴いて思い起こしたのが、ベースのJOHN FREMGENがリーダーとなった"PIECES OF STRING"(JAZZ批評 349.)の中にある同名曲。期せずして、ピアノのSHELLY BERGの醸し出す雰囲気とよく似ている。聞き比べてみるのも面白い。
G"VILLEGIATURE" ここまでの8曲、何かが足りないという印象を拭えない。敢えて言うと「ダイナミズム」かな?ベテラン・プレイヤー同士にありがちな演奏で、まとまりはあるけど型に嵌っている。演奏曲目にジャズの巨人の曲が多いのも災いしているかもしれない。この3人ならではの流儀が欲しいところだ。

このアルバムはバップ・テイストを継承しているアルバムと言っていいだろう。POWELLやMONK、MINGUSが活躍した時代が生き生きと蘇るが、本家本元の演奏以上ではない。やはり、演奏のダイナミズムが足りないのだ。それと、CDとしては収録時間がトータル40分と短く、各トラックも平均5分程度で、若干食い足りない。
そういう中になって、1曲目の"DEAR OLD STOCKHOLM"だけはいいね。このアルバムのクレジットではSTAN GETZの曲となっているけど、原曲はスウェーデン民謡の「麗しのワームランド」と言われている。   (2011.09.15)


試聴サイト : http://www.michelvanderesch.fr/mvde/mvde.html




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