独断的JAZZ批評 718.

GREG REITAN
右手の指が良く動き回るという以外に特徴が見出せない
"DAYBREAK"
GREG REITAN(p), JACK DARO(b), DEAN KOBA(ds)
2011年1月 スタジオ録音 (SUNNYSIDE : SSC 1289)


GREG REITANは初めて聴く。このアルバムがデビュー以来の3枚目にあたるようで、メンバーも不動だ。シアトルの出身でL.Aを活動拠点としているらしい。アメリカ西海岸のジャズがそうであるように垢抜けてスマートな雰囲気に溢れている。
写真で見る限りなかなかの優男。演奏スタイルも爽やかでサラーッとした感じ。

@"DAYBREAK" 1分半余りのイントロ的なトラック。まあ、目まぐるしく良く動く右手だ。クラッシクの練習曲を弾いているようで、腕試し的なトラックの印象だ。「さあ、これからやるぞ!」と言ったかどうかは分からない。
A"ONECE UPON A SUMMERTIME" 
MICHEL LEGRANDの書いたスタンダード・ナンバー。リリカルな演奏で甘い香りのする演奏。本質的にこういう甘さを伴った曲が合うのだろう。
B"MONK'S MOOD" 
タイトル通り、T. MONKの曲。どこにでもある演奏と言ってしまえば失礼だが、個性を感じさせない演奏だ。
C"FIVE FOUR" 
アドリブからアップ・テンポの演奏になる。コロコロと良く転がるピアノの右手だ。良く転がるけどアタック感やメリハリが希薄。左手のバッキングも一本調子だ。
D"THE BELLS OF SOLEDAD" 
REITANのオリジナルだけど、面白い曲。だけど、折角の面白さが生かされていない。ベースもドラムもきわめて平凡だ。
E"TOY TUNE" 
W. SHORTERの曲。アップ・テンポで突き進む。REITANの左手はバッキングに徹していて極めて単純だ。
F"CHELSEA BRIDGE" 
B. STRAYHORNの書いた名曲。
G"IRIDESCENCE" 
お得意のコロコロ・プレイ。全然面白くない。
H"BLUE IN GREEN" 
最長9分のトラック。最初の5分間がピアノ・ソロ。このソロはなかなか良いね。音符の数も決して多くない。イン・テンポになって左手がベース・ラインを弾くようになるとスイング感がぐっと増してくる。へえ!やれば出来るじゃない!?その後、フリー・テンポに戻り、ベースとドラムが合流する。
I"THE GREAT PUMPKIN WALTZ" 
軽やかなピアノだ。最後を賑わすKOBAのドラム・ソロはちょっとドタバタとしていて切れがない。
J"LAMENT"
 J.J. JOHNSONの書いた佳曲。アドリブではミディアム・テンポの気持ちよい4ビートを刻んでいく。ベースのDAROの演奏は悪くもないが良くもない。このぐらい弾くプレイヤーは五万といるからちょっとね。

右手でコロコロと転がるパッセージを弾き、左手はバッキングというのがREITANのパターンみたいだ。そういう中でHの"BLUE IN GREEN"のソロは良かった。ドライヴ感溢れる左手のベースラインは躍動感を生み出していた。そこが最大の聴き所。
一方で、サイド・メンにもっとピアノに絡める役者が揃えば良かった。今のサポート陣は少々弱い。これからの課題だろう。
端的にいうと、右手の指が良く動き回るという以外にこのグループとしての特徴が見出せない。   (2011.10.03)

試聴サイト : http://www.myspace.com/gregreitan/music



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