HIROSHI MINAMI
色彩的にはピアノのワンマン・トリオという色合いが強い
"BODY & SOUL"
南 博(p), 鈴木 正人(b), 芳垣 安洋(ds)
2011年5月 スタジオ録音 (EWE : EWCD0183)
最初にこのジャケットを見た時に、どこかで見たことのあるアルバム・ジャケットだと思った。それもそのはず、これはBILL CHARLAPのNEW
YORK TRIO"BLUES IN THE NIGHT"(JAZZ批評 30.)と同じ写真なのだ。こんなことってあるんだなあ!?知っててやったのか?それとも偶然?
南博のトリオ・アルバムは2枚紹介しているが、最初のスタンダード集である"LIKE SOMEONE IN LOVE"(JAZZ批評 619.)が良かった。ついでに言えば、自伝的小説「白鍵と黒鍵の間に−ピアニスト・エレジー 銀座編」 と続編の「鍵盤上のU.S.A−ジャズピアニスト・エレジー アメリカ編」 はピアノのみならず文才をも披瀝した作品だった。
@"BODY & SOUL" 淡々と進むバラード。気負いも衒いも皆無。ひたすら淡々と進む。
A"I'VE NEVER BEEN IN LOVE BEFORE" 色彩的にはピアノのワンマン・トリオという色合いが強い。ベースとドラムスはサポート役に徹している。
B"UPPER MANHATTAN MEDICAL GROUP" ライナー・ノーツによれば、南が敬愛するBILLY STRAYHORNの曲がこれと次の曲の2曲続く。
C"A FLOWER IS LOVESOME THING" ここまでの4曲、テンション低目である。「クール」というのとはちがう。むしろ、「ホットでない」と言った方が正しいかも。ワーッと言う盛り上がりもないし、丁々発止のバトルもない。あえて言うと、大人の雰囲気?
D"ALL OF YOU" もって回ったようなアップ・テンポの演奏。
E"TIME REMEMBERED" EVANSから1曲。ボサノバ調の軽快な演奏だ。
F"LOVESOME WORDS" このアルバム中、唯一の南のオリジナル。このアルバム全体を通しても中高音域のフレーズが多い。タイトルの中にも"LOVE"とか"LOVESOM"という文字が3曲にで出てくるが、演奏も愛らしく軽い感じのフレーズが多くなっている。
G"ELLEN DAVID" 最後はベースとピアノのデュオ。CHARLIE HADENが愛妻のために書いた曲という。HADENらしい哀愁を帯びた切ない曲だ。
アルバム全体の雰囲気も淡々とした感じ。まあ、大人の雰囲気といえばそうだけど・・・。でも、スカッとしない。トリオとしてのインタープレイ重視というよりもピアノのワンマン・トリオという印象のほうが強い。躍動感に溢れたトラックがないのも寂しい。前作"THE
GIRL NEXT DOOR"(JAZZ批評 618.)の延長線上にあるアルバム。これだったら、先に紹介した2冊の自叙伝の方がズーっと刺激的でスリルに満ちている。
ついでに、ひとつ苦言を呈すれば、ライナー・ノーツが極めて読みにくい、茶褐色の背景に小さな黒い文字。まるで「読むな!」と言わんばかりの体裁だ。デザイン重視で機能が軽視されてしまった。デザイナーの独りよがりでは? (2011.07.30)
試聴サイト : http://www.ewe.co.jp/archives/2011/06/body_soul.php
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