独断的JAZZ批評 709.

DAIKI YASUKAGAWA
奄美大島・加計呂麻島での島唄とのコラボレーションがモチーフになっているらしい
"KAKEROMA"
中村 真(p), 安ヵ川 大樹(b), 芳垣 安洋(ds)
2004年1月 スタジオ録音 (EWE : EWCD 0089)


このアルバムは安ヵ川大樹がリーダーとなって2004年に吹き込んだトリオ・アルバムだ。このときのレーベルはイースト・ワークス・エンターテイメント(EWE)で前掲の南博のアルバム(JAZZ批評 708.)と同じだ。安ヵ川が自らが主宰者となってD-MUSICAレーベルを興したのが2008年。EWEにしろD-MUSICAにしろ、主体となっているミュージシャンは日本人プレイヤーだ。その心意気や良し!今後も良いアルバムを出し続けてほしいと思う。
さて、このアルバムのピアニストは中村真。1972年生まれというから40代間近の中堅のピアニストだ。ドラムスの芳垣安洋は前掲の南博トリオのオリジナル・メンバーでもある。

@"CIRCLE U" フリーのベース・ソロで始まり、やがて、定型パターンを繰り返す。やや抽象的な色彩の演奏にシフトしていくが、最後は激しいバトルを繰り広げて終わる。
A"PRISM" 
この曲のみピアニスト・中村の書いた美しくもしっとりとした曲。目くるめく万華鏡の回転をイメージしているらしい。中村の繊細なピアノ・プレイが聴ける。
B"KAKEROMA" 
「加計呂麻」 奄美諸島の島の名前らしい。安ヵ川の美しい音色のアルコが楽しめる。ゆったりと時間が流れていく奄美の美しい海を想起させる。すると一転して軽やかなリズムを刻み楽しげな演奏にシフトしていく。
C"MINOR MOMENT" 
しっとりとしたインタープレイ。
D"DON'T MIND" 
ベース(アルコ)とドラムス(パーカッション)のデュオ。友に捧げた曲だという。ベースにドラムスという難しいフォーマットでも様になってしまう。もっとも、ベース一本でソロ・アルバム(JAZZ批評 699.)を作ってしまう安ヵ川のことだから、このくらいのことでは驚くにあたらない。
E"JOY" 
安ヵ川のベースがピチカートでテーマを執る。世界中の子供に幸あれという願いを込めて書かれた曲だという。優しさに満ち溢れた曲だ。プレイヤーの人となりが表れた演奏。中村のピアノも純真無垢。
F"THERMAL" 
「上昇気流」の意味だという。モーダルな演奏でベースが力強い4ビートを刻んで進む。中村のピアノは粒立ちの良いクリアな音色が気持ちよい。若いころのCHICK COREA(JAZZ批評 1.)を彷彿とさせるプレイが印象的だ。
G"SHIMAUTA"
 「島唄」 
アルコで奏でるゆったりとした時間の流れ。

ライナー・ノーツによると、このアルバムは2003年のお盆に行われた奄美大島・加計呂麻島での島唄とのコラボレーションがモチーフになっているらしい。そういう意味でB、E、Gはジャズっぽくない。というか、ボーダレスな音楽だ。そういった点で多少聴く人を選ぶかもしれない。
その一方で、このアルバムもまた非常に高音質である。中村の粒立ちの良いピアノ音、安ヵ川の深く逞しいアルコとピチカート、芳垣の多彩なスティック捌き、いずれをとっても思う存分にその音色の良さを堪能させてくれるに違いない。   (2011.08.07)

試聴サイト : http://www.ewe.co.jp/archives/2004/07/kakeroma_1.php



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