独断的JAZZ批評 705.

CHICK COREA / EDDIE GOMEZ / PAUL MOTIAN
ネーム・ヴァリュー以外の価値を見出せないアルバム
"FURTHER EXPLORATIONS"
CHICK COREA(p), EDDIE GOMEZ(b), PAUL MOTIAN(ds)
2010年5月 ライヴ録音 (UNIVERSAL : UCCJ-3027/8)

このアルバム、メーカの謳い文句によると「現代ジャズ・ピアニストの巨匠チック・コリアが敬愛するビル・エヴァンスに捧げて、2010年5月にニューヨークのブルーノートにて開催したライヴ、二週間全セット完売となった話題のクラブ・ギグからベスト・テイクを厳選収録した2枚組」とある。 ウーン、これだけ読むと、誰しも買いに走りたくなる?僕もそういう一人。
しかし、厳選したのなら、1枚組で良かった。2枚組で3,500円は上手い商売の仕方だが、これでは買った人は納得しまい。2枚組で2,000円程度だったら腹も立たないと思うけど・・・。ライヴのチケットが完売したからといって、いい演奏であったことの証拠にはならないだろうし。
まあ、率直に言って、ネーム・ヴァリュー以外の価値を見出すことの出来ないアルバムだ。EDDIE GOMEZが参加しているとわかった時点で、最悪、こういう事態も予測はしていたのだが・・・。それでも買ってしまった自分が悪かったと戒めるしかない。買わないことには分からないのであるから授業料と思って諦めるしかないだろう。
結論を先に書いてしまったが、あまりお勧めしたくないアルバムではある。これを聴くなら、BILL EVANSの本当の"EXPLORATIONS"(JAZZ批評 158.)や"WALTZ FOR DEBBY"(JAZZ批評 17.)の方がずっと良いし、CHICK COREAを聴くなら、"NOW HE SINGS, NOW HE SOBS"(JAZZ批評 1.)の方がずっと良い。
この"FURTHER EXPLORATIONS"は、言ってみれば、商業主義の塊のようなアルバムである。UNIVERSAL RECORDSらしいといえば、その通りなのだが。
その1.日本先行発売・・・これでは安い輸入盤を手に入れることは出来ない。
その2.CD2枚組み・・・今時、CD2枚とはいえ、3500円なんて値段はないだろう。輸入盤なら2000円程度だ。
その3.EVANSのかつての盟友をサポートに添えて話題づくり。
その4.EVANSの未発表トラックを1曲追加して、これも話題づくり。

<CD 1>
@"PERI'S SCOPE" A"GLORIA'S STEP" B"THEY SAY THAT FALLING IN LOVE IS WONDERFUL" C"ALICE IN WONDERLAND" D"SONG NO. 1" E"DIANE" F"OFF THE CUFF" G"LAURIE" H"BILL EVANS" I"LITTLE ROOTIE TOOTIE" 
<CD 2>
@"HOT HOUSE" A"MODE Y" B"ANOTHER TANGO" C"TURN OUT THE STARS" D"RHAPSODY" E"VERY EARLY" F"BUT BEAUTIFUL-PART 1" G"BUT BEAUTIFUL-PART 2" H"PUCCINI'S WALK"
 

いずれにしても、EDDIE GOMEZの参加はミスキャスト。とにかく、アンサンブルが壊れる。唯我独尊、自己チュウではトリオとしてのバランスがキープできまい。かつて、STEVE KUHNの東京ライヴ(JAZZ批評 494.)でもそうだった。またかという感じは否めない。
トリオとしてみても躍動感に溢れるわけでもなし、緊迫感が横溢しているわけでもない。どこにでもあるような陳腐な演奏だ。どことなく白けたオーディエンスの反応が全てを言い表している。   (2011.07.15)



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