独断的JAZZ批評 706.

PHIL PALOMBI
ベース音に箱鳴りの深さと豊かさがない
"RE: PERSON I KNEW   A TRIBUTE TO SCOTT LAFARO"
DON FRIEDMAN(p), PHIL PALOMBI(b), ELIOT ZIGMUND(ds)
2010年12月 スタジオ録音 (LE GOAT RECORDS GTO-68)


このアルバムはBILL EVANSの盟友、SCOTT LAFAROへのトリビュート・アルバムだ。2011年はLAFARO没後、丁度50年の節目ということらしい。
BILL EVANSの名盤"WALTZ FOR DEBBY"が吹き込まれてから50年周年記念ということでトリビュート・アルバムが出来てしまう時代だ。まあ、何でもありなのだろう。多分、BILL EVANSとかSCOTT LAFAROと謳ったほうが売れるのだろう。
このPHIL PALOMBIというベーシストは初めて聴く。ピアノはベテラン、DON FRIEDMAN(JAZZ批評 550. & 119.)だ。FRIEDMANはLAFAROと一緒にアパート生活していた時代もあり、縁のピアニストということだろう。ドラムのZIGMUNDはEVANSとの競演経験がある。1970年代の後半にトリオの一員として"AFFINITY"(JAZZ批評 330.)や"YOU MUST BELIEVE IN SPRING"(JAZZ批評 412.)に参加している。

@"ISRAEL" 哀愁を帯びたテーマでブルースらしくないブルース。ドラムスとの12小節の交換があってテーマに戻る。
A"TURN OUT THE STARS" 
75歳になったFRIEDMANはさすがに衰えが見えるね。演奏にメリハリと切れがなくなった。
B"IMPROVISATION: MEDITATION" 
ベース・ソロ。
C"GLORIA'S STEP" 
今度はドラムスとのデュオ。
D"CHOPIN-ESQUE" 
FRIEDMANのオリジナル。「ショパン風に」ってことか?いい曲だとは思うが、この演奏が「ショパン風」なのかどうかは分からない。
E"IMPROVISATION: INSPIRATION" 
ベース・ソロ。
F"RE: PERSON I KNEW" 
まるでジャズ風演歌だね。
G"THE CALLING" 
H"IMPROVISATION: 1961" ベース・ソロ。ギターのように弾きたいのだろう。
I"A MONK MINUTE" 
FRIEDMANのピアノに往年の輝きがないのは何故だろう?
J"MEMORIES OF SCOTTY" 
アルコでテーマを演奏しているが、箱が鳴っていない。
K"TREPIDATION"
 最後を締めるアブストラクト?フリー・テンポのインタープレイ。

このアルバムを録音するに際して、PALOMBIはLAFAROが人生の最後の3年間に使用していた1825 ABRAHAM PRESCOTT BASSを借り受けて使用したらしい。それがいい音かどうかは皆さんの判断に任せよう。
実は、このアルバムのレビューを書きながら、もう1枚のCDを聴いている。そのアルバムは次回紹介したいと思っているが、そのアルバムのベーシストが安ヵ川大樹だ。
この2枚を聴き比べると安ヵ川のベースに軍配を上げざるを得ないのだ。ベースの音色だって安ヵ川のベースの方がビートもあるしアコースティックな木の箱鳴りが聴こえるのだ。対して、PALOMBIのベース音は箱鳴りの深さと豊かさがない。
一説によると、SCOTT LAFAROのベース音は小さくて聞こえないのでアンプでかなり増幅していたという話もあるが、真偽のほどは良く分からない。ただ、LAFAROのように速弾きをしよう思うとブリッジを低くして弛んだ弦で弾かねばならないだろう。その分、どうしてもアンプの増幅に頼らざるを得ないというのは仕方のないことだ。このことはEDDIE GOMEZのベースについても言えることだ。
2枚のCDを聴き比べてみて僕が思うのは、プレイヤーも楽器も安ヵ川のほうが素晴らしいという事実だ。それとFRIEDMANのピアノに昔のような輝きがないのが残念。   (2011.07.21)

試聴サイト : http://www.digstation.com/AlbumDetails.aspx?albumID=ALB000074059



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