個性派揃いにもかかわらず、
皆が我を無にしてグループ演奏に徹した
1950年代後半を代表する好演盤
"SOMETHIN' ELSE"
CANNONBALL ADDERLEY(as), MILES DAVIS(tp), HANK JONES(p), SAM JONES(b), ART BLAKEY(ds) 1958年スタジオ録音(BLUE NOTE CDP 7 46338 2)

たまには、戸棚から懐かしのCDを選択して掲載するのもいいだろう。
ピアノ・トリオ以外の懐かしいところで、CANNONBALL ADDERLEY なんていうのもいいだろう。ところで、世に名盤とされる"SOMETHIN' ELSE"というのは本当にCANNONBALL のリーダー・アルバムなのだろうか?実は、僕にはそうは思えないのだ。これはやっぱりMILES のアルバムではないかと・・・・。名目CANNONBALL、実質MILES というのが本当のところかな。

このCDにおけるMILESは実にクールだ。無駄な音と呼ぶべきものがない!少ない音数で大きな感動を呼ぶ演奏と言える。音楽は音符の数じゃないと・・・。多弁なアルトサックスよりも無口なトランペットの方が感動を呼び起こしてくれる。

@"AUTUMN LEAVES" この曲の代表作というと必ずと言っていいほど、名演としてこのトラックがピックアップされる。若かりし頃、僕らもこのベース・ラインをコピーしたものだ。
伸びやかにあでやかに歌うCANNONBALL のアルトとは対照的にMILES のミュートはあくまでもクールに哀しげですらある。

A"LOVE FOR SALE" HANK JONESのピアノのイントロで始まり、その後のMILESのミュート演奏によるテーマに痺れる。SAM JONESの「無骨さ」がこれには合っている。ピアノ、ベース、ドラムスは完全にリズムセクションとしての役割に徹している。まさに、「リズム陣を従えて」CANNONBALLがソロをとる。

B"SOMETHIN' ELSE" いきなりミュートを外したMILESとCANNONBALLの掛け合いとなる。このアルバム、全編、ドラムスはART BLAKEYだ。脇役に徹していながらも周りを鼓舞するドラミングに好感が持てる。

C"ONE FOR DADDY-O" ミディアム・テンポの12小節のブルース。テーマの後にCANNONBALLの伸びやかなソロが聴ける。指でも鳴らせば、古きよき時代がよみがえる。派手さはないがシングル・トーンのピアノソロが、また、渋い!

D"DANCING IN THE DARK" アルト・オンリーのクァルテットの演奏。余分な力の抜けたこのCANNONBALLは良いよ。実に伸びやか。
E"ALISON'S UNCLE" 心安らぐ演奏。全曲を通して脇役に徹し、ソロイストを盛り上げたリズム陣に拍手。

個性派揃いにもかかわらず、皆が我を無にしてグループ演奏に徹した。名盤の宝庫、1950年代後半を代表する好演盤。     (2003.08.01)



CANNONBALL ADDERLEY

独断的JAZZ批評 145.