"THE SIGN"
CARSTEN DAHL(p, marimba, vives), ARILD ANDERSEN(b), PATRICE HERAL(ds, percussion, voice, live electronics),
2002年2月 スタジオ録音 (STUNT RECORDS STUCD 02032)
名盤"MOON WATER"から遡ること1年。2002年の録音。
"MOON WATER"へ繋がる同じメンバーによる緊密感と緊迫感溢れるインタープレイ
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小言を一発。
このアルバムをゲットするために、HMVのネット・ショッピングに輸入盤のオーダーを入れた。「通常出荷」ということだったが、1週間経っても2週間経っても「未入荷」のまま。1ヶ月待ったら「メーカーの在庫切れ」だと・・・。何のための1ヶ月だったのか!仕方無しに、今度はHMV渋谷店に国内盤の予約を入れた。これは10日後にゲット出来た。このアルバムをゲットするまでに要した月日は1ヶ月と10日。
これだけに限らず、ネット販売の納期遅れは多すぎやしないか。先日もある店に輸入新譜の予約を入れたが、発売予定日を過ぎても音沙汰がない。挙句に「発売無期延期」だと!販売店に罪はないのだが、この悪しき慣習を業界として是正してもらいたい。
HMVで本日(4/15)発売予定のPETER ROSENDALの新譜も予約後の出荷案内が未だ来ない。レコード業界の納期遅れは「常識」なのだろうか?「レコード業界の常識は世の中の非常識」ということを認識して欲しい。こんなことやっていたら結局、天に唾したことが自分の顔の上に降りかかってくるということを!それでなくても、世の中、iPOD(iTMS)やダウンロードやらと喧しいのに!
と、まあ、憤懣やるかたない今日この頃ではあった。
このアルバムは、そういうホットな頭を冷やすには最適かもしれない。
深く静かに躍動する。それは湖面に広がる波紋のようでもある。
先に紹介した"MOON WATER"の延長線というよりも、その波紋の元になった「一石」とも言うべきアルバムである。
@"LE TRIANGLE ET LES TROIS ALLUMETTES" 3人による競作。湖面に広がる波紋の如し。小さなうねりが徐々に増幅していく。
A"THE SORROW OF MANKIND" 哀しみを湛えた美しいDAHLの曲。
B"EAST OF LEZ" 効果的なヴォイス〜躍動するパーカッション〜マリンバ〜ベース。
C"HYBERBOREAN" 美しくも幻想的な中に光るベース、ピアノ、ドラムスの共演。
D"THE 9th DAY" 3人による競作。最後まで幻想的なフリー。
E"ESCAPES" ベース、ヴァイヴ、ドラムスのインタープレイで始まり、インテンポ〜クライマックスへ。ANDERSENの力強いベース・ワークが咆える。
F"THE SIGN"
G"CRAWL BEFORE YOU WALK" 3人による競作。唯一、スローな4ビートを刻んでいく。間がいいね。
H"POSTLUDIUM"
CARSTEN DAHLというピアニストは溢れる才能を多面的なスタイルで表現しているが、そのどれもが嫌味にならない清々しさがある。このアルバムや"MOON
WATER"(JAZZ批評 246.)における深く静かな清々しさ、チョイ悪オヤジ風のGINMAN〜BLACHMAN(JAZZ批評 221.)とのトリオ、ハード・バッパーとしてのトリオ("BLUE TRAIN" JAZZ批評 267.)というように、色々な顔を見せてくれる。
このアルバムは4ビートとかバップイズムを期待してはいけない。あくまでも「湖面に広がる波紋の如し」のジャズなのである。それは、絵で言えば「水墨画」というのがぴったり嵌りそうだ。3人のプレイヤーが対等な立場で緊密感、緊迫感を醸成していく・・・そういう音楽だ。
僕には、これを聴く最高の場がある。それは陶芸での窯焚きの時である。夜を徹して焚く窖窯(あながま)で、満天の星を仰ぎながら一人、夜の明けるのを待つその瞬間こそ、このアルバムが一番光り輝く瞬間ではないかと確信するのである。
そういう意味では、万人向けとは言えない。独断と偏見に満ちたレビューだと認識頂きたい。"MOON
WATER"に共鳴して頂いた方々には理解していただけるかも知れないが。
「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。 (2006.04.15)