独断的JAZZ批評 677.

HAKUEI KIM
全編に漲る丁々発止のインタープレイ・・・溢れる躍動感と緊密感
さらに美しさがプラスされて素晴らしいアンサンブルを生み出している
"TRISONIQUE"
HAKUEI KIM(p), 杉本 智和(b), 大槻"KALTA"英宣(ds)
2010年9月 スタジオ録音 (AREA AZZURRA : UCCJ-2084)

キム・ハクエイのアルバムはこれが2枚目。以前、2006年録音の"HOME BEYOND THE CLOUD"(JAZZ批評 375.)を紹介しているが、将来性を感じさせる好アルバムであった。そのときに「恐らく、このピアニストは今後、何枚もの5つ星アルバムを世に送り出すに違いない。だから、今回は慌てて5つ星にはしない。もっともっと光り輝く時が来ることを確信できるから」と書いた。それがもう4年も前のことだ。そして今、その時がやってきた。本アルバムは期待に違わない素晴らしいアルバムだ。
メンバーも素晴らしい。ベースに杉本智和。ケイ赤城(JAZZ批評 469.)のレギュラー・メンバーとして現在も活躍中。ドラムスの本田珠也とともに世界に飛躍してほしいプレイヤーの一人だ。
ドラムスに大槻KALTA。熊谷ヤスマサ・トリオ+太田剣(as)のライヴ演奏を"NARU"で聴いたことがある。その時に比べると本アルバムのほうがずーっとアグレッシブだ。
これは良いトリオだ。

@"TRISONIQUE" 最初の数小節を聴けば、このアルバムが刺激に満ちたアルバムであることが容易に想像出来る。アグレッシブな大槻のドラムス、それに負けじと唸りを上げる杉本のベース。何よりもキムの刺激に満ちたピアノが凄い。
A"KUALA LUMPUR" 
一聴、笛のような音色は杉本によるアルコであろうか?イン・テンポになるとボサノバ調のリズムを刻み出し、杉本のアルコが美しい音色を提供する。とても良い曲だ。多彩な大槻のドラミングも素晴らしい。3者が渾然一体となってクライマックスを目指す。
B"WHITE FOREST" 
今度はブラシ・ワークだ。このアルバムの大槻のドラミングは実に活き活きとしている。スティックに持ち替えてからもガンガン叩いているけど決して邪魔にならない。続く杉本のベースが素晴らしい音色だ。8小節交換を交えてテーマに戻る。
C"YOU MUST BELIEVE IN SPRING" 
今度はキムがピアノで聴かせてくれる。フリー・テンポのインタープレイと「間」が素晴らしい。沢山のプレイヤーがこの曲を演奏してきたけど、この演奏はしっかりとリスナーの脳裏に刻まれるに違いない。
D"BIRD FOOD" 
しかし、良い録音だ。冒頭の杉本のピチカートが唸っているものね。これぞ、アコースティック・ベースの音色だ。ハード・ドライヴな1曲。
E"DELAYED RESOLUTION" 
一転して、美しいバラード。バラードであってもしっかりと力強く歌っているのが良い。続く杉本のベースが魂を震わす。圧巻だ!背筋がゾクッとする。
F"HIDDEN LAND" 
緊迫感漲るインタープレイからピアノ〜ベースと繋いで進むが、バックで躍動する大槻のドラミングが歌っている。
G"TAKE FIVE" 
PAUL DESMONDの書いた"TAKE FIVE"はあくまでもモチーフ。そこから、さらに進化発展して新たな曲として蘇った。実にスリリング!熱っちっち!キムのピアノは鋭く尖がっていて刺激に満ちている。
H"THE ARCHEOLOGIST"
 最後を締めるバラード。熱冷まし・・・。と思っていると、徐々に高揚感が増してくる。良いピアノ・トリオだなあ!!

全編に漲る丁々発止のインタープレイ・・・溢れる躍動感と緊密感。さらに美しさがプラスされて素晴らしいアンサンブルを生み出している。
昨年末以来、胸を熱くするような5つ星に恵まれなかったので、久しぶりにスカッとした。これは文句なしの5つ星でしょう!ということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。
更に言うと、録音がまた素晴らしい。各々の楽器が生々しく、活き活きと録れていて、なおかつ、バランスが絶妙である。オーディオ・ファンにも是非とも聴いてもらいたいアルバムだ。    (2011.01.26)

試聴サイト : http://morawin.jp/package/80312139/00044002082923/



.