NORIHIDE NAKAJIMA & TAKAAKI OTOMO
日本人にしか出来ない日本のジャズ
"FAR WEST"
大友 孝彰(p), 中島 教秀(b)
2009年9月 スタジオ録音 (BLUELAB. : BLR0902)

このアルバムは1958年生まれのベテランベーシスト・中島教秀と1986年生まれの若手ピアニスト・大友孝彰とのデュオ・アルバムだ。大友は2008年にリリースした"NIGHTMARE"(JAZZ批評 513.)で鮮烈なデビューを果たした。当時、大友は未だ大学に籍を置く学生だった。若者らしいけれんみのない演奏でこれからの活躍を期待させるに充分だった。
対する中島のベースは初めて聴く。鈴木良雄とほぼ同世代。ベースから醸し出される雰囲気は優しく温かみがあるところが共通点かもしれない。
全曲に中島自身の楽曲解説がついているところを見るとすべての曲が中島のオリジナルなのだろう。タイトルも日本語そのままという曲が半分ほど占めている。


@"雪の丹波、月に蒼く光り" 
タイトルがすべてを表している。そういう音楽。美しく誰にもおもねることのない音楽。大友のピアノが良いね。包容力のある大人の雰囲気を身に着けた。
A"EARLY MOON" 
年間100日以上山歩きをするという中島が剣岳の尾根を登ったときに書いた曲だという。今度はボサノバ調で軽快に。
B"ねこのブルース" 
タイトルの如し。確かにじゃれあう子猫のようでもある。
C"NIGHT IN KOBE" 
少し歌謡曲的なにおいのする佳曲。何の誇張もないナチュラルな演奏に酔い痴れる。
D"NOBODY KNOWS IT" 
中近東の音楽に興味があって作った曲だという。そう言えば、異国情緒たっぷり
E"カブト虫ジャンプ" 
これは相当に元気なカブト虫だ。ちょこまかと動きまくる。カブト虫というよりはてんとう虫の雰囲気かなあ?。
F"ピアノ" 
中島のアルコで始まる。中島の解説にもあるように、淡い日差しの中、快い風が通り抜けて、粒立ちの良いピアノの響きを風がともに運んで来る・・・そういう感じ。
G"FAR WEST"
 日本の"FAR EAST"に対して中央アジアから渡来したケルト人たちが住むところは"FAR WEST"にあたるということでこのタイトルがついたそうだ。

若手の大友とベテラン・ベーシストの仲睦ましい会話が素晴らしい。ベテラン・ベーシスト、中島の人となりが表れたアルバム。真面目で誠実な人柄だと推察する。 ピアノの大友にとってもこの経験は宝物になるだろう。懐がグッと広がる様な経験だったに違いない。
音楽の傾向として鈴木良雄(JAZZ批評 416. & 587.)や岩崎佳子(JAZZ批評 443.)などのアルバムと雰囲気が良く似ている。あくまでもハートフルでナチュラルなのだ。同時に、すべての楽曲が日本的。ある意味、小学生唱歌のような趣さえある。ジャズといえばブルーノート・スケール(注)なのだが、そのブルーノートをあまり多用しないジャズなのだ。ゆえにバタ臭くない、タバコの煙が立ち昇るようなブルーヴ感が薄いとなる。反面、いかにも日本人にしか出来ない日本のジャズという雰囲気が満載されている。   (2011.01.15)

試聴サイト : http://www.youtube.com/watch?v=dMzU-wYjdjw
          http://www.youtube.com/watch?v=PpndHSreaC4&feature=related

(注)Wikipediaによれば、ブルー・ノート・スケール(ブルース・スケール、blue note scale)は、定義にばらつきはあるが、ジャズブルースなどで使われる、メジャースケール(長音階)の構成音およびその第3音、第5音、第7音を半音下げた音を加えた音階である。もしくは、マイナー・ペンタトニック・スケールに♭5を加えた形であり、このとき♭5の音をブルーノート呼ぶ)。






独断的JAZZ批評 674.