独断的JAZZ批評 587.

YOSHIO SUZUKI
そこはかとない暖かさと優しさに溢れていた
殺伐とした世の中に、こういうジャズに対する慈しみを感じさせるデュオがあっても良いではないか
"MY DEAR PIANISTS"
小曽根真@,H、野力奏一A,F、山本剛B,I、秋吉敏子C,K、ケイ赤城D,G、イサオ ササキE,J=以上(p), 鈴木良雄(b)
2009年3月〜6月 スタジオ録音 (ONE : FNCJ-1004)

チンさんこと鈴木良雄がタモリらと興した"ONE"レーベルでは、チンさんがトリオに海野雅威(p)を迎えた"FOR YOU"(2006年録音 JAZZ批評 416.)が第1弾のアルバムだった。このアルバムは先ずプレーヤー自身が楽しみたかったアルバムと言っていいだろう。とても素性の良いアルバムだった。
そのチンさんが音楽生活40周年を迎えて、最も信頼し息の合う6人のピアニストとデュオを組んで2009年に録音したのがこのアルバムだ。各ピアニストと2曲ずつ、合計12曲を演奏している。チンさんの持っているイメージと見事に合致したアルバムとなっている。ほぼ、僕が予測したとおりの演奏が繰り広げられていた。各曲のタイトルの後にデュオを組んだピアニストの名を記した。

@"PERSIAN BREEZE" 
(小曽根真)最近の小曽根はいいね。2007年録音のソロ・アルバム"FALLIMG IN LOVE ,AGAIN"(JAZZ批評 436.)以来の好調が続いているようだ。煌きながらも躍動するピアノがいいなあ。暖かくてハートフルな鈴木のベース・ワークは思っていた通り。
A"MY DEAR FRIENDS" 
(野力奏一)チンさんが曲を作り、テーマを奏でる。フォーク・ソングのような柔らかで優しい曲想が心に沁みる。
B"KISSES ON THE WIND" 
(山本剛)澄み切った空のような山本の奏でる音色がいいね。そういえば、僕は山本剛のアルバムを持っていない。今すぐにでも探してみよう。
C"I KNOW WHO LOVES YOU" 
(秋吉敏子)秋吉のオリジナル。雰囲気がガラリと変わった。楽しげに跳ねるピアノ。
D"ROULETTE" 
(ケイ赤城)ちょっと期待していたものと違った。
E"SOME OTHER TIME" 
(イサオ ササキ)チンさんのアルコが聴ける。いい音色だなあ。続く、ピチカートもいい音色だ。心安らぐね。
F"TANCHO" 
(野力奏一)野力のピアノは哀愁を帯びていて日本人の心には響くかもしれない。丁度「赤とんぼ」や「夕焼け小焼け」を聴いているような感じ。
G"BLUEBELL SONG" 
(ケイ赤城)抽象画とまでは言わないが変に理屈っぽい。
H"SEPTEMBER GUEST" 
(小曽根真)このアルバムの中ではグルーヴィな演奏。
I"THE MOMENT" 
(山本剛)優しさに包まれて・・・。
J"KESARAN PASARAN" 
(イサオ ササキ)ササキのオリジナル。ピアノをバックにベースのソロが歌っている。
K"HOPE" 
(秋吉敏子)この演奏も秋吉のオリジナル曲。

C、E、J、K以外は全てチンさんのオリジナル。どの楽曲も暖かさと優しさが溢れている。そういう意味では野力奏一、山本剛とイサオ ササキとのデュオが一番嵌っていたのではないだろうか。個性を主張するというよりはチンさんの音楽にそっと寄り添うピアニストの方がチンさんの持ち味を引き出しているように思った。
そこにあるのはチンさんのひととなり。そこはかとない暖かさと優しさに溢れていた。殺伐とした世の中に、こういうジャズに対する慈しみを感じさせるデュオがあっても良いではないか・・・ということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2009.10.16)

試聴サイト : http://homepage2.nifty.com/fmw/chin/promo.html



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