独断的JAZZ批評 672.

RICHARD WHITEMAN
大向こうを唸らせるものはないけど堅実でさわやか、職人芸的で粋な感じ
この価格を思えば超お買い得
"GROOVEYARD"
RICHARD WHITEMAN(p), MIKE DOWNES(b), JOHN SUMMER(ds)
1995年9月 スタジオ録音 (COUNTERPOINT RECORDS : CPR 011)

RICHARD WHITEMANのアルバムは初めてだ。カナダで活躍する正攻法のハード・バップ・ピアニストというふれこみだったけど、それだけで大よそのピアノ・プレイが予測できる。そんなこともあって、今まで購入するのを躊躇していたのであるが、価格が1200円ということが背中を押してくれた。
CDの価格も1500円以下になるとお買い得感がグンと増す。こういうアルバムが増えてくると有難い。先日紹介したYARON HERMANの"VARIATIONS"(JAZZ批評 670.)にいたってはわずか1000円だった。それでいて流れ出る音楽が素晴らしくて「墓場の中まで持って行きたいアルバム」であったから二重のお買い得感があった。
話が横道にそれてしまったが、このアルバムもお買い得感が満載のアルバムだ。ジャズの巨人たちの書いた曲が中心でWHITEMANのオリジナルは1曲のみ。

@"WHEN YOUR LOVER HAS GONE" テーマを聴いた瞬間にこれは素性のよいアルバムだと分かる。ミディアム・テンポでDOWNESのベースが踊っている。3者のバランスも良い。1950年代のピアニストの演奏を思い起こさせるけど決して古臭いという意味ではなく、ジャズの王道を歩んでいるという意味で。
A"TWELVE" 
唯一のWHITEMANのオリジナル。アップ・テンポで軽快に突き進む。
B"PRELUDE TO A KISS" 
今度はスローだけどしっとりとさわやか。
C"SO SORRY PLEASE" 
D"ALL TOO SOON" 
WHITEMANのピアノは職人芸的な上手さがある。つぼを心得ているというか粋というか・・・。
E"JUST ONE OF THOSE THINGS" 
高速4ビートの演奏だけど、プレイに余裕があるので安心して聴いていられる。ベースが太い音色で突っ走っているのがいいね。ブラシによるドラムスのソロを経てテーマに戻る。
F"HOW DEEP IS THE OCEAN" 
今度はミディアム・テンポの4ビートが心地よい。なんといってもDOWNESの太いベース音が効いているね。こういう正攻法のジャズにしろ新しいジャズにしろ、ジャズと名のつく演奏には安定感のある太いベースが欠かせない。
G"BODY AND SOUL" 
長めのピアノのイントロからテーマに入るとベースとドラムスが合流する。小細工なしの、まさに正攻法のプレイ・スタイルだ。
H"YARDBIRD SUITE" 
C. PARKERの書いた曲を軽快に演奏。
I"THE BLUES BY THREE" 
J"MONA LISA" 
テーマをベースが奏でる。一音一音を丁寧に弾いている。速弾きをして誤魔化したりしていないので好感が持てる。後に出てくるソロ・パートもいいね。
K"GROOVEYARD"
 黒人ピアニストCARL PERKINSの書いた曲。こういう曲が入っているのはなかなか渋いね。タイトルどおりグルーヴ感満載の演奏。ここでもDOWNESのベースがキラリと光る。

久しぶりに単純明快、ストレートなジャズを聴いた。四の五の屁理屈は必要ない。黙って聴けばよろしい。正月くらいはこういう演奏もいいんじゃない。
このDOWNESというベーシストはオーソドックスだけど信頼感の高いプレイヤーだ。こういうベーシストが入っているとトリオが締まる。ピアノのWHITEMANもスイング感を大事に良く歌っている。大向こうを唸らせるものはないけど堅実でさわやか、職人芸的で粋な感じ。この価格を思えば超お買い得。   (2011.01.04)

試聴サイト : http://diskunion.net/jazz/ct/detail/CPR011